横松心平

作家。七児の父。いろんな意味でぎゅうぎゅうづめで暮らしてます。

横松心平

作家。七児の父。いろんな意味でぎゅうぎゅうづめで暮らしてます。

記事一覧

岡田索雲『ようきなやつら』双葉社、を2冊書いたかったお客様

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。  今月、書店では、「店に在庫している本についてのポップ」をお客様に書いてもらって並べるとい…

横松心平
10か月前
2

「ABC殺人事件」事件

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。  毎月、フェアを考えて実施しており、少し前に「こども」というテーマで選書をした。子どもに読…

横松心平
11か月前
7

棚分類の問題

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。  お客様と本当の出会いがうまくいくように、また、売り上げが上がるように、書店の棚分類を整理…

横松心平
11か月前
4

「本が読めなくなった」お客様の悩み

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。  来店されたお客様から、こんな相談を持ちかけられた。 「ずーっと本が好きで読んできたんですけ…

横松心平
1年前
4

遠ざかっていく「本の雑誌 2023年5月号」

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。  さて、「本の雑誌」の2023年5月は、目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼大特集ということで、特別…

横松心平
1年前
3

『お父さんは心配性【4】』が売れたのはなぜ

 今年になってから、S市の独立系書店で働いている。シフトとしては週に1回くらいなので、出勤すると、この1週間でどんな本が売れたのかを確認するのが楽しみだ。フェア台…

横松心平
1年前
6

書評・安田浩一・安田菜津紀『外国人差別の現場』朝日新書

世の中に社会問題は数多くあって、どうにかしなければいけないよなと思うけれども、たいていほとんど何もできない。日々の暮らしで精一杯で、ニュースを追うことすらままな…

横松心平
1年前

札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その3 雨の日には「札幌市豊平川さけ科学館」

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介する3回目です。 第3回目は、雨が降っていたので「札幌市豊平川さけ科学館」で…

横松心平
1年前
2

義母がコロナワクチンを1回も受けていなかった

遠方に住む義母がコロナワクチンを1回も受けていないことがわかった。初めは、何かの主義なりがあって、あえて受けないようにしているのかとも思ったが、そうではなかった…

横松心平
1年前
2

札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その2 2019年にリニューアルした「月寒公園」

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介する2回目です。 前回、百合が原公園前編でしたが、後編の前に別の公園に行っち…

横松心平
1年前
2

札幌子育てライターが行く!おすすめ公園編その1 車がなくても大丈夫「百合が原公園」前編

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介していきたいと思います。 第1回目は、百合が原公園です。 車をもっていないわ…

横松心平
1年前
7

書評・タリアイ・ヴェーソス『氷の城』朝田千惠、アンネ・ランデ・ペータス訳、国書刊行会

 一読後、決して忘れることのできない物語だ。平易な言葉で綴られるシンプルなストーリーであり、格別の寓意性が感じられるわけでもない。それなのに、心の奥底に響いてく…

横松心平
1年前

天売島へ行きたかった

 先日、天売島で開催されるイベントに参加すべく、羽幌に向かった。札幌から高速バスで3時間。乗車時に「島へ行きますか?」と聞かれた。「島」というのは天売島と焼尻島…

横松心平
1年前
2

書評・アーザル・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』市川恵里訳、河出文庫

 はじめはタイトルに惹かれた。テヘランとロリータの組み合わせが不思議で面白い感じがしたのだ。しかし、実際に読んでみると、このタイトルは奇をてらったものではなく、…

横松心平
1年前
1

書評・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』村上春樹訳、中央公論新社

『テヘランでロリータを読む』に深い感銘を受け、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』村上春樹訳、中央公論新社を読んだ。ラストが素晴らしかった。余…

横松心平
1年前
1

書評・嫌なやつばかり登場する面白い話。サマセット・モーム『人間の絆』新潮文庫

100年以上前に書かれた名作の金原瑞人による新訳なんですが、実に面白い! モームって「世界文学」という冠から想像していると、ただただ面白い話で、「あれっ。文学って…

横松心平
2年前
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岡田索雲『ようきなやつら』双葉社、を2冊書いたかったお客様

岡田索雲『ようきなやつら』双葉社、を2冊書いたかったお客様

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。

 今月、書店では、「店に在庫している本についてのポップ」をお客様に書いてもらって並べるというフェアを行っている。
 あるお客様にこう言われた。
「店にないマンガのポップを書きたいのですが、2冊購入して、1冊は自分用にして1冊は店に置いてもらえませんか?」
「?」
 1冊は自分用にして、というところはわかる。自分の買った本を、店

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「ABC殺人事件」事件

「ABC殺人事件」事件

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。

 毎月、フェアを考えて実施しており、少し前に「こども」というテーマで選書をした。子どもに読んでもらいたいという本ということで、「ハヤカワ・ジュニア・ブックス」のクリスティーを選んだ。
 『そして誰もいなくなった』が売れたのだが、その後、うちの子ども用にも購入した。小中学生が読み、『アクロイド殺し』も買ってみたら、続けて読んでい

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棚分類の問題

棚分類の問題

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。

 お客様と本当の出会いがうまくいくように、また、売り上げが上がるように、書店の棚分類を整理することになった。
 やってみるとよくわかるのだが、分類しやすい本としにくい本がある。例えば、『トムは真夜中の庭で』ならば「絵本・児童文学」へ、『第二の性』は「ジェンダー」へ、『ふしぎの国のバード』なら「マンガ」の棚に置く。ちなみに全部在

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「本が読めなくなった」お客様の悩み

「本が読めなくなった」お客様の悩み

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。

 来店されたお客様から、こんな相談を持ちかけられた。
「ずーっと本が好きで読んできたんですけど、最近、本が思うように読めなくなってしまったんです。そんな人のこと、聞いたことありませんか?」
「あります」
 ぼくは即答した。
「えっ。あるんですか?」
「あります。実は私なんです」
 そうなのだ。本当にそういう経験を数年前にしたの

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遠ざかっていく「本の雑誌 2023年5月号」

遠ざかっていく「本の雑誌 2023年5月号」

 S市の独立系書店で働いており、書店員目線で本のことを綴っています。

 さて、「本の雑誌」の2023年5月は、目黒考二・北上次郎・藤代三郎追悼大特集ということで、特別に分厚いということは事前に聞いていた。しばらく本の雑誌も買っていなかったよなあと思いつつ、書店にも仕入れていないし、読みたいなあ、でも予算がなあ、どうしたものかなあと思案していた。
 そんなおり、店のカウンターで、選書のために、本の

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『お父さんは心配性【4】』が売れたのはなぜ

『お父さんは心配性【4】』が売れたのはなぜ

 今年になってから、S市の独立系書店で働いている。シフトとしては週に1回くらいなので、出勤すると、この1週間でどんな本が売れたのかを確認するのが楽しみだ。フェア台に並べたもの、ポップをつけたもの、とっておきの新刊など、気にしている本が売れたときは特に嬉しい。
 先日、発注して入荷したばかりの漫画が売れた。岡田あーみん『お父さんは心配性【4】』集英社、である。全6巻あるうちの、なぜか4巻だけがすぐに

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書評・安田浩一・安田菜津紀『外国人差別の現場』朝日新書

世の中に社会問題は数多くあって、どうにかしなければいけないよなと思うけれども、たいていほとんど何もできない。日々の暮らしで精一杯で、ニュースを追うことすらままならない。だからと言って、あきらめるわけにもいかない。よその国の戦争、他人の人権侵害、遠い地域の環境汚染であっても、人道的に許せないというだけではなく、必ず、自分や家族と繋がっているのだ。
 そんなとき、無力感にさいなまれてしまうのは、全か無

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札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その3 雨の日には「札幌市豊平川さけ科学館」

札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その3 雨の日には「札幌市豊平川さけ科学館」

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介する3回目です。

第3回目は、雨が降っていたので「札幌市豊平川さけ科学館」です。

今日は2022年10月10日の月曜日。祝日です。今日もまた、ドニチカきっぷを利用して地下鉄で行きました。大人520円、子ども260円です。

地下鉄南北線で終点の「真駒内駅」へ。ここからバスに乗ると、ひょいと着くのですが、節約し

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義母がコロナワクチンを1回も受けていなかった

義母がコロナワクチンを1回も受けていなかった

遠方に住む義母がコロナワクチンを1回も受けていないことがわかった。初めは、何かの主義なりがあって、あえて受けないようにしているのかとも思ったが、そうではなかった。
 どうも、接種券を失くしてしまったことが直接のきっかけだったようだ。調べてみると、役場に連絡すれば再発行できることがわかったので、すぐにその手配をした。

だが、原因はおそらくそれだけではなく、根本的には、ワクチンを受けに行くことが現実

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札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その2 2019年にリニューアルした「月寒公園」

札幌お父さんライターが行く!おすすめ公園編その2 2019年にリニューアルした「月寒公園」

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介する2回目です。

前回、百合が原公園前編でしたが、後編の前に別の公園に行っちゃいました。

第2回目は、月寒公園です。
今日は2022年9月25日の日曜日。ドニチカきっぷを利用して地下鉄で行きました。大人520円、子ども260円です。

地下鉄東豊線「美園駅」から出ると、中央分離帯にはリンゴの実がなっていました

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札幌子育てライターが行く!おすすめ公園編その1 車がなくても大丈夫「百合が原公園」前編

札幌子育てライターが行く!おすすめ公園編その1 車がなくても大丈夫「百合が原公園」前編

札幌で7人のこどもを育てているライターの横松心平です。子どもと行くおすすめの公園を紹介していきたいと思います。
第1回目は、百合が原公園です。

車をもっていないわが家では、なるべくアクセスしやすいことがお出かけの第一条件です。しかも、できれば列車がいいと言う子どもたち。

そこで、札幌駅からJR学園都市線で20分、340円の「百合が原駅」から歩いて行ける、百合が原公園に行きました。今回は、小学生

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書評・タリアイ・ヴェーソス『氷の城』朝田千惠、アンネ・ランデ・ペータス訳、国書刊行会

書評・タリアイ・ヴェーソス『氷の城』朝田千惠、アンネ・ランデ・ペータス訳、国書刊行会

 一読後、決して忘れることのできない物語だ。平易な言葉で綴られるシンプルなストーリーであり、格別の寓意性が感じられるわけでもない。それなのに、心の奥底に響いてくる冷気が全編に通底しているのだ。
 「20世紀を代表するノルウェーの大作家」と紹介されているタリアイ・ヴェーソスのことを、ぼくはちっとも知らなかった。恥ずかしながら、名前を聞いたこともなかったくらいだ。だからこそ余計に、作品の力強さに衝撃を

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天売島へ行きたかった

天売島へ行きたかった

 先日、天売島で開催されるイベントに参加すべく、羽幌に向かった。札幌から高速バスで3時間。乗車時に「島へ行きますか?」と聞かれた。「島」というのは天売島と焼尻島のことを差しているのだろうけど、札幌のバスターミナルで「島」としか言われないのが面白い。
「はい」と答えると、「高速フェリーは欠航が決まっています。普通のフェリーは天候調査中で、出航1時間前にならないと出るかはわからない」という。「それでも

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書評・アーザル・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』市川恵里訳、河出文庫

 はじめはタイトルに惹かれた。テヘランとロリータの組み合わせが不思議で面白い感じがしたのだ。しかし、実際に読んでみると、このタイトルは奇をてらったものではなく、本書の内容を的確に表現した、動かしようのないものだった。
 イラン出身の女性英文学者である著者は、圧政下に自宅で、密かに西洋文学の読書会を開く。学生たちとの日々を綴ったノンフィクションだ。1995〜1997年の当時、イランでは西洋文学が禁じ

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書評・スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』村上春樹訳、中央公論新社

『テヘランでロリータを読む』に深い感銘を受け、スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャッツビー』村上春樹訳、中央公論新社を読んだ。ラストが素晴らしかった。余韻が次の日になっても残っている。こうして日本にも、そしてイランにも、名作の力は伝わっているのだなあと思った。

切ない青春文学だと思うのだが、若い頃よりも今読んだ方がジーンときたような気がする。それは多分、「喪失」ということについての経験値

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書評・嫌なやつばかり登場する面白い話。サマセット・モーム『人間の絆』新潮文庫

100年以上前に書かれた名作の金原瑞人による新訳なんですが、実に面白い!

モームって「世界文学」という冠から想像していると、ただただ面白い話で、「あれっ。文学ってこんなに面白いの?」って思わされます。

自伝的小説であり、主人公がめちゃめちゃ嫌なやつ。ってことは、モームも嫌なやつなのでしょう。そして、悪い女の人と知り合うのだけれども、その女性もまた、かなり嫌なやつなんですね。

嫌なやつばかり出

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