マガジンのカバー画像

エッセイストになりたいねん

136
自分の人生や日々の生活に起きたことをエッセイにしています。
運営しているクリエイター

#写真

綿生さんちの素朴な毎日/昼と夜の混ざる時間

綿生さんちの素朴な毎日/昼と夜の混ざる時間

「内の光と外の光が混ざる時間が一番あかんねん」

夕方五時、廊下に車椅子を停めて庭の景色を眺めていると、刻一刻と空が夕方から夜へと色を変えていく。街灯が灯り、庭の向こう側の原っぱから鋭い光が差し込んでくる。夕暮れは綺麗だけど、この時間が一番苦手だ。自然の光と人工の光が混ざり合って、目の明るさをどこに合わせればいいのかわからない。

「いや、なんか文学的な表現やん」

私の苦手発言を聞いて家族はこう

もっとみる
人の孤独を笑うな

人の孤独を笑うな

言葉にするのも憚るくらい、寂しい時間が毎日ある。

一人が怖い。

誰もいない家。動かない物質。このまま世界が滅んでいても気付かないくらいの静けさ。

私は一人が好きだと思っていた。
本当の一人になるまでは。

この一年と八か月の間に行った場所は、自分の寝室と、すぐ隣のトイレ、そこから目の前の階段を下って、脇にある和室。長く伸びる廊下と、その先の脱衣所、お風呂場、真横にあるトイレ。

どんなに多く

もっとみる
はじめてのパスポート、はじめての原宿 〜中学生と証明写真〜

はじめてのパスポート、はじめての原宿 〜中学生と証明写真〜

はじめてパスポートを申請したのは中学生の時だった。申請には顔写真が必要ということで、スーパーの証明写真機で撮影をすべく自転車を漕いで出掛けていった。近くのスーパーに行く時ほど自転車のペダルの漕ぎ心地が軽快なことってないと思うのだがなぜだろう。単純に近いからかな。走行時間10分足らず、なんとなくソワソワドギマギしながら風を切って走った。ドギマギしちゃうお年頃です。

確か証明写真機自体その時が初めて

もっとみる
アイスランドの朝焼けと、いつもの部屋の夕焼けと。

アイスランドの朝焼けと、いつもの部屋の夕焼けと。

世の中にはありとあらゆる楽しいものや綺麗なものが溢れているけど、空ほど面白いものはないと思う。ふと見上げた空の美しさにもハッとさせられるけど、「さあ空でも見るかな」と腰を据えて何十分もじっくり眺めると、これはもう何物にも変えがたい見応えがある。

雲は流れたり止まったりして姿形を変えて、太陽は少しずつ傾いていつの間にか朝は昼になり、昼は夕方になり、夕方は夜になっている。そのうち月が現れて、「今日は

もっとみる
パンを食べるために生まれてきた 〜クロワッサンオムレツサンドの巻〜

パンを食べるために生まれてきた 〜クロワッサンオムレツサンドの巻〜

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」というのはあまりにも有名なマリーアントワネットの迷言で、今さらこれについて語るのも無粋な気はするのだけど、しかしだ、もしも自分がこの言葉をそのままんま投げかけられたら一体どんな気持ちになるだろう。きっとムッとするに違いない。

まず第一に、当たり前だがお菓子ではパンの変わりにならない。パンをお菓子で代用せよというのは、おはぎでおかずを食べろと言ってい

もっとみる
ノートルダムの思い出

ノートルダムの思い出

私がノートルダム大聖堂を訪れたのは2013年のことでした。ヨーロッパ一周旅行の途中、フィンランド、ベルギー、ドイツ、フランスと周ってきて、パリにも数日間滞在しました。往復の航空券だけ購入した、旅先も日程も決めていない一人旅だったのですが、私はすっかりパリに魅了されてしまい、予定より長く、一週間ほど滞在しました。

ヨーロッパには本当に数多くの教会があり、それまでの海外旅行やイギリス留学含め、教会見

もっとみる