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ワインやスピリッツな男女達

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発酵を知る女

発酵を知る女

「発酵を知る? なんのことかさっぱりわからない」

うん、そう。わからないの。わからないからいいの。

私は思う。
お酒の蘊蓄を語る前に、できうる限りの想像力で発酵の神秘に想いを馳せること。それがお酒を愉しむ上でのちょっとした礼儀なんじゃないかって。
「わかる」「わからない」じゃない。
「お酒に強い」「弱い」「飲めない」でもない。
少なくとも「お酒なんて酔いをもたらす単なる飲料でしょ?」なんて感想

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アイスワインの記憶

アイスワインの記憶

小さい頃、父の仕事の都合で転校ばかりしていた。
小学校だけで4校、中学校は2校。
海外に住んでた時期もあったが、その時でも別れは辛く、日本に戻っても新しい生活は、人間関係が全てであった子供にはなかなかキツかった。
いつもどこか旅人のように、物事を俯瞰して見てしまうのは、もしかしたらこの時の経験があるのかもしれない。ホームの感覚が弱いタイプだと自覚してるし、スナフキンが小さい頃から好きだった。

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Char

Char

チャー(Char)って知ってる?
ウイスキーを入れる樽というのは必ず内面を火で焦がすの
直火ですることをチャーといい(バーボン樽)、遠赤外線で熱するのをトーストという(ワイン樽)
必ず焦がすの

意外と知られてないのかもしれないけど、
あの美しい琥珀色はこの工程があるからこそであって、真新しい樽にいれたところで、それは熟成した焼酎であり、ウイスキーではない

樽に入れる前の原酒は「ニューポット」と

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ラム酒な女

ラム酒な女

シングルモルトウイスキーが神の寵愛を受けた酒だとしたら、
ラム酒は女神、厳密に言うと歌と踊りの女神、テルプシコラーに愛でられた酒だ。
私はこれに確たる根拠がある。

ラム酒。Rum, Rhum, Ronー。サトウキビを原料として作られた無色透明(多くが)の蒸留酒(スピリッツ)。キューバを初めとするカリブ海諸島で発展したが、植民地支配の影響がその酒造りに色濃く残る。スペイン領だったキューバはバーテン

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シェリー酒な女

シェリー酒な女

もし私がバーで一人、自分の世界に浸りたい夜があったら、

迷わず、シェリー酒を選ぶだろう。

これが、ど定番のカシスオレンジのようなカクテルだとか、生フルーツをいっぱい纏ったカクテルなら、羽毛より軽い不埒な男がたやすく声をかけてくるに違いない。お酒に向き合わず、時折スマホでも触ってみせれば、「声を掛けて」と言わんばかり。そこで声を掛けてくる男は、その一夜、隣でニッコリ微笑んでくれる女がいたらいいの

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ウォッカの要素を持った男

ウォッカの要素を持った男

〇〇な男というより、「ウォッカの要素を持った男」が正しい気がする。

シングルモルトな男にも、バーボンな男にも、焼酎な男にも、持ちうる要素。私を苛立たせ、中毒にさせる要素。具体的に言えば、「ウォッカの要素を持ったシングルモルトな男」がどうにも好きだ。

ウォッカは透明のスピリッツ。ジン、ウォッカ、テキーラ、ラムが世界の4大スピリッツと言われる。ジンとウォッカは無色透明で似ているが、ジンは薬草成分が

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メルローな女

メルローな女

「母性」を体現した品種。それがメルローだ。

メルローは赤ワインの品種。単一品種で作られることもあるが、カベルネ・ソーヴィニヨンとのブレンドが有名だ。ワインに精通していなくとも、フランスのボルドー地方の5大シャトー、「Ch.ペトリュス」「Ch.ムートン・ロスチャイルド」「Ch.オーブリオン」「Ch.ラトゥール」「Ch.マルゴー」はどこかで耳にしたことがあるだろう。

これらの銘醸地のワインを含め、

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セミヨンな女

セミヨンな女

赤ワインの品種であるメルロが陰の色気があるとしたら、セミヨンは陽の色気を持つ。
セミヨン。白ワインのぶどう品種。フランスのソーテルヌでは極上の甘口を持つ貴腐ワインを生み出し、銘醸地ボルドーの辛口白ワインと言ったら、セミヨン主体のソーヴィニヨン・ブランのブレンドだ。「ボルドー・ブラン」と呼ばれることは、ワインをかじったことがある人なら誰もが知っている。シャルドネと似ていて、オーク樽にも恍惚感を持って

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ヴィオニエな女

ヴィオニエな女

ヴィオニエほど、花の香りでいっぱいの品種を私は知らない。

ヴィオニエは白ワインの品種。リースリングが果実の酸味と果実の甘さを追求し、ソーヴィニヨン・ブランが草原を馬に乗って走り抜けた時に感じる、風の匂いを持つのに対して、圧倒的に「花」を持つ品種。世界中の比較的温暖な地域で育てられ、ユリ、フリージア、ジャスミンなど様々な花の香りを振りまく。それは熟成した女性の香水ではなく、お風呂上がりの若い女の子

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バーボンな男

バーボンな男

今夜はバーボンの恋の話をしよう。
バーボンウイスキー。主にアメリカのケンタッキー州で作られ、原料にトウモロコシを51%以上使わないと、その名を名乗ることはできない。
大麦麦芽(モルト)しか使ってはいけないモルトウイスキーとは異なり、トウモロコシのほんのりとした甘みと、ライ麦や小麦などのまろやかさで、多くの人に愛される味わい。

バーボンはやっぱりかっこいい。

メイカーズマークなんて、赤いロウで一

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ピノ・ノワールな女

ピノ・ノワールな女

これほど、不安定で妖艶な品種はないと思う。

ピノ・ノワール。赤ワインの品種。リースリングと同じく、基本的にブレンドされず、固有の土地、この区画、というテロワールあるいはミクロクリマ(微小気候)を体現する品種。代表産地はフランスのブルゴーニュ地方で、厳格なアペラシオンの元に等級がある。

ピノ・ノワールを飲むことは、「物語」や「詩」を読むことと似ている。
サクランボやスモモの果実のほか、マッシュル

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シングルモルトな男

シングルモルトな男

今夜はシングルモルトの話をしよう。
シングルモルトとは、単一の蒸留所で作られるモルト(大麦麦芽)のウイスキー。ワインのように、もともとブドウの種類によって、味わいが変わるのではなく、主に二条大麦という、味わいに大差のない穀物を発酵させ、その液体を各蒸留所のポットスチルという窯(トップ写真のように)で蒸溜させる。グレーンモーレンジのように、背のたかーい、ポットスチルだったり、マッカランのようにズング

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山廃仕込みの男

山廃仕込みの男

日本酒の山廃仕込みって知ってる?「山卸廃止酛仕込み」の略。読みながら、きっと眠くなっちゃう人もいるので、なるべく簡単に言うと、乳酸菌を一から育てる、「生酛造り」の1つ。「山卸」と言う筋肉ムキムキのいい男(職人)が、極寒の中で櫂ですりつぶす工程を「廃止」して、自然界の酵母の力で同じ深みをだすこと。

基本的にワイン好きと日本酒好きは、同じ醸造酒(発酵させるお酒)なのに、相容れない。ワイン好きはいつも

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ソーヴィニヨン・ブランな女

ソーヴィニヨン・ブランな女

いかなる形容詞も言葉が足りない。
ただ「ソーヴィニヨン・ブランは風だ」とは言っていい気がする。

ソーヴィニヨン・ブラン。白ワインの品種。銘醸地フランスのボルドーの赤ワイン品種、カベルネ・ソーヴィニヨンが鉄の女としたら、ソーヴィニヨン・ブランは爽やかな貴公子だ。
おっと。ソーヴィニヨン・ブランの話をする時、形容詞の扱いには慎重にならなければいけない。「爽やか」というと、なんだかそれはひどく薄っぺら

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