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潜入! リアル・キッザニア新橋
二〇二〇年九月、オリンピックの昂奮冷めやらぬ東京に〈キッザニア新橋〉がオープンした。年々早まる就職活動を受けて、より幼ない頃から本格的な労働体験をさせたいという保護者らのニーズに応えている。
この日、筆者は六歳になる息子を連れて〈キッザニア新橋〉を訪れていた。建て替えのあったニュー新橋ビルの地下二階に、それはある。
階段を降りると早速、駅の改札口を模したエントランスが待ち構えていた。予約番号を
社畜を買う、社畜を飼う。
年末のセールで社畜が値下げされていたから、ものは試しと買ってみた。ペットショップの狭いゲージに押しこめられたそれらは人間と獣を足し合わせたような風貌で、大きさもまちまちだった。
開発の過程にあらゆる試行錯誤があったせいで、肥えた山犬のようなものからほとんど人間の姿をしたものまで、様ざまな社畜が世に出まわっているという。私が飼うことにしたのは羊ほどの大きさで、街なかを歩くあいだもぴょんぴょんと
男がショッピングモールの下着屋の前を通るときの、懐旧。
小学生のときママチャリを買ってもらったのが嬉しくて、ちょっと遠くまで漕いでみたことがある。あっという間に知らない町に出た。町というより、田園だった。埼玉県は10分も自転車を漕げば田んぼに出られるようになっているのだ。
さわやかな風を浴びながら一面の緑を見渡していると、あぜ道を歩く中学生の三人組が目にはいった。揃いもそろって腰パンをしていた。あわてて目を逸らした。おれはなにも見ていない、と内心で唱
ロジカルシンキングでひとを殺す方法
世には流行りすたりというものがあるけれども、ロジカルシンキングの人気はなかなか根強くて、いまだに熱烈な支持を集めている。そろそろ飽きてもいい頃だと思うが、こればっかりは珍しく勢いが衰えない。
元来が飽きっぽい上に信仰をもたない日本人であるのに、ここまで熱中するとは何ごとか。
ここに、石川論理(46)という男を呼んだ。名前の通りみずからの命よりもロジカルシンキングを大切にするような男で、「ロジカ
[掌編]独裁国家=セブンイレブン
どこまでいってもセブンイレブンしかなかった、この町には!
いったいファミリーマート(テレレレテレン・テレレレレンのメロディが頭のなかを渦巻いて、とまらない!)はどこへいったか?=おれはもう二度とファミチキを食えないということだろうか?
家々の玄関にはちいさな旗が掲げられていた、赤とオレンジで描かれた神聖なる【7】の字が!
食卓にならぶ揚げ鶏、揚げ鶏、揚げ鶏――。
そうだ、ファミリーマート(テレ
[掌編]御國の爲のボランテイア地獄
猛暑にすつかり參つて居間でスマアト・フオンを弄つてゐると、インタア・フオンが鳴りました。私は戀人との連絡に忙しく、母親の應ずる聲を背中に聽いて居りました。最初は全然穩やかな樣子で居りましたが、不意に泣き聲が聽こえてくるので愈愈此は只事ぢやないらしいと思はれたのです。
母親は私を呼んで玄關に向かふやう云ひました。くすんだ緑色の制服を着た男が、御目出度うございますと云つて一葉の赤い紙を差し出しました