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出戻り小学生

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根っからの学校嫌いが大人になって、まさかの学校で働くことに…。 現場における謎と不思議、笑いと感動に溢れた日々の記録。 今でも、戻れるのなら戻りたい…。
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記事一覧

学校図書館司書という仕事

 初めて赴任した時、何に何処から手を付けて良いのかわからなかった。何せ初めての職業。一人職なので指南してくれる人がいない。勤務開始前に引継ぎと称して二度呼び出しを受け、一校では校長から数時間に渡って図書に関する要望を延々と聞かされ、もう一校では授業の流れと機械の基本操作について実地演習を受けた。図書に関する熱意の凄まじい校長に脅威を覚え、始まる前から不安になった一方、授業に参加した2年生のクラスは

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人と場所と… ②

 私の読み聞かせの声が好きだと言ってくれた子がいた。
 読み聞かせの仕方が面白いとか、上手いとか、こんなに早口で咬み咬みなのに褒めてくれる子や先生は、今までも何人かいて恐縮しきりだったが、子どもから「声が好き」だと言われたのは初めてだった。前職のママさんを思い出したのはそんなきっかけからだ。
 話し方や癖のせいで、声はコンプレックスでしかなかった。録音した自分の声に幻滅し、母に「録音した声と自分が

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人と場所と… ①

 前職で、0歳の赤ちゃんを育てているシングルマザーの女性に、甚く気に入られた。
「先生の声が好きやねん。その鼻声…❤落ち着くわ~」
 声が好きだと言われたのは初めてだったし、まして鼻声とは…。確かに酷い花粉症で、年間半年は鼻詰まりを起こしている万年アレルギー性鼻炎。酷い時はマスクが無いと息も出来ない身の上だ。
 早口でずけずけものを言うので、身内にはキツイと常に否定されているし、滑舌が悪いのが悩み

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2年生が熱い! ②

 また別の日、別のクラス。図書係の女子二人が良いコンビ。
 片や生真面目なクールビューティー。あまり感情表現しないので、大人しいのかと思っていたが、見た目とは裏腹にちょっと抜けている。誤字脱字も多い。しかし今年図書係になって、眠っていた才能を発揮しだした。言うことがいちいち凄い。前に立って、他の児童の良くないところを容赦なく正す。しかも、誰かの受け売りではなく、自分の言葉で。ピシャリと音がするよう

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2年生が熱い! ①

 年の周りというものが少なからずあって、また、相性というものも勿論あって、学年が変わっても、メンバーのカラーというものは変わらずに一進一退を繰り返し、やがて成長を遂げて行く。
 毎年、成長を感じるのは4年生くらいだが、今年の彼らは3年生でピークを迎え、4年生になった途端、終息してしまった。とても残念。
 今年は2年生が熱い。彼らが1年生だったときも熱かったが、担任が変わり、クラス替えを経たことで、

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素敵体験、ら・ら・ら

 現在専任している大規模校は、クラス数が多いせいか、高学年に図書の時間が設定されていない。依って、余程のことがない限り、授業で学校図書館を使ってもらう機会がないのだが、この11月は、6年生のあるクラスが2度も、授業を希望してくれた。
 11月は読書月間で、準備やイベントで年間一・二を争うほど忙しい。空き時間が減るのは痛手とも言えるが、学校図書館は使ってもらってなんぼ。そもそも、読書月間であることを

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小学生の婚約発表

 滅多に来ないやんちゃくれの6年男子が、最近よくやって来る。こういうことは毎年あって、卒業が近付くと、何となく増えていく気がしている。
 しかし未だ卒業には早い。何となく来たい気分になったのだろうか…。
 よくわからないが、それほど読書家キャラでもないのに、一応毎回、律義に一冊は本を借り換えして行く。義務というか、癖というか、そんな感じで、どうしても本が読みたくて!とか、本を必要として…とかいう雰

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頑固の裏側

 興味深い道徳の本を他校の司書さんから紹介してもらい、何かに使えないかと考え、11月の読書月間で、二週に渡って特別授業に用いた。一週目に本の半分を読み聞かせし、内容を簡略化したワークシートに其々が自分なりの回答を書き込むことで、個々の道徳観を引き出す。ワークシートは回収し、集約したものは匿名で、担任へ情報提供。翌週、本の残り半分の中から、子どもたちが気になった質問に対し、著名人の回答を紹介する…と

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女子と女の境目

 ひっさしぶりにやって来た6年女子。歯科矯正器具を付けた口を尖らせ、「ちょー、きぃてぇーやー」とぶつぶつ言い出した。唇の荒れが気になる。
そこから愚痴、愚痴、愚痴。誰のかというと、先生の…だ。で思いっきり先生を敬称略で呼び捨てにする。舌を巻く。こんな子じゃなかったのに…大分お怒りの様子だ。
 内容は大して怒るようなことでもなかった。彼女自身、己の非も認めていた。しかし素直に謝るのも納得いかないらし

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ある暑い夏の日

 図書室で一人、仕事をしていると、廊下から色んな声が聞こえてくる。
 先生同士の会話、子ども同士の会話、時に何故か歌声。そしてたまには絶叫も…。
 知らない大人の話し声。誰かが出張してきたのだろう。自分に関係のない予定まで把握していないので、今日はSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)の日なのだな…と思う。一人、すごく声の通る先生がいるのだ。
 声は聴いたことがあるけれど、姿は見たことがない。

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褒め上手な小学生

 大人になるまで、人に褒められる…ということが殆ど無かった。
 親には勿論、先生など目上の人、友達などを含め…。
 子どもの頃に褒められた記憶がまるでないわけではないが、僅かなそれさえ、子どもの私にはピンとくるものでは無かった。そもそも褒められているのか貶されているのか、冗談で言われているのか、よくわからないものばかり。
「癖毛が可愛いね」(ぼさぼさなだけやん、どこがやねん)
「歌うまいね」(音楽

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不明本発見!

 初めての蔵書点検で不明本の多さに脅威した。数千冊を超えたのがそもそも異常。踏ん張って、最終的に30冊強まで減ったが、どの程度が普通なのかわからないので、他所の司書さんに状況を伺ったところ、多くても両手で足りる程度、小規模校なら片手で余るくらい、中には0という優秀な学校もあって、少々落ち込んだ。やはりうちは異常だ。
 勤めて丸4年。専任になって2年目。週5日、毎日司書が図書室に居るというのに、今年

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げっそり事件

 例年、図書室の掃除は4年生がしてくれている。教室が一番近いクラスの担当場所になっているのだが、一度、年間の掃除担当表に図書室の記載がなく、教務に確認したら完全に抜け落ちていたことが判明した。
 その年は6年生が例年より一クラス多かったので、新たに配置してもらい、一年間だけ6年生が担当してくれたことがあったが、教室が遠いばかりか、6年生ともなると各種行事やその他の課題、色々な準備などでかなり忙しい

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読書ノートに…

 読書ノートが面白い。
 個々の国語力が大きく表れるだけでなく、記録の付け方で性格まで丸わかり。感受性が浮き彫りになり、その人となりを知ることが、レファレンスだけでなく、日常のコミュニケーションにも役立つ。
【図書】とは国語科に属する一単元ではあるが、授業を受け持つのは教師ではなく、司書。児童に教育を施す時点で、教師でなくても教員ではあるらしいのだが、私自身、「先生」という呼び方をされる職業に就い

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