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カナダ暮らし

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カナダ西海岸で暮らしています。魔女岩の麓、パワフルな街の日常を集めた記事です。
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記事一覧

Raincouver  〜February メープルベーコン攻防〜

Raincouver 〜February メープルベーコン攻防〜

口に入れた瞬間に「ああ、しまった」と声が出た。
普通のベーコンだと思ってよく見ずにカゴに入れてしまった。失敗した。

ベーコンの肉肉しさと塩っぽさと同時に、メープルのあまーくて、芳醇な香りが口の中に広がる。

パッケージを見ると「Maple Flavoured Bacon」と書いてった。

ちょっと前に流行ったソルトキャラメル的な?
あまじょっぱい的な?

いや、なんかそれとは違うんだ。
クセにな

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Suncouver 〜January ママ友と呼ばないで〜

Suncouver 〜January ママ友と呼ばないで〜

「Eri, Can you call my mom?」

子供の友達から、下の名を呼び捨てにされることに慣れるまで少し時間がかかった。

日本にいた時、私は「さきちゃんのママ」、もしくは「岸田さん」と呼ばれていた。「恵里」という私の名を呼ぶ人は、夫か長年の友人か親兄弟くらいで、当時は幼稚園の年長だった娘のママとして人と接する人が多かったこともあって、昼の間、「恵里」は私の中からひっそりと姿を消して

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Snowcouver 〜パイナップル・エクスプレス〜

Snowcouver 〜パイナップル・エクスプレス〜

パイナップル・エクスプレスが接近している。

この陽気でトロピカルな名前の正体は、北国のカナダからは遠く離れたハワイからやってくる低気圧。

カナダの西海岸に寒さや雪をもたらす低気圧は大まかにわけて2つ。
一つはアラスカや北極圏から降りてくる寒気で、湿度のないサラサラの雪と外に出た瞬間に冷凍庫の中にいるような寒さをもたらす低気圧。

もう一つは、気温は氷点下を下回るかどうかの穏やかな温度だが、湿っ

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グレーシャー•ブルー未来に残したい風景

グレーシャー•ブルー未来に残したい風景

冬に雪が降るのは当たり前のことだ。

当たり前のことだった。

雪は冬の間にたまに降るものだ。

この15年の間に、毎夏、最高気温が更新され続け、氷河はみるみる後退した。
2万年という地球の歴史が、溶けて消える。

海の中に。
大気の中に。

跡形もなく。静かに。

昔、小さな氷河をジップロックに入れてこっそり持ち帰ったことがある。
冷凍食品や水道水の氷に紛れて冷凍庫で眠る、2万年の記憶。

焼酎

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Raincouver  〜December〜

Raincouver  〜December〜

今年の冬は寒い。
ラ・ニーニャといえども当たり年とそうでない年がある。
今年は当たりだ。

去年のラ・ニーニャは、確かに雨の量がいつもより多かった気がするが、雪が降ったのは2回かそこらで、あとはずっと雨だった。
つまりその程度の寒さだったということ。

けれど、今年のラ・ニーニャは、まだ12月だというのに、5、6年前の大雪と寒波を彷彿させる飛ばしっぷりだ。
今日の最低気温は氷点下20度だそうだが、

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Raincouver  〜November〜

Raincouver  〜November〜

知らぬ間に地球にかかる重力の値がきつくなったのだろうか。
体がだるくスッキリしない。
頭痛とまではいかないが頭に霧がかかったように重い。

灰色の厚い雲の隙間に伸びる太陽の光。
眩しいなあ。
次にすっきり晴れ渡る空が見れるのはいつ?

バンクーバーの長雨は11月に始まり、年によっては降雪を挟んで、5月ごろまで続く。

この長雨とバンクーバーを合わせて、人はこの時期のこの街のことを”Raincouv

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「ずっと変わらないこと」を追いかける

「ずっと変わらないこと」を追いかける



私の前を走るのは、息子だ。

「晴れ+降雪+全リフト稼働+平日」

いくらスキー場の近くに住んでいるからといって、しょっちゅう好条件で滑れるわけではない。

リゾートの神様は週末に雪を降らすのが好きだ。
ゴンドラやリフトは同じバブルの人としか乗れないので、週末はゴンドラ2時間待ちなんてこともザラだ。

だから、この日が晴れると知って、特に用事がなかった私は、息子を連れて山に上がることにした。

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毎年入金される謎の大金

毎年入金される謎の大金

確定申告の準備をするためにカナダ税務局のオンラインアカウントにアクセスした。税務局からお知らせメールが届いていることに気がついた。
その時点ですでに嫌な予感がする。

「2020年8月x日に2020年度分の税金、$2,100分を確かに領収しました」

まただ。
今年も私の所得税のアカウントに、見知らぬ入金がされている。
2100ドルは日本円で20万円をかするくらいだろうか。

去年も同じことがあっ

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心を受け取ると書いて愛と読む

心を受け取ると書いて愛と読む

子育てをしていて私が痛いほど学んだことは、

「愛するだけではなく、愛されるのにも器が必要」

ということ。

特にわたしの子供達が小さい時には「ママじゃなきゃダメ」という時期が長く、子供達のオデコに「ママ命24時」と書いてあるのが透けてみるくらいわたしのことを愛してくれていました。

当の私は、周りの友達の中では割と早いうちに母親になったので、育児のことで相談する相手もおらず、海外での子育てとい

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冬の精霊の帰る場所

冬の精霊の帰る場所

*第二回The cool noter賞の海外部門にて受賞した作品です*

最後にあの地を訪れたのはもう10年も前になる。
その間に幾度となく再訪しようと思っては挫けた。
再訪できないのには理由があった。

私が失ってしまったから。
あの時の輝きを、あの時のピュアさを、あの時見ていた世界を。

息が白くなり、ハラハラと雪が舞い落ちる頃になると想う。
彼はまだあの地にいるだろうか。

冬の精霊の帰る場

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クリスマスツリーが紡ぐ物語

クリスマスツリーが紡ぐ物語

「家にクリスマスツリーを飾る時がきたら、クリスマスツリーは本物の木を。そこに、シルバーのフレークオーナメントと赤とゴールドのボール状のオーナメントを飾って統一感を出したら、トップの部分は星じゃなくてゴールドのリボンをつけよう。」

そう、ショッピングモールの一角に飾られているようなおしゃれなクリスマスツリーのように。

クリスマスツリーを家に出し始めたのは今から10年前だったと思う。
最初の年は、

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駆け抜けるしかない時は

駆け抜けるしかない時は

ああ、note書けてない!
そちこちでネタは思い浮かぶのだけれど、
日常というマラソンの中でおしりに火が付き気味で、そんな時は無理せずマイペースでいくしかない2020年の冬至です。

最近note率が低いのに読みに来てくださっている方ありがとう!

2020年冬至は、天体的に木星と土星と冥王星が一列になる稀な配置だとか、風の時代に突入だとか、コロナ再感染爆発だとか、皆さんも色々耳にするのではないか

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Celebration of Life お祝いのお別れ

Celebration of Life お祝いのお別れ

ご無沙汰していますUniearthです。
みなさんおげんきですか〜?
最後の記事からなんと2週間も経ってしまいました。
noteも開けず、みなさんの記事も全然読みにいけず、あっというまの2週間。。。

この2週間、前の記事にもちょっと書いたのですが、夏に引越したばかりの家から引越しを余儀なくされ、引越しでワタワタしていました。
で、新しい家に腰を下ろし荷解きをしようと思ったさなかに19歳の愛猫の太

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馬ボランティアの日〜進歩〜 【12/365】

馬ボランティアの日〜進歩〜 【12/365】

*毒にも薬にもならない500字程度のつれづれ記です*

今日は馬牧場でのボロ取り(うんこ取り)のボランティアの日でした。
今まで8回くらいやったでしょうか。
今日はなんと、パドックに近づくやいなや1頭の馬が私に向かって挨拶しにきてくれました!

挨拶にきてくれた馬はMidnightという26歳のおばあちゃん馬。
MidnightはHawkという連れの若い馬がいて、その2頭はいつも対になっています。

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