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【生きる LIVING】感想文
黒澤明監督の「生きる」のリメイク作品。
本家を鑑賞したことがないので、純粋にこの作品の感想を書きます。
【静的描写が雄弁な映画】 本当にこういう映画好き。
多くは語らない、ストーリーの余白もあんまりちゃんと説明されない、大きな事件も起こらない。丁寧にくどいほど描かれる日常の様子が、静的な主題のストーリーを自然に引き立たせる。
誰も声を荒げないし、わかりやすい自己主張はしない。それでも
映画『BABYLON バビロン』感想文
「バビロン」を観た感想 多分だけど、映画好きにこそ刺さる。
公開初日に映画館に観に行って、衝撃的だったし感銘を受けたけど、もし、私がもっと映画を好きだったら、映画の歴史に詳しかったら、さらに自分の心を動かす作品になったんじゃないかなと思った。
ハリウッドの輝かしい歴史、サイレントからトーキーへの転換期を舞台とした作品で、何よりもデイミアン・チャゼル監督自身の映画への愛を強く感じた。
「ラ・ラ
『モモ』ミヒャエル・エンデ (読書感想文)
めちゃくちゃ良かった。
現代を痛烈に風刺するこの物語が、懐古主義の随筆でも、説明口調の論文でも、嫌みたらしいエッセイでもなく、柔らかい雰囲気のファンタジーであるところが、何よりも好きだと思った。
だからこの本を読んで感じたことを、効率的良く論理的に説明しようとするのは、何となく無粋な感じがする。
遥か昔から、人々は物語が好きだった。演劇の世界に没入し、もう一つの人生を体験することを愛していた。
『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎 (読書感想文)
2005年『このミステリーがすごい!』大賞2位の、鮮やかで切れ味鋭いミステリー作品。
練られたストーリーと伏線回収は、本当に見事。
伊坂幸太郎の、愉快なリズムを持つような、小気味よい文章が好きだなと思う。
決して楽しい話ではないのに、読後感はどことなく爽快で清々しい。
書き出しの1文はこうだ。
「腹を空かせて果物屋を襲う芸術家なら、まだ格好がつくだろうが、僕はモデル
『あしたはうんと、遠くへいこう』角田光代 (読書感想文)
一風変わった恋愛小説。
ある一人の女の子の15年間の恋愛遍歴を追った作品。
解説で穂村さんも書いているけど、人生の全てをかけて振り回されるその恋の模様は、さながら激しい戦争のようで、しかも見事に全戦全敗。
恋心にぶら下がるようにして生きて、やれドラッグだ浮気だストーカーだと、どうしようもない失敗ばかり。
恋が終わるたびに今度こそと誓うのに、何度でも同じことを繰