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取材者の心絵(ココロエ)

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東洋経済オンラインやOCEANS、AlpenGroupMagazine、キングギア などの媒体に寄稿しているスポーツライター、瀬川泰祐が取材・執筆活動の中で、日々感じている取材か… もっと読む
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#執筆

ライター業界の現実

ライター業界の現実

ライターという職業。

これは、自分で選択した肩書きであり、自分で掴み取ったものだ。

だが、僕にとっては誇り高き職業であっても、一般的にライターの価値は著しく低い。これは、ライターとして活動してきたこの何年間かで痛感してきた事実だ。

ライターと解説者の共通点先日、サッカー解説者の戸田和幸さんとお会いして、深く話をしていくうちに、解説者という職業は、多くの点でライターと似通った性質があることがわ

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キッカケは突然に

キッカケは突然に

「モデルの女の子のトレーニング風景を取材するんだけど、瀬川さん、カメラお願いできますか?」

僕がはじめて、ある媒体の編集者から依頼を受けた時の言葉だ。

それまで僕がやってきたことは、その編集者には事前に伝えていた。おおよそ以下のような内容を伝えていたと思う。

・ヤフーで企画職に就いていた頃、ウェブマガジンを立ち上げて編集業務も行っていたこと
・プライベートワークとして、地元のローカル媒体を立

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自分の表現を渡すな。

自分の表現を渡すな。

スポーツ記事は、エンタメか報道か。

最近、このことを考える機会が多い。

エンターテインメントの世界では、例えば写真は、オフィシャル素材の利用しか許されないことも多いし、記事についても、マネージメントの許諾を取らずに情報を流通させることが非常に難しい世界だ。

つまり記事を公開する際には、必ず権利元の許可を通すのは暗黙の了解であり、ビジネス上の習慣として日々行われている。

これは権利ビジネスの

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秋冬物の商品を店に並べることの重要性

秋冬物の商品を店に並べることの重要性

ファッションショップでは、いま、秋冬物が店頭に並んでいる。

「瀬川さんの記事は、いまの時期に春夏物の商品を店に出そうとしているようなものだ」

これは、少し前に、ある編集者に言われた言葉だ。

たしかに僕の記事は、特定の人たちにしか届かない記事だという自覚はあった。フットサルをはじめとするマイナースポーツを題材にすることが多いのに、それが一部の人にしか届かないのだとすれば、僕は、専門メディアで書

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フェンシング界賞賛記事のウラ側

フェンシング界賞賛記事のウラ側

本日、東洋経済オンラインで、フェンシング協会会長の太田雄貴さんの改革への挑戦を書いた記事が公開された。

これは結果論でしかないのだが、多くの人に記事が届けることができた。社会に一石を投じるという、マスメディアに記事を書くことの役割を果たすことができたのは、僕にとって大きな成果だった。

では、なぜ僕の書いた記事は、ヤフートップに掲載されたのだろうか?

また、なぜ僕の書いた記事は、SNSでバズ

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マスメディアで書くということ

マスメディアで書くということ

「あぁ。瀬川さんも、その課題にぶつかりましたか」

僕が、このところずっと感じていたライターとしての課題を話したところ、編集者のAさんはこう言った。

なるほど、いま僕が持っている課題はマスメディアで書く多くの書き手がぶつかる課題なのかと、すぐに悟った。

僕は、せっかく書いた記事は、多くの方々に読んでもらいたいし、次にまた読んでもらうためにも、一人でも多くの人に認められたいと願う。

だけど、い

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ドリブルの入り口とフウガドールすみだの入り口

ドリブルの入り口とフウガドールすみだの入り口

フウガドールすみだというチームの育成コンセプトの一つに「EMOTION」というキーワードがある。

僕はこのコンセプトに惹かれて、息子をフウガドールすみだのスクールに通わせた。

小学校5年生の時に、埼玉のド田舎から、電車を乗り継ぎながら、1時間半近くかけて、週2回もフットサルスクールに通うのを横目で見て、我が子ながら、息子もよく通っているなと思っていた。

当時の息子の課題と、スクールの育成方針

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爪痕を残す

爪痕を残す

「めちゃくちゃいいピヴォだね」

僕の隣で観戦していたスポーツライターの仲間が、ある選手に視線を向けながら、こう言った。

その視線の先にいた選手の名は、岡村康平(31)。現在、フウガドール すみだに所属するフットサル選手だ。

岡村は、30歳の時に初めて日本代表合宿に呼ばれたが、それまでFリーグでの出場試合数も決して多くはなく、下積みがとても長い選手だった。

この日、僕は友人たちとFリーグの

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対談で大切なこと

対談で大切なこと

今をときめくドリブルデザイナーの岡部将和さんと、僕が共感してやまない諸江剣語選手の対談。

2人に気持ちよく話してもらうためにはどうしたら良いか?

対談の構造をどう作ろうか?

前日から、あれやこれやと、シナリオを頭の中に描いていた。まだまだ経験の浅い僕は、この時、対談のインタビュアーという役回りは、初めての経験だったためだ。

スムーズに話が流れるように、話の流れを頭の中にイメージしては、

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信じる

信じる

「よしっ、今日も自信をつけていこう!」

フットサル元日本代表の諸江剣語選手は、フィジカルトレーニングを始める前に、自分自身を奮い立たせるかのように、こう言った。

僕は、いつの間にか、「正解」が大好きになり、いつの間にか、「間違い」を悪と捉えるようになり、間違いを嫌う大人になった。今では、「正解」だけを信じ、「正解」を求め続けて生きている。

だが、アスリート達を見ていると、間違っていてもいいん

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需要を探せ

需要を探せ

先日、ドリブルデザイナー岡部将和さんのことを例に挙げて「言語化」することの重要性を書かせていただいた。

※詳しくは「言語化する力を養う」をご覧いただきたい。

しかもその記事を読んでくれた岡部さん本人がSNSでシェアしてくれたため、現在プチバズり中だ。

実は、その日の昼間に、noteのディレクターである水野圭輔さんから、「この記事、短いのがすごく良いと思います」と褒めてもらった直後のことだっ

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プロカメラマンから学ぶ表現者としての覚悟

プロカメラマンから学ぶ表現者としての覚悟

「俺がシャッターをきって、それを誰かが買ってくれる。俺の仕事は、そういうことだ」

あるアーティストのライブの現場で一緒になった、プロカメラマンの方が、開演前に僕に話してくれた言葉だ。

僕は過去に一度だけその方に、写真を撮ってもらったことがある。

MOMO CUPという百瀬俊介さん主催の大会に「キングギア フレンズ」の一員として参加した時に、大会のオフィシャルカメラマンとして参加していたその方

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「好き」が引き寄せるもの

「好き」が引き寄せるもの

「書くの楽しい?」

つい先日、僕にこんな質問をして来た男がいる。2年前、僕をスポーツライターの世界に引き込んだ友人のAさんだ。なんで急にこんなことを聞くのだろうと疑問に思っていたが、彼は、最近の僕にどんな変化が起きているかを見抜いていた。

憧れを行動に変えるAさんAさんはいつも僕に、明るい未来へのアドバイスをくれる。実は、僕にnoteで書くよう最初にアドバイスをくれたのもAさんだ。

Aさんは

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ガチのぶつかり合いで生まれる熱

ガチのぶつかり合いで生まれる熱

「今の文章では読者を置いてきぼりにしている。このままの文章ならむしろ他の媒体に出した方が良い」

ある原稿を入稿した時に、編集担当者が僕に言ってくれた言葉だ。

また、別の原稿では、

「いま〇〇が世間の話題になっているのに、そのことを書かない理由がわからない」

などと指摘されることもある。

執筆活動をしていると、時として、周りが見えなくなることがある。僕自身の「伝えたい」が先行しすぎてしまう

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