シュシュ

ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投…

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ミステリを中心に読書の記録や感想など投稿します。たまにミステリ風味のオリジナル小説も投稿します。2024年1月から開始。

マガジン

  • 主に読書の記録

    読書の記録や感想をまとめています。本格ミステリが多いと思います。

  • 雑記

    あれこれ思ったことを記します。

  • 大阪彩ふ文芸部

    • 25本

    書くのは、楽しい。 あなたも何か書いてみませんか? 2024年1月より、彩ふ読書会は文芸部活動を行います。 大阪会場の読書会に過去一回以上参加経験のある方でしたらどなたでも部員になれます。入部・退部は自由です。 入部お待ちしております!

  • 小説_聖徳をまとう

    ミステリー風味のオリジナル連載小説です。 タイトル/ 聖徳をまとう あらすじ/ 出来心から娼婦ユミの跡をつけた私だったが、不注意がきっかけでそのストーカーじみた行為はユミ本人に知られるところとなる。ユミは自殺するが、やがて彼女と私の同窓生・美月とが同一人物であることを示す情報を得て、私は困惑する。何故なら美月は一年以上前に事故死していたから。ユミは「身バレ」を苦に自殺したのか。先に事故死していた美月との関係は。そして、聖徳太子伝説の眠る地で新たな殺人が。見え隠れする「歯」にまつわる縁起。聖徳太子の歯は何故盗まれたのか。

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燃える氷華(斎堂琴湖)を読みました。 新刊です。 日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品です。 帯には選者のひとりである辻村深月さんがコメントを寄せています。 日本…

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 を読みました。

 20年以上ぶりの再読です。以前読んでいたのは作者のファンムックに収録されていた初稿バージョンでした。一冊にまとまった完全版(単行本)はそう言えば読んでいなかったと思いたち、読み直したという次第です。

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を読みました。新刊です。

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 米澤穂信さんは、2022年の「黒牢城」で直木三十五賞と本格ミステリ大賞をダブル受賞しています。一般読者の認知も十全な人気ぶりでありつつ、私のようなミステリ好きにとっても目が離せない名実兼ね備えた作家さんです。

 ハイクオリティな作品を量産するイメージですが、

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 さよならドビュッシー(中山七里)
 を読みました。2011年の作。

 中山七里さんのデビュー作です。中山七里さんの作品はいくつか読んでいますが、本作に関しては、
・氏のデビュー作であるということ
 それと、
・岬洋介という人物がいわゆる探偵役であるシリーズの第一作
 ということだけを予備知識に私は読み始めました。

 とても面白くて一気読みでした。先が気になって仕方がない。そんな読書体験でした

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異世界との繋がりかた〜ある短編映画プロジェクトの話

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 2024年ゴールデンウィークの前半戦、私は京都に行ってきました。目的は観光――ではなく、とある映画の上映会に参加することでした。

 さかのぼること昨年の夏。ひょんなことがきっかけで私はひとつのクラウドファンディングを支援することを決めました。

 それは、風来漢あきさん(以下、あきさん)という映像作家による短編映画の自主制作プロジェクトでした。

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読書感想文ってなんだっけ

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2024年の年頭からこのnoteを始めてもうすぐ5月です。時が経つのは早いです。

もっぱら私の投稿は、
・読書感想文
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・雑記
で構成されているのですが、最も本数が多いのは読書感想文です。

なのですが、読書感想文を投稿するたび、時折頭を抱えることがあって、「一度落ち着いて言語化してみよう」と思いつつも先送りしていたテーマがまさにこの投稿のタイトル「読書感想文ってなんだっけ」です

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戻り川心中(レビュー/読書感想文)

戻り川心中(レビュー/読書感想文)

戻り川心中(連城三紀彦)
を読みました。
1979年の作。ミステリ好きであれば押さえておくべき超有名作なのですが、実は未読だったのです。

レビューでは新刊読書に紛れて、時々、「読んでいなかった超有名作を今更だけど読んでみた」みたいなものも混じってきますが「今更かよ!」と言わずにお付き合いください。

花にまつわる短編集と紹介にあります。読み通してみると、植物の花はもちろんですが、他にも色街・娼妓

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聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

聖徳をまとう_四/いもこさん(2)

  ◇

 小野妹子は聖徳太子と同じ飛鳥時代を生きた官人である。推古天皇の時代、大使に選ばれ、当時、中国大陸にあった大国「隋」に派遣された人物として後世に知られる。また、妹子は華道家元である池坊の元祖としても仰がれている。妹子が聖徳太子の守り本尊の如意輪観音の守護を託され、坊を建て、朝夕に仏前に花を供えたのが流派の起こりになったとされている。

 その小野妹子の墓と古くから伝わる小さな塚がある。大

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月の珊瑚(レビュー/読書感想文)

月の珊瑚(レビュー/読書感想文)

月の珊瑚(奈須きのこ)
を読みました。2011年の作。

声優・坂本真綾さんの朗読CD付きのパッケージですが、この感想文では奈須きのこさんの小説についてのみ書くことにします。

さて。
日頃、本をよく読む皆さんの中には、きっと「私は、この作家さんの書く文章が好き」という意見を持っている人も少なくないと思います。

その点、私は、奈須きのこさんの書く「文章」が好きなのです。「物語」が好きというのとも

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切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)

切断島の殺戮理論(レビュー/読書感想文)

切断島の殺戮理論(森晶麿)
を読みました。新刊です。

黒猫シリーズの作者という認識はありましたが、実際に森さんの作品を読むのは初めてです。

ケレン味の効いた一人称の文章が心地よく、読み進めること自体が楽しかったです。少し種類は違いますが西尾維新さんの文体を連想しました。

さて、内容ですがネタバレせずに感想をまとめるのが非常に難しい作品です。孤島を舞台にしたコード型の本格ミステリかと思いきや、

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聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

聖徳をまとう_四/いもこさん(1)

  ◇

 音の無い漆黒の世界。海の底で深海魚を見上げる夢を見た。身をくねらせて泳ぐうつぼのような生物の腹をじっと見ている。私の目には僅かな光源を増幅させる反射板が入っているのだろう。

 文字どおり、三日三晩はアパートで何もせず横になって過ごした。たまの水分補給を除けば、ろくに食さず、一言も発さず、入眠と覚醒をただ繰り返すだけ。日ごと、すえた匂いが部屋中に充満していく。

 人間の生命力あるいは

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永劫館超連続殺人事件〜魔女はXと死ぬことにした(レビュー/読書感想文)

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を読みました。
新刊です。初読みの作家さん。

中世ヨーロッパ風の世界を舞台にしたミステリーなのですが、ひとつ強烈な特殊設定が持ち込まれることで異彩を放ちます。

「死に戻り」という魔女の能力です。魔女は絶命すると24時間前の世界に記憶を引き継いで戻ります。更にこの能力は「道連れ」効果が備わっており、魔女が絶命する前、最後に両目で見つめ合っ

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涜神館殺人事件(レビュー/読書感想文)

涜神館殺人事件(レビュー/読書感想文)

涜神館殺人事件(手代木正太郎)
を読みました。
2023年刊。初読みの作家さん。
昨年の刊行時、気になりつつも読み逃していた作品です。

物々しいタイトルです。表紙もおどろおどろしく、タイトルとカバーデザインだけで本格ファンの掴みはOKですね。

本作は、流行りの特殊設定ミステリーです。

個人的には特殊設定ミステリーはやや胸焼け気味であまり得意ではないのです。が、そもそも本格ミステリー自体が様々

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聖徳をまとう_三/地を這う(2)

聖徳をまとう_三/地を這う(2)

  ◇

 交わした約束はまもなく果たされた。

 カウンセリングの二日後、私は再び空に近い場所にいる。八城に示された会食の席はあべのハルカス上層階に位置するシティホテル内のレストランだった。

 地を這う気分の人間には不釣り合いな場所である。

 まったく場違いな――

 ウェイターに導かれ席に案内されるまでのあいだ、独りごちた。

 夜景の見える窓際のテーブルには三人の先客――八城と老夫婦の姿

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逃避夢(レビュー/読書感想文)

逃避夢(レビュー/読書感想文)

逃避夢(藤谷文子)を読みました。
2001年の作。藤谷文子さんは女優としてのイメージが強いかも知れませんが文筆業もされています。現在は米国在住とのこと。

私は映画「式日」は発表当時に観ていましたが、ふとその原作とされる本作のことが気になり今回初めて読んでみました。ちなみに、映画の内容は以下です。

映画を観たのはもう随分前なので細部は覚えていませんが、「明日は私の誕生日なの」という言葉を毎日繰り

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聖徳をまとう_三/地を這う(1)

聖徳をまとう_三/地を這う(1)

  ◇

 四肢の関節の痛みに耐えかねて目が覚めた。頭上から差し込む薄明かりが二日酔いの脳髄を刺激する。仰向けのまま、あたりに視線を巡らせた。ハスラーの車内だ。エンジンはかかっていない。私は後部座席のシートに手足を曲げた窮屈な姿勢で横になっていた。

 頭を起こして窓外をうかがうと、ジビエ料理店の外観が見えた。瓦屋根の上には白々とした朝ぼらけの空。どうやら昨夕に停めたコインパーキングから動いていな

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燃える氷華(レビュー/読書感想文)

燃える氷華(レビュー/読書感想文)

燃える氷華(斎堂琴湖)を読みました。
新刊です。

日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品です。
帯には選者のひとりである辻村深月さんがコメントを寄せています。

日本ミステリー文学大賞新人賞は、メフィスト賞や鮎川哲也賞などと比べて基本的に本格テイストはそれほど強くない賞という認識ですが、あらすじを読んで気になった作品は読んでいます。
一昨年の、
・クラウドの城(大谷睦) や
四年前受賞作の、
・暗

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