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此芽は何の草と知れるなり
満員電車に乗って神田に通っていた頃は、ただただ東京という街に飼われた魚のようだった。
Applewatchで改札を通り抜ける。ノイズキャンセリングのイヤホンを装着する。AIが管理する空調の効いた部屋で仕事をする。行動も体調も全てスマホが管理する。
毎日が目まぐるしく過ぎていく。皿洗いも洗濯も床掃除も全て家電に任せてしまう。気がつけば娘は走れるようになり、ジャンプも出来るようになっていた。
そんな
子のあたまの匂いを嗅ぐ / 祖母について
「ばあばが、昨夜お星さまになりました。」
母から、祖母が亡くなった旨のメッセージが届いて、もう何日が経っただろうか。
親族の中で1人遠方に嫁いだ私は、祖母の葬式に参列する事もなく、彼女が長い人生を終えたことについて、未だに実感が湧かないでいる。
私が東京に住み始めた頃から足腰が悪くなり、コロナ禍で会えないうちに、祖母はどんどん弱っていった。
そのスピードはゆっくりに見えてとても早かった。
春