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本を読むことと、ものを書くことが好きです。 サイトマップはこちら↓ https://note.com/blue_ocean_gem/n/n0e4b4988fcc8 社会福祉士・保育士・介護支援専門員。中1女子の母。 子ども支援コミュニティに参加中。

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記事一覧

固定された記事

「おはよう、私」①(短編連作小説 & 音楽)第1話

第1話・瑠璃  朝。  遠く聞こえるアラームの音が意識をたたく。  細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。  ああよかった今日はいい天気なんだなと、ぼ…

さち
2週間前
201

noteの路地裏で

しばらくご無沙汰していたnoteの街。 戻って早々、コニシ木の子さんの「なんのはなしですか」の路地裏に迷い込んでしまった。 路地裏の入口となったのが、こちらの記事。…

さち
8日前
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「おはよう、私」④(短編連作小説 & 音楽)音楽編

短編連作『おはよう、私』をお読みいただき、ありがとうございました。 この3つの物語には、根底を貫いて流れる一曲の音楽があります。 第3話で青磁の背中をやさしく押…

さち
2週間前
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「おはよう、私」③(短編連作小説 & 音楽)第3話

第3話・青磁  朝。  スマホのアラームで目が覚める。  カーテン越しに伝わる外の世界はまだ薄暗く、僕は小さくうめく。  うう、なんだかいい夢を見てたのに。  な…

さち
2週間前
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「おはよう、私」②(短編連作小説 & 音楽)第2話

前回のお話しはこちら ↓ 第2話・葵  朝。  アラームの音が意識に届く。  細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。  ああよかった今日はいい天気な…

さち
2週間前
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『両手にトカレフ』ー 子どもであるという牢獄

ブレイディみかこさんの『両手にトカレフ』は、子どもの貧困をテーマにした小説だ。 ティーン向けに書かれたような読みやすい文体ながら、内容は決して甘くない。 表題の…

さち
11か月前
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言葉のひとひら『あなたのための短歌集』

少し疲れたとき、わたしには詩や短歌が効く。 心も体もいっぱいで、もうこれ以上何も入らないと思うとき、詩や短歌をただ眺める。 なにが書かれているのか、意味は考えな…

さち
11か月前
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夜を歩く

あれは沖縄のどの島だったろう。 本島からずいぶん離れた、小さな島だった。 一日思うさま泳いだあと、宿でシャワーを浴びて着替え、明るい夕方の空の下、バスに乗って夕…

さち
11か月前
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2000円分のアイスクリーム

「よかったら家族で食べて」とサーティワンアイスクリームのギフト券をいただいたので、2000円分のそれを持って、1駅先のサーティワンへ行く。 ショーケースの前で、思い…

さち
1年前
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【おはDAOコミュニティ】じゃがさんインタビュー#1「おはDAOって、なんですか?」

おはDAOコミュニティの皆さま、 おはDAO~ ♪ OH…COMM(オーエイチコム)の 事務サポート的な役割を させていただくことになった、 さちです。 運営メンバーに応募した…

さち
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「本を読まない人生を生きるつもりはない」ー素敵な選書サービス見つけました

先日noteで、こんな記事を見つけました。 へえ、わたしだけの3冊を選んでくれる、選書サービス。 ふむふむ、オンライン完結。お手軽。 え、しかも無料。 なるほど、選んで…

さち
1年前
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雨の日の読書ー『掃除婦のための手引き書』

   ルシア・ベルリンの短編の出だしは、いつもこんなふうだ。  静かで、透徹している。  窓の外から静かに聞こえる雨音みたい。  彼女の文章を読むたび、いつもそう…

さち
1年前
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わたしたちは、似ている。

 仕事を辞めたとき、同期の子が「お餞別に」と言って「T (彼女のイニシャル)文庫」と書かれたミカン箱くらいの大きさの段ボールをくれた。  開くと、文庫本がぎっしり…

さち
1年前
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センス・オブ・ワンダーを育む

早朝の公園。 誰もいない新鮮な空気の中を、 まだ小さかった娘と、よく一緒に歩いた。 草の上には無数の朝つゆがきらきらと光り、まるで宝石が散りばめられた絨毯の上を歩…

さち
1年前
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散歩の効能

 雨の日の散歩が好きだ。  普段はたくさんの人がジョギングをしている公園も、雨の日は、ひっそりとしている。  濡れた草木の香りは瑞々しく気持ちがいいし、葉に思う…

さち
1年前
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春樹さん、「壁」って一体なんですか。(システムとしての「強固な壁」と、意識の境界線としての「不確かな壁」)

わたしは普段、小説を分析したり検証したりすることは、どちらかというとあまり好きじゃない。 細切れに分断すると、物語の生命力のようなものが損なわれてしまうような気…

さち
1年前
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「おはよう、私」①(短編連作小説 & 音楽)第1話

「おはよう、私」①(短編連作小説 & 音楽)第1話

第1話・瑠璃
 朝。
 遠く聞こえるアラームの音が意識をたたく。

 細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。
 ああよかった今日はいい天気なんだなと、ぼんやりした頭で反射的に考える。

 「よかった」と思ったのは仕事で人に会いに行く予定があるからで、晴れていれば移動がらくだからだ。雨ならば広がってしまう細いくせ毛も、今日はきっと大人しく、肩で揺れてくれるだろう。

 ほとんど無意識に

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noteの路地裏で

noteの路地裏で

しばらくご無沙汰していたnoteの街。

戻って早々、コニシ木の子さんの「なんのはなしですか」の路地裏に迷い込んでしまった。

路地裏の入口となったのが、こちらの記事。

#なんのはなしですか のハッシュタグの生みの親(たぶん)、コニシ木の子さんの文章に、まずやられてしまった。

まじめな文章かと思いきや思わず笑ってしまうその絶妙なワードチョイスに、知性とただ者じゃない感が滲んでしまっている。

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「おはよう、私」④(短編連作小説 & 音楽)音楽編

「おはよう、私」④(短編連作小説 & 音楽)音楽編

短編連作『おはよう、私』をお読みいただき、ありがとうございました。

この3つの物語には、根底を貫いて流れる一曲の音楽があります。

第3話で青磁の背中をやさしく押した、この曲です。


 作詞・作曲・演奏すべてが Jaga さんの手による、この素敵な楽曲。
 もともとは、歌詞のないピアノ曲でした。

 その優しくうたうようなメロディーからインスピレーションを得て、小説『おはよう、私』は生まれま

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「おはよう、私」③(短編連作小説 & 音楽)第3話

「おはよう、私」③(短編連作小説 & 音楽)第3話

第3話・青磁

 朝。
 スマホのアラームで目が覚める。
 カーテン越しに伝わる外の世界はまだ薄暗く、僕は小さくうめく。

 うう、なんだかいい夢を見てたのに。
 なんでこんな薄暗い時間にアラームが鳴るんだ。

 さらさらと崩れていく夢のしっぽを追いかけてもう一度寝てしまおうと思った刹那、今日が春休み明けの一日目であることを思い出す。

 スマホは7時を知らせていた。
 耳を澄ますとかすかに雨の音

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「おはよう、私」②(短編連作小説 & 音楽)第2話

「おはよう、私」②(短編連作小説 & 音楽)第2話

前回のお話しはこちら ↓

第2話・葵

 朝。
 アラームの音が意識に届く。

 細く開いたカーテンの隙間から、細い光がこぼれている。
 ああよかった今日はいい天気なんだなと、まだ半分眠りの中にいる頭で反射的に考える。

* * * *

 昨日の朝は雨だった。

 雨の日は、子どもを保育園に送るのにいつもより時間がかかる。
 レインコートを着こみ、自転車の後ろに乗せた子どもに椅子ごとすっぽり

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『両手にトカレフ』ー 子どもであるという牢獄

『両手にトカレフ』ー 子どもであるという牢獄

ブレイディみかこさんの『両手にトカレフ』は、子どもの貧困をテーマにした小説だ。

ティーン向けに書かれたような読みやすい文体ながら、内容は決して甘くない。
表題の「トカレフ」が拳銃のことだとわかったときには、ひやりとした。

銃を両手に少女が撃ち抜きたかったもの、それは一体なんだろう。

1.子どもの貧困生活保護費がドラッグに消えていく

物語の舞台は現代の英国、主人公は14歳の少女ミア。

アル

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言葉のひとひら『あなたのための短歌集』

言葉のひとひら『あなたのための短歌集』

少し疲れたとき、わたしには詩や短歌が効く。

心も体もいっぱいで、もうこれ以上何も入らないと思うとき、詩や短歌をただ眺める。

なにが書かれているのか、意味は考えない。
ただ眺め、その言葉のもつ音が、頭の中を流れるままにする。

ぼうっとした頭を、言葉はただやさしく通り抜けていく。
ひらひらと通りすぎていく言葉たち。
考えることを要求しない言葉たち。

ふいに、言葉のかけらが反射する。
わたしの中

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夜を歩く

夜を歩く

あれは沖縄のどの島だったろう。
本島からずいぶん離れた、小さな島だった。

一日思うさま泳いだあと、宿でシャワーを浴びて着替え、明るい夕方の空の下、バスに乗って夕食を食べに出かけた。

* * * *

沖縄のごはんと音楽とおしゃべりをたっぷり堪能してお店を出る。
バスの時刻表を見ると、次のバスまでまだ少し時間があった。

すでに陽は落ち、昼間の強烈な熱気は涼やかな夜風に変わっている。

歩くのも

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2000円分のアイスクリーム

2000円分のアイスクリーム

「よかったら家族で食べて」とサーティワンアイスクリームのギフト券をいただいたので、2000円分のそれを持って、1駅先のサーティワンへ行く。

ショーケースの前で、思いきり悩む。
ストロベリーショートケーキ、キャラメルリボン、ラムレーズン。
ジャモカコーヒー、オレンジソルベ、白桃ブラマンジェ。

よりどりみどりのサーティワン、ああどれも美味しそう。

あまりに悩んでいるので、店員さんが次々に試食をく

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【おはDAOコミュニティ】じゃがさんインタビュー#1「おはDAOって、なんですか?」

【おはDAOコミュニティ】じゃがさんインタビュー#1「おはDAOって、なんですか?」

おはDAOコミュニティの皆さま、
おはDAO~ ♪

OH…COMM(オーエイチコム)の
事務サポート的な役割を
させていただくことになった、
さちです。

運営メンバーに応募した理由や経緯は
こちらの記事に書かせていただきました。
お読みいただけたら嬉しいです。

さて、今回は、じゃがさんに
普段なかなかゆっくり聞けないことを
インタビューさせていただいたので、
それを記事にしてみました。

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「本を読まない人生を生きるつもりはない」ー素敵な選書サービス見つけました

「本を読まない人生を生きるつもりはない」ー素敵な選書サービス見つけました

先日noteで、こんな記事を見つけました。

へえ、わたしだけの3冊を選んでくれる、選書サービス。
ふむふむ、オンライン完結。お手軽。
え、しかも無料。
なるほど、選んでもらった本のタイトルと選書コメントがメールで送られてくるだけで、別に買う必要もないのね。

…つまり、ただただ純粋に、本屋さんが、
わたしだけのために本を3冊選んでくれるってこと?
え、なにそれ、楽しくない?
うわ、そしてなんて素

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雨の日の読書ー『掃除婦のための手引き書』

雨の日の読書ー『掃除婦のための手引き書』

 

 ルシア・ベルリンの短編の出だしは、いつもこんなふうだ。
 静かで、透徹している。

 窓の外から静かに聞こえる雨音みたい。
 彼女の文章を読むたび、いつもそう思う。

* * * *

 『掃除婦のための手引き書』は、24篇からなるルシア・ベルリンの短編集だ。

 死後10年経って再発見された彼女の短編は本国アメリカで大絶賛され、たちまちベストセラーになった。
 日本でも、2020年に本屋

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わたしたちは、似ている。

わたしたちは、似ている。

 仕事を辞めたとき、同期の子が「お餞別に」と言って「T (彼女のイニシャル)文庫」と書かれたミカン箱くらいの大きさの段ボールをくれた。
 開くと、文庫本がぎっしり詰まっていた。

* * * *

 その職場はみな比較的仲が良く、わたしもみんなとよく一緒にごはんに行ったり旅行にでかけたりした。

 でも彼女は、ほとんどそういうことをしなかった。
 学生時代からの婚約者がいて、仕事が終われば彼と過ご

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センス・オブ・ワンダーを育む

センス・オブ・ワンダーを育む

早朝の公園。
誰もいない新鮮な空気の中を、
まだ小さかった娘と、よく一緒に歩いた。

草の上には無数の朝つゆがきらきらと光り、まるで宝石が散りばめられた絨毯の上を歩いているようだった。

娘は一歩ごとに立ち止まり、
そんな朝つゆを飽きることなく眺めた。

* * * *

 自然の美しさに目を見はるときに感じる、幸福な驚き。
 東京で暮らしていても、日常の中にこういう瞬間はたくさんある。

 そん

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散歩の効能

散歩の効能

 雨の日の散歩が好きだ。

 普段はたくさんの人がジョギングをしている公園も、雨の日は、ひっそりとしている。

 濡れた草木の香りは瑞々しく気持ちがいいし、葉に思うさま雨粒を受けている木々もどことなく嬉しそう。

 ときどきすれ違う人もわたしも、それぞれが雨と傘に閉じ込められて、なんだかまるでプライベートな空間ごと移動しているみたい。

 雨音と草木の香りに満ちた、プライベート空間。

 あまりの

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春樹さん、「壁」って一体なんですか。(システムとしての「強固な壁」と、意識の境界線としての「不確かな壁」)

春樹さん、「壁」って一体なんですか。(システムとしての「強固な壁」と、意識の境界線としての「不確かな壁」)

わたしは普段、小説を分析したり検証したりすることは、どちらかというとあまり好きじゃない。

細切れに分断すると、物語の生命力のようなものが損なわれてしまうような気がするから。

蛍の体を分解して「なぜ光るのか」を知っても、生きた蛍が光るさまを見る感動を知ることはできないのと同じように、優れた物語は蛍のように生きて光を放っているし、その美しさを味わい愛でるときに分析や説明は不要だ。

蛍も物語も、わ

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