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国際金融制度改革の必要

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デリバティブまとめ

サミットでのデリバティブ廃止の提言にもかかわらず、その意味するところもはっきりしていなかったので、いつものごとくWikipediaを参照しながらそれを考えてゆきたい。

デリバティブの目的としては、

逆のポジションを取ることでリスクをヘッジしたり緩和したりすること
特定の条件につながるオプションを作り出すこと
原資産の中で取引できない原資産リスクを把握すること(天候デリバティブなど)
原資産の価

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2023年サミットへの展望

2023年サミットへの展望

昨日93年サミットのことについて書いて、よく考えてみたら、何事もなければ再来年の2023年が再び日本でサミットが開かれる予定になっていることに気づいた。そこで、30年前と同じ轍を踏まないよう、そしてそのリベンジがなんとか果たせるよう、政治がどうあれ、一人一人の思いをその機会にうまくぶつけて、より民主的な意思として望ましい方向に動かすことができないか、と考えてみた。すぐに、あるいは直接どうこうという

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堂島商取 コメ先物取引廃止

堂島商取 コメ先物取引廃止

コメ先物令和3年8月7日付日本経済新聞で大阪堂島商品取引所でのコメ先物取引廃止の記事が出ていた。10年の試験期間を経ても、生産者の参加が広がらず、供給サイドへのメリットが十分に提示できなかったと言える。それもそのはず、この市場で独自ブランドとして上場されているのは、取引のほぼ9割を占める新潟産コシヒカリをはじめ、宮城産ひとめぼれ、秋田産あきたこまちに限られており、あとは東京の市場で一般的に取引され

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アシックス金融派生商品について

アシックス金融派生商品について

サステナビリティ・リンク・デリバティブ
令和3年8月6日付日本経済新聞8面金融経済欄で、アシックスが、サステナビリティ・リンク・デリバティブ(SLD)を導入したという記事が出ていた。これは、環境関連の目標達成状況に応じて外貨調達レートが変わるものであるという。環境関連の金融商品としては、これまでも、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)という、環境目標達成度合いに応じて貸出金利が変わるというも

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国際金融制度改革の必要性12 ー 為替レート/まとめ

国際金融制度改革の必要性12 ー 為替レート/まとめ

*長くお付き合いいただきましたこのシリーズ、今回で完結です。無料で最後までお読みいただけますが、よろしかったらご購入いただき、オススメしていただけると嬉しいです。

為替レートの決まり方ここで、銀行に持ち込んだ時など、為替レートがどこで定まるのかという、外国為替にとっての根源的な問題に行き着くことになる。為替レートの定まり方には、大きく言って以下の三つがありそう。一つ目は、中央銀行が受け入れられる

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国際金融制度改革の必要性11 ー 新しい国際政治経済モデル

国際金融制度改革の必要性11 ー 新しい国際政治経済モデル

国際政治経済モデルの限界一方で、安全保障や政治が関わった国際的な話になると、モデルとしての限界が露呈している。破壊、復興による第二次世界大戦型の経済成長モデルは、すでに述べたとおり金融の発展によって限界に突き当たっており、別のモデルが必要とされている。戦争でなくても、自然災害は継続的にどこかで起こっており、別に人為的に破壊活動を行うという無駄なことをする必要もない。復興モデルは人為的破壊がなくても

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国際金融制度改革の必要性10 ー 同時多発テロからの政策的示唆

国際金融制度改革の必要性10 ー 同時多発テロからの政策的示唆

4. 同時多発テロからの教訓 - まとめに替えていま、同時多発テロから20年の節目を迎えるに当たって、その事件によって期せずして明るみに出た不均衡なルール、つまりいかさまギャンブルと言えるデリバティブに代表されるカネでカネを売買する金融商品や、有限責任制度という株式会社の制度について考え直す絶好の機会であると言える。一方で、テロとの戦いという、国家権力が一方的にテロリストを定義し、それとの戦いを正

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国際金融制度改革の必要性9 ー 戦後経済体制 プラザ合意、同時多発テロ、経済戦争

国際金融制度改革の必要性9 ー 戦後経済体制 プラザ合意、同時多発テロ、経済戦争

第二次大戦後の戦争周期さて、歴史的に言えば、ケネディの時代も含めて、第二次世界大戦後ずっと平和が続いていたかと言えばそんなことはなく、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン紛争、湾岸戦争、そしてアフガン・イラク戦争というアメリカやソ連が直接介入したものも、ほぼ十年間隔位で起こり続けていたし、一方で中東でも48年を皮切りに73年の第四次まで十年に満たない間隔で戦争が起こり続けた。中東戦争の方はニクソンショ

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国際金融制度改革の必要性8 ー ケネディ外交

国際金融制度改革の必要性8 ー ケネディ外交

3.テロ事件前後の政治的文脈
一方で、サブプライム危機は非常に政治的な動きでもあった。サブプライムローンが顕在化したのはブッシュジュニア政権終盤の2007年頃からで、2008年大統領選挙でブッシュに変わってアメリカ初の黒人大統領となるバラク・オバマが生まれ、多くの人々に希望を与えていた。

オバマとケネディそれは、1961年にアメリカ初のカトリックの大統領となったケネディと多くの点で相似をなしてい

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国際金融制度改革の必要性7 ー 戦争から発展するデリバティブ

国際金融制度改革の必要性7 ー 戦争から発展するデリバティブ

戦争ビジネスモデルの盛衰湾岸戦争をきっかけとして、日本では集団的自衛権、そして安全保障の話が急速に盛り上がった。集団的自衛権の連鎖は、オーストリア皇太子殺害という事件をドミノ式に世界規模の大戦に拡大させてしまった第一次世界大戦を引き起こした理屈であり、冷戦終了後にまたぞろバランスオブパワーの世界を作り出し、小さなきっかけを元に世界紛争を作り出したいという懐古主義的な考えが広がっていたことを意味する

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国際金融制度改革の必要性6 ー オイルショックの構造と帰結

国際金融制度改革の必要性6 ー オイルショックの構造と帰結

2. デリバティブの急拡大こうした背景を踏まえた上で、最も注目を集めた世界貿易センタービルへのテロをどう考えるか、と言うことであるが、これはやはりグローバル経済制度に対する不満の顕在化だと考えるべきなのだろう。

テロ事件後の原油価格急騰話は少し飛ぶが、同時多発テロに前後して、国際的な原油価格がこれまでに例を見ないほどに急騰しだした。これまでも二度のオイルショックがあり、それによって世界経

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国際金融制度改革の必要5 ー 変動為替相場制のもたらしたもの

国際金融制度改革の必要5 ー 変動為替相場制のもたらしたもの

投機化する変動為替相場制金融業界の利益の源としての為替相場確立の流れの延長として、まずは85年のプラザ合意によるドル安誘導、そして逆に92年のポンド危機を皮切りに、特に97年のアジア通貨危機ではアジア通貨が次々にヘッジファンドによって売り込まれて暴落するという、政治的為替変動が次々起こるようになった。それは実体経済とはほとんど関係がなく、思惑に大きく左右されていた上に、その対応としてIMFの貸付け

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国際金融制度改革の必要 付論 − 市場を歪める金融緩和

国際金融制度改革の必要 付論 − 市場を歪める金融緩和

朝日新聞7月17日付6面「顕れたもろさ コロナ危機と経済5」で、金融緩和による材料高騰の話が出ていた。実需に基づかず、思惑で原材料が上がるというのは、在庫を持たなくても商品をやりとりできる先物市場あってのものだと考えられる。在庫を抱えなければならないとなったら、そのコストを考えれば思惑だけで買い占めなどはできないからだ。在庫を抱えても物価が上がるということならば、それは実需に基づくものだと考えて良

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国際金融制度改革の必要性4 ー 変動相場制と為替先物

国際金融制度改革の必要性4 ー 変動相場制と為替先物

戦後通貨体制の確立さて、戦後通貨体制についての構想は、シカゴ大学のジェイコブ・ヴァイナーを中心に1939年、まさに第二次世界大戦が始まった頃から動き出しており、まだ太平洋戦争の始まっていなかったその時期には、東南アジアの情勢は考慮の外であった。太平洋戦争が始まった1週間後には財務長官モーゲンソーは指揮下のアメリカ財務省で働いていたホワイトに戦後通貨体制についての草案づくりを命じ、ヴァイナーは翌年1

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