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結局女性のCEOや取締役は業績を改善するのか?

結局女性のCEOや取締役は業績を改善するのか?

はじめに
ゼミで読んだ論文のまとめ。いわゆるメタ・アナリシスの論文

Jeong, S. H. & Harrison, D. A. (2017) Glass Breaking, Strategy Making, and Value Creating: Meta-Analytic Outcomes of Women as CEOs and TMT members Strategy, Academy

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統計的有意に依存することの危険性

統計的有意に依存することの危険性

1. はじめに研究をしていると共同研究をすることが多々ある。共同研究の良いところは作業を分担できること。一方、やり方を間違えると非効率的で自分の思った通りに研究が進まないということもある。

なので、共同研究するときは共同研究する相手が自分にない強みを持っていて、その分野をしっかり任せることができるか否かが大切なんだろうなと思う。

逆に、自分より特定の分野の知識が少ないのに、相手が主導権を握ろう

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目標を設定することの負の効果

目標を設定することの負の効果

はじめにモチベーションの理論としてロックの目標設定理論が存在する。この理論は目標設定が人々の動機づけにつながることを主張しており、実際に具体的な目標を設定することで従業員の生産性が向上することが多くの研究で実証されている。

なので、この理論の説明の後に学生には具体的な目標を設定することをお勧めしている。学生生活は特に注意しないとなんとなく4年間を過ごしてしまうことが多い。一方、何か明確な目標を持

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卒業論文執筆のための参考にすべき論文と書籍の基準について

卒業論文執筆のための参考にすべき論文と書籍の基準について

1.はじめに論文を書くうえで、他の文献を参考にするのは必須である。ところが、学生の論文や他の学者や実務家が書いた論文の中には、なんでこんな参考文献引用しているのだろう、とか、なんであの論文を引用していないのだろう、とか思うことがある。

どのような論文・書籍を参考にすべきか?

今回はあくまで個人的な見解として参考にすべき論文・書籍の基準と、それらをどのように探すかをまとめておく。

2.参考にす

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面白い研究から重要な研究へのシフト

面白い研究から重要な研究へのシフト

はじめにAcademy of Management Journal の2020年に寄稿された Editor の論考に興味深いものがあったので紹介しておく。

From ”That’s Interesting" to "That's Important"

面白い論文とはまず、この論考のタイトルにある "That's Interesting" というのは1971年のDavis の論文を引用したもので

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研究スキル売買に関して

研究スキル売買に関して

はじめに興味深い記事が出ていたのでちょっとコメントをかいておく。

スキルマーケットとは、個人が自分の得意分野のスキルを活かして業務を委託してもらい、それに対する対価をもらうものである。

例えば、プログラミングスキルを教えます、とか、イラスト書きます、とか、作曲しますとか、色々な人が自らのスキルを販売している。買い手はこうした人たちに、自分のしてほしい業務を委託することで売買契約が成立する。

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アフターコロナ:スペイン風邪から予測する社会の変化

アフターコロナ:スペイン風邪から予測する社会の変化

1. はじめにとうとう非常事態宣言が出され、いよいよコロナとの戦争が日本でも本格化してきたと実感するが、最近はいつコロナの問題が収まるかよりもコロナの後の世界はどうなるのかについて考えている。

たくさんの人々の屍を超え、残された人々が何を学びどのような世界を作るのかを考えるのは刺激的なものである。

今回はそんなアフターコロナを考えるうえで検索した結果出てきた2018年の論文で、1918-19年

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第二言語を使うと意思決定のバイアスがかからなくなる

1. はじめに母国語を話す場合と第二言語を話す場合とで、自分が違う自分じゃないかと思うことがあったりする。

とりわけ自分は日本語と英語を話すわけだが、英語を話しているときの方が直接的で感情的になる傾向がある一方、日本語を話しているときは直接的ではなく、間接的な表現を多用しているように思う。

今回は、人が母国語以外の言語を話すことによって意思決定のバイアスがなくなる、という話。論文は以下のもの。

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統計的有意にサヨナラ(その3)

1. はじめに前回、前々回とNatureの論文に関して述べるために、統計的有意とは何か、5%有意水準とは何なのかを説明してきた。

今回はいよいよ本題。統計的有意、という基準への批判について述べる。

論文は以下のもの。

Amrhein, V., Greenland, S., & McShane, B. (2019) Retire statistical significance, Nature

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統計的有意にサヨナラ(その2):5% の有意水準が意味するところ

統計的有意にサヨナラ(その2):5% の有意水準が意味するところ

1. はじめに前回は"Retire statistical significance (統計的有意にサヨナラ)" という Nature の論文を読んだことから、統計的有意とは何かについてまとめた。

今回は「5%有意」ということに関してである。統計学をかじれば「〇%有意」という言葉を聞いたことがあるはずだし、有意かどうかが結果を解釈するうえで重要になると教えられてきているはずだ。

自分も論文のR

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統計的有意にサヨナラ(その1):統計的有意とは

統計的有意にサヨナラ(その1):統計的有意とは

1. はじめに"Retire statistical significance (統計的有意にサヨナラ)" という Nature の論文を読んだ。分野の関係上 Nature はあまり読まないのだけれど、検索していて面白そうだったから目を通す。

3ページなのですぐに読めるし(社会科学系の論文は概ね20ページ前後が主流という感覚)、このくらいだと負担が少なくてよい。

論文の詳細は以下。

Amrh

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いつ女性やマイノリティの人がCEOに昇進するのか?

1. はじめに女性やマイノリティの人々にとって、ある組織のトップになるということは男性(特にアメリカの場合は白人男性)に比べて困難である。

その理由はバイアスによるのだが、今回の研究では女性やマイノリティの人々がCEOになるための条件を探求している。

論文は以下の通り。

Cook, A., & Glass, C. (2014) Above the glass ceiling: When ar

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リモートワークにおいて上司が部下のパフォーマンスを高めるには

リモートワークにおいて上司が部下のパフォーマンスを高めるには

1. はじめにコロナの影響で企業として勝ち企業となっているZoom。株価もうなぎのぼりである。

https://www.investors.com/research/stock-market-crash-zoom-stock-gains-should-you-buy/

日本企業やその他の組織体の多くもリモートワークを強いられているのではないだろうか。

そんな中、リモートワークで部下のパフォー

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天職と搾取

天職と搾取

1. はじめに英語で天職のことを "calling" という。神様から与えられた才能に基づいて人は労働をすべきであり、例えば教師という仕事は神様がその人に与えた召命であり、その証明に基づいて人は職務を全うすべきである、というのがこの根底にある。

これはいわゆるプロテスタンティズムにおける天職という考え方であり、マックスウェーバーが資本主義の成立に見出した概念の一つである。

もちろん、今では上記

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