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[山岳小説] カンチェンジュンガに降る雪2
2
外務大臣梅原龍三郎は、執務室にいた。
「深沢君、深沢君!」
政務次官の深沢和彦が急いで入ってきた。
「例の件は進んでいるか」
少し、イラついた声で梅原が尋ねた。
「はい、今、近藤君が動いています」
深沢は急いで答えた。
梅原は深沢の答えが終わらねうちに、秘書の山下に声を投げる。
「電光の青葉くんはまだか」
「はい、あと10分くらいで到着の予定です」
「よし、来たらすぐ始めよう」
梅原はすっ
[連載ラブコメ小説] こいのうた5 コロナの中の二人
登場人物
堀口雄太
水口はるか
早乙女さくら
1
それは突然やってきた。中国で発生した新型コロナ・ウイルスである。コロナの猛威はあっという間に世界中に蔓延し、企業や教育機関等を閉鎖に追い込んだ。何よりも大変なのは飲食店や、舞台関係の団体であった。行政と医療は、人が集まるところに感染ありと判断し、人と人との接触を極端に制限した。飲食店は休店を余儀なくされ、舞台やライブ、コンサートは次々に
[時代小説]天治の剣
一
「若僧!きさま、俺をみて笑ったな!」
夜の闇に怒声が轟いた。
慶長4年11月、江戸の場末の酒場も閉まりかける、四ツ頃(午後十時ごろ)である。
一人の侍を三人の浪人が取り囲んだ。
「まことに、まことに。不愉快なことでござる」
浪人たちは酒に酔っている風である。
「笑った覚えはござらん。先を急ぎます故、ご免」
侍は軽く会釈して通り過ぎようとした。
「待てぃ!愚弄されたままでこのまま通すわけには
そしてワルツはつづく
小職が前に手掛けたミュージカルのテーマ曲です。作曲者はなんと名優アンソニー・ホプキンス氏。