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#短編小説
小説?|ブルーハワイ・フロート
前置き
文学的な問題は一切孕んでいません。
本編
午後一時半の中心業務地区は酷暑と言っても差支えがないほどに大気が煮えていて、アスファルトの照り返しが私の脚をストッキング越しに刺す。何故こうも高層ビルばかり空を埋め尽くすように建っているのか――それは地価が高い以上そうせざるを得ないのだ、そんなことわかってるのに――ただ、これではまるでコンクリートの雑木林と形容せざるを得ない。植林地でもいい。
いつか還る場所にも咲いていてほしい花
会ってすぐ、左手の薬指を確認した。まだ結婚してなかった。ホッとした自分がいた。
「アプリコットサワーにします」
「あーやっぱりな。じゃあシークワーサーサワーにしよ」
それ迷ったやつだ。あーやっぱりな。
やっぱりいいなあ。
仕事で気になる人に会った。直接会うのは年末のクリスマスディナー以来だ。以前自分のインスタに何の気なしにあげていた好きなパティスリーのスイーツをお土産に買ってきてくれた。いま
短編小説『この手が届くのは』
「どうしよう……」
陽菜は途方に暮れていた。あろうことか何もない場所でこけたのである。幸い大した怪我はなかった。だが衝撃でかけていた眼鏡が吹っ飛び、タイミング悪く自転車にひかれてしまったのだ。
自転車に乗った人は「やっべ」と言いながらもそのまま通り過ぎていってしまった。確かにあんな予想もできないタイミングで眼鏡が転がってくれば「自分のせいじゃない」と思いたくなるだろう。だけど足を止めて謝るくら