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【小説 喫茶店シリーズ】 Ⅱ. ドトール「新町店」 (vol.6)
「多分、(アナタの)彼と同じようにボクは、世の中の小さな不正や欺瞞が許せないんです。それがテーブルの上にこぼれ落ちて残っている砂糖粒のように、見過ごされがちで、些細な事柄だからこそです。幼稚園・小学校では、『なかよく』『助けあって』『正しく』生きるように教えるのに、いざ子供たちの中に固有の自我が芽生え、体付きも変わってくると、一転。もうすぐ中学だ、『世の中そんなもんじゃないぞ』『もっと強くなれ』。
もっとみる【小説 喫茶店シリーズ】 Ⅱ. ドトール「新町店」 (vol.5)
「じゃぁ、彼は未熟だったってこと?」
「あの真剣でまっすぐな目をして、いつでも穏やかに、異を唱えることなどなく静かに耳を傾けていた。私は、そんな彼に何度救われたことか。その彼が未熟なのだとしたら、他の人たちはどうなの?苦しんでいる人や、困っている人がいても見て見ぬ振り、例えこちらから話しかけても、話半分自分に都合のいいようにしか聞かず、言うことといったら『今忙しい』か『それが何になる』。そんな風
【小説 喫茶店シリーズ】 Ⅱ. ドトール「新町店」 (vol.4)
ボクは、どうも相当な程度で混乱していた。
もっと正直に言うと、肉体をそこに置いて逃げ出そうとしていた。
その時のボクは、「明子は、一体どうしたんだ?」と、そもそも今日ここで会う約束だった後輩のことを、現実只今のボクの問題の方に気を向けた。
そう思うようにボクの脳内司令が配慮していたのだ。
「深入りしてはいけない」と。
ところが、このボクの肉体の管理者に対して、ダイモーン(指導理性)の方は、「逃
【小説 喫茶店シリーズ】 Ⅱ. ドトール「新町店」 (vol.1)
【新町の(旧)ドトールの位置についての考察】
「新町のドトールで待ってるから」と云ったのに、
彼女は来なかった。
ボクは、一階の真ん中の席で、“通りとニラメッコ”でもしてるかのように、お昼前の賑わいを見せてきた表通りに向かって、2時間待った。
それも、彼女が来たときに備えてカフェラテのS一杯だけでだ。
その最後の雫を飲み込んで、「もう帰ろう」と思った時だった。
不意に、見知らぬ女性に声を掛けら