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聖書と信

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聖書はひとを生かすもの、という思いこみだけで、お薦めします。信仰というと引かれそうですが、信頼などの信として、ひとや世界を大切にする思いが、少しでも重なったらステキだな、と思いつ… もっと読む
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記事一覧

『説教25 説教塾紀要』(教文館)

『説教25 説教塾紀要』(教文館)

自分の手の届く世界ではなかった。説教のプロたちの営みは、遠い雲の上の世界だった。「説教塾紀要」の存在は知っていたが、自分が読むようなものではない、と思っていた。
 
だが、主宰の加藤常昭先生の最後の説教が掲載されていると聞き、迷わず購入の手続きをとった。2024年3月発行の最新版である。
 
2023年10月8日のその礼拝の末席を私は汚していた。加藤先生と時を共有してその説教を聴くのは、初めてだっ

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若葉のいろ

若葉のいろ

「ファースト・オブ・メイ」と聞いて、ピンとくる人はかなりの年配になるだろうか。映画「小さな恋のメロディ」の挿入歌である。邦題は「若葉のころ」とつけられ、映画のシーンに相応しいタイトルとなった。ビージーズが、まだディスコサウンドに入る前の名作である。それは、5月1日を指すのだろうか。もっと広く指してもよいのだろうか。「駆け出し」の意味もあるというから、幼くて一途な恋をモチーフに、「子どもたちの世界」

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『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

『説教ワークブック:豊かな説教のための15講』

(トマス・H・トロウガー;レオノラ・タブス・ティスデール・吉村和雄訳・日本キリスト教団出版局)
 
私にとって3000円+税とは高価な本だ。だが、気になっていた。キリスト教の礼拝説教というものに執着のある私だから、テーマが気になる、というのも事実だ。だが、この共著の一人が、トロウガーであるという点が、どうしても見逃せなかった。『豊かな説教へ 想像力の働き』を読んだからだ。日本の説教塾でも、説教と想

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聖書愛読こよみ

聖書愛読こよみ

お気づきの方もいらっしゃるだろうと思う。私は1日おきに、聖書から「ショートメッセージ」を記しているが、これは日本聖書協会の、聖書「愛読こよみ」に基づいている。少なくとも2014年の秋から、毎日この聖書箇所を頼りに、聖書と祈りのひとときを過ごすようにしている。そこで与えられた聖書箇所を開き、B6ノート1頁に黙想を綴るのだ。
 
ローズンゲンという、ドイツで伝統の「日々の聖句」もあるが、「愛読こよみ」

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逆説と説教

逆説と説教

「逆説」として自分が発案して説を出すとき、世間の人が騙されているのに自分だけは真理を見出した、のような心理を含んでいることがある。
 
はたして逆説とは何か。こういうときに、昔は決まって「広辞苑」によると……と言っていた。広辞苑信仰があった世代に染みついた性であるのかもしれない。少なくとも、それだけを権威にして寄りかかろうとはしないほうがよいだろう。
 
因みに、旧い広辞苑では、「逆説」について、

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神らしいふるまいとは何か

神らしいふるまいとは何か

私は毎年、心静めるために、一年を通して読む黙想の本を置いている。二三年同じ本を使うと、次は別の本にする。今年は何年ぶりかに『み言葉の放つ光に生かされ』という本を用いている。加藤常昭先生が2000年に著わしている。
 
一昨日は、ローマ書4;24-25から、引かれていた。
 
わたしたちの主イエスを死者の中から復活させた方を信じれば、わたしたちも義と認められます。イエスは、わたしたちの罪のために死に

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リスナーあっての完成

リスナーあっての完成

NHKが昨年から、ラジオ百年を迎えるにあたり、ラジオ放送の意義を振り返るような企画を次々と送っている。単発的な特集もあるが、毎週日曜日に放送されている「伊集院光の百年ラヂオ」が、私のお気に入りである。
 
伊集院光とアナウンサーの礒野佑子とが二人で送る番組で、ちょうど礼拝の時刻に放送されるため、私は後から聞いている。貴重なラジオ音源から、ラジオの歴史を繙くものである。
 
すでに「100分de名著

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非常識で迷惑な大人たちの姿

非常識で迷惑な大人たちの姿

電車の中で騒ぐ人間は嫌いである。他人に思考をさせないからである。耳栓でもしているという自衛方法もあるが、誰もが耳栓をもたなければならない、という考えは間違っていると思う。大きな声で騒ぐ者は、他人をなんとも思っていない。
 
お年寄りの中には、ある程度仕方がないことがある。耳が遠いために、声もいくらか大きくならないと会話すらできないのだ。また、子どもが泣くことについては、私は全く何も感じない。子ども

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『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

『天の国の種』(バーバラ・ブラウン・テイラー;平野克己・古本みさ訳;キリスト新聞社)

以前本書をメインに据えて触れたことがあるが、本の内容の紹介はしていなかった。本書に関して再読する機会があったとき、それで発覚した。以前読んでいたのに、このコーナーにまとめていなかったのだ。不覚である。遅ればせながら、ご紹介申し上げる。
 
最初に読んだときも、そのイメージ豊かなメッセージに驚愕した。それは明らかに聖書を逸脱している。だが、いま手許の私たちのいる世界での場面としては、まさにそういうこ

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心

聖書に「心」と訳されている語は、原語ではひとつとは限らない。感情的なもの、心臓からくるもの、理性のようなもの、魂と呼んでもよいようなもの、もし日本語で別に訳そうとすればいろいろ可能な場合がある。しかし、それほどきっぱりと分かれるとは決める必要もない場合が多く、「心」と書いておけば、都合が好いのかもしれない。
 
英語でいうと、mind,spirit,heart,soul という例を挙げると、ここで

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受難週の道

受難週の道

いつの間にか受難週を迎えている。十字架への最後の1週間は、福音書でも記述の熱いところである。
 
福音書というスタイルは、文学的に捉えても独特である。イエスの生涯を描くようでありながら、最後の1週間にエッセンスが集約されているように見える。
 
もちろん、イエスが教えを語り、癒やしなどの業を行ったその歩みは、たっぷりと描かれる。イエスの弟子、そして信仰を継承する仲間に対して、イエスの教えたことやし

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説教と聖書

説教と聖書

礼拝説教を重んじるボーレンは、聖書朗読はどうしても必要であるわけではない、とその『説教学Ⅰ』でしきりに主張している。他方、聖書そのものが神の言葉であるから、その朗読こそが命である、と言う人もいる。ボーレンは、説教がその都度神の言葉となる、という方向で説教を見ている。それは、語る者がどうであれ、という辺りも考察しているから、必ずしも理想的な説教者を想定しているわけではないようだ。
 
それを読んでい

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『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

『主イエスの背を見つめて 加藤常昭説教全集26』(教文館)

副題が「福音の真髄」と書かれているが、これについては「あとがき」に触れられている。たぶん、全編読み終えて、最後にそれを味わうとよいだろうと思う。
 
加藤常昭説教全集は、教文館より、2004年に発刊開始、2021年に完結した。全37巻の見事な全集である。かつてヨルダン社で20巻ものとしてあったが、それに17巻を加えた形で完結した。
 
すでに高齢で、視力に支障を生じていた加藤氏のおもな説教は、その

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年齢を重ねた人への福音

年齢を重ねた人への福音

いろいろ困難な生活もあったが、なるがままに、ここまで来た。自分は十分に生きた。思い残すことはない。あとは、自然の懐に静かに眠るだけ。自然に還るのだ。
 
年を重ねるということは、そのような境地になることだ。日本人にとり、こうした思いは、比較的分かりやすいものだろう。先人たちも、そのようなことを言ってきたし、自分もそう思えるようになってきた。こうした方も多いだろうと思う。
 
年齢の数字が、容赦なく

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