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戯言感想帖

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購入した本をなんとなく紹介したり、読んだ本の感想を自由気ままに書いたりしています。漫画も含みます。
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記事一覧

岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』を読んで

岡田尊司著『境界性パーソナリティ障害』を読んで

改めて自分を見つめ直すために本を2冊買った。
そして一気に読み終えた。

ひとつは『境界性パーソナリティ障害』。
もうひとつは『絆の病―境界性パーソナリティ障害の克服』というタイトル。

どちらの本もパーソナリティ障害や発達障害治療で有名な岡田尊司先生が筆を執っている。
厳密に言えば、後者は岡田先生とBPD当事者の対話形式で進行されていく共著だが。

前者に関しては、もっとはやく読んでおけばよかっ

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漫画『明日、私は誰かのカノジョ』を読んで、愛着の問題と見捨てられ不安について考える

漫画『明日、私は誰かのカノジョ』を読んで、愛着の問題と見捨てられ不安について考える

サイコミという漫画アプリで『明日、私は誰かのカノジョ』という作品を読んでいる。

ドラマ化もされたので、ご存知の方もいるかもしれない。

既刊は15巻。
まさにいま最終章を迎えているのだが、最近の内容は私に刺さりすぎて読むたびに心を揺さぶられている。

「血の繋がった親ですら信じられないのに、恋愛感情なんていう脆い絆で関わっている他人をどうして信用できるんだろう」(第207話より)

これは今回の

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『新編・日本幻想文学集成 1』に夢中

『新編・日本幻想文学集成 1』に夢中

例の短編集の感想文を書き終えるまでは『新編・日本幻想文学集成 1』には手をださない、なんて言いながらゴールデンウィークに入ったことを良いことに手をだしたことを打ち明けます。

小説を読んで久しぶりに鳥肌が立ったので、構成とか引用とか小賢しいことを考えず、この感動を素直に書き残しておきたい。

厚みが4cmほどあるこの本では、以下の作品を楽しむことができる。

・安部公房 9作
・倉橋由美子 10

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夢野久作『瓶詰地獄』を読んで

夢野久作『瓶詰地獄』を読んで

何の前情報もなしに『瓶詰地獄』と目にして、ホルマリン漬けの贓物を想像していたのは昨年の3月頃。そんな妄想を勝手にしていたものだから、実際の内容との差に驚くことになった。

しかしたしかに「地獄」はそこにあった。

以下、簡単なあらすじ。

遭難し、孤島に漂着した兄(11歳)と妹(7歳)。
それでも食べるものにも困らず、身体を侵すような害虫もいない。
その島は幼い2人にとっては天国だった。ときに自然

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里見弴『俄あれ』を読んで

里見弴『俄あれ』を読んで

少し前に話題に出した『日本幻想文学集成』を読みはじめるまえに、以前から持っている短編集の感想文を書き終えたいと思う。

昔から私の記事を読んでくださっている方にはおなじみの(?)『文豪たちが書いた耽美小説短編集』から、今回は里見弴の『俄あれ』をピックアップ。

さて。実はこの話、昨年のうちに何回も読んでいる。そして何度も感想文を書こうとして、挫折した。

大変失礼ながらこの小説の面白さが当時の私に

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漫画『僕の妻は感情がない』に癒されて

漫画『僕の妻は感情がない』に癒されて

最近『僕の妻は感情がない』という漫画に癒されている。

なんとこの「妻」、ロボットである。

ひとり暮らし3年目。
仕事が忙しく家事をする暇がないタクマは、新たに家電を購入した。

それが家事ロボット(料理特化型)であり、のちに彼の「妻」となるミーナちゃんとの出会いであった。

小柄で、ちょっとつり目気味の澄んだ大きな瞳が印象的。両耳の上でみつあみをねじったお団子がよく似合う。
ロボット+ロリ+母

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恥と傷―小此木氏の見解を参考に―

恥と傷―小此木氏の見解を参考に―

ちょっと久しぶり?のnote。

精神科医・小此木啓吾氏の『人間の読み方・つかみ方』という本を読んだ。いろいろ思うところがあったのだけど、ありすぎたがゆえにnoteにはなかなか感想を書けずにいた。

時代の変化とともに日本人の心理はどう変わったのか、というのがメインテーマ。初版は1986年。奇しくも私の生まれ年である。

以前からの関心事である「自己愛的な傷つき」について少し情報が得られた気がする

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『友だち幻想―人と人の〈つながり〉を考える―』を読んで

『友だち幻想―人と人の〈つながり〉を考える―』を読んで

著者は社会学者・菅野仁氏。
『友だち幻想』とは小気味良いタイトルだなぁと思い、ブックオフで少し前に手にとった。

「人を消耗させる形の"つながり"を見つめなおしてみませんか?」というのが本書のメインテーマ。

初版は2008年ということだが、2023年の今も私の心には十二分に響いた。
とくに印象深かった箇所をとりあげ、自由に感想を述べてみたい。

他者の二重性

人とのつながりを再考する前に、著者

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雑記:『チェンソーマン』ブームに便乗

雑記:『チェンソーマン』ブームに便乗

流行りに乗っかって『チェンソーマン』の主人公、デンジを液タブで描いてみた。

アニメ版のデンジを再現してみたつもり。
髪をもう少し黄色く修正したいところ。

自分の父親より少し若いくらいのお客さんたちが、チェンソーマンが面白いと口々に言いはじめたのが全ての始まりだった。

柿でポチタを作ったり、カラオケで楽しそうにOPを歌ったりするお客さん。これは調べねばなるまい!いや、調べるだけだよ?別にハマっ

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漫画版『東京喰種』を語りたい①(心理描写を中心に)

漫画版『東京喰種』を語りたい①(心理描写を中心に)

書きたい欲求がムクムクとしてきたので、いつぞやぶりの漫画感想文。

好きなシーンやキャラについて興が乗るままに自由に書きたいと思っていたけど、めっっっちゃ長くなりそうなので何回かに投稿を分けようと思う|ω・)

まんまとハマる私今回語りたいのは漫画版『東京喰種』『東京喰種:re』。
久しぶりに推しキャラまでできてしまった。
うっかりフィギュアが欲しいかもしれない、とまで思ってしまったのは『DEAT

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綾辻行人『再生』を読んで(一部ネタバレあり)

綾辻行人『再生』を読んで(一部ネタバレあり)

「ホラー小説」というジャンルの響きからは連想しにくいような、なんだか儚く切ない読後感が私のなかに生まれた。

この切なさの正体は何だろう?

異様な光景から物語は始まる。

揺り椅子に行儀よく坐る、白いドレスを着た17歳年下の新妻には頭部がなかった。それは比喩表現でもなんでもなく。

最愛の妻・由伊の首をのこぎりで切り落としておきながら、夫・宇城は待ちわびていた。妻のその身体から「新しい首が生えて

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田山花袋『少女病』を読んで

田山花袋『少女病』を読んで

「すっかり夢中になること」のたとえとして「うれしさに魂天外を飛ぶ」という表現があるらしい。

それほどまでに夢中になれる対象があることをうらやましく感じる反面、生きている動物の、生命の原動力とされる「魂」がぽーんとどこかに行ってしまうのは比喩表現とは言え、いささか恐怖を覚える。

さて、作中の主人公の男は表題の通り「少女」に夢中であり、彼にとって通勤時というのは少女を愛でる至福の時間であった。

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お気に入り漫画を紹介してみる①

お気に入り漫画を紹介してみる①

今日はスマホ内の漫画の本棚にある、お気に入り作品3つを思うままに紹介してみようと思う。
尚、さわやか王道な「青春ラブロマンス☆」みたいなものは皆無である。

『可愛想にね、元気くん』暴懲愛之助(ぼこりあいのすけ)という見るからに穏やかでないペンネームで同人活動をする主人公。彼は自らの描く漫画の中でクラスメイトの「やちみどりさん」を痛ぶっては興奮する、という秘密の趣味を持っていた——

メガネ+みつ

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夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

夢野久作『けむりを吐かぬ煙突』を読んで

些細な違和感を捨て置くことはできるだろうか?

人には誰しも「別の顔」がある。

本作の主人公と思しき男性は大手新聞社の外交部に勤めているが、何かしらの「スキャンダル」をネタに富裕層を恐喝する悪徳記者の顔も持つ。

さて、そんな彼が目をつけたのはさる伯爵の未亡人。果たして記者は彼女から上手く富を掠めとることができるのか?

未亡人となった南堂夫人。
彼女は自らの寝室を図書館に改造し、その部屋の屋根

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