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今日も今日とて

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平凡で、理不尽で、残酷で。だけど、本当はやさしい。そんな世界のお話。
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こんな日も。

こんな日も。

薄暗い街。

特に何があったわけでもないけど
鈍く広がる雲に心が沈む。

スマホの画面の向こうには
自分にないものばかり持つ人たち。
眩しくなって目を逸らす。

電源をオフにしたって
結局この部屋にはないものばかりだ。

上手くいかないことばかり
考えてしまう日。

決して楽しくはないけど
こんな日も悪くはない。

快晴でも
雨降りでもない

そんな今日はなんだか
少し憂うつな気分になる。

ぬる

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my beautiful world

my beautiful world

「物語」のような世界を生きたい。

それは幼い頃に思い描いていた世界のように、空想いっぱいのファンタジーの世界ではなくて、私はただ「美しい」世界を生きていたい。生きていたいというより、世界を美しく、できる人でありたい。

***

なんてことない日常を、当たり前の日々を
美しい世界へと
変えてしまうことのできる人でありたい。

混濁として、
嫉妬や絶望で溢れるこの世界を
美しいと、感じられる人であ

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「誰かのため」に生きることは不幸と幸せ

「誰かのため」に生きることは不幸と幸せ

「理想の自分」「なりたい自分」について最近、よく考える。

昔から「どんな人になりたい」とか「憧れの人」だとか、そういうのが苦手だった。できるだけ早く子供を産んで、お金持ちと結婚して・・・そんな風にキラキラした目で楽しそうに夢を語る同級生たちを、私はいつも不思議な目で見ていた。将来のことなんて、正直あまり真剣に考えていなかったし、ただ親が喜ぶからって理由で、有名大学を目指したりしてた。なりたい職業

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ぼやけた物語の主人公。

きれいな洋服を着て、
大きなお城のような家に住んで
王子様のような旦那様がいる。

小さい頃は、そんな物語を思い描いていた。

少し大人になってからは、

スポットライトを浴びながら
バリバリ仕事をして
有名になって、たくさんお金を稼ぐ。

そんな物語を思い描いた。

そうやって、何度も思い描いたいくつもの素敵な物語。だけど、その物語の主人公の顔は、なぜかいつもぼやけていた。

***

今、私が

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「この爪に精一杯の私を込めて」

「この爪に精一杯の私を込めて」

何も予定のない日曜日の午後。

いつものようにまだ半分眠ったままの頭で電気ケトルのスイッチを入れ、ぼんやりとした感覚を少し楽しみながらコーヒーをドリッパーにセットする。いつの間にかお湯は沸いていて、買ったときはあんなに心が躍っていたはずなのに、今はもう何も感じなくなってしまったブルーのケトルを持ち上げ、ほんの少し、お湯を注ぐ。ふわっと湯気とともにコーヒーの香りが舞い上がる。

淹れたてのコーヒーを

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「"ふわっと"した幸せを」

「"ふわっと"した幸せを」

「世界を変えたい」

そんな風に大きな夢を抱いてた。だけど、その夢が現実になることはなくて、いつか抱いた夢は今の私を傷つける鋭いナイフに変わっていた。

そうして何年も何年も、自分で作ったナイフで自分自身を切りつけては、ボロボロになった自分を見たとき、ようやく気付いた。

「ああ、これは私の夢じゃないんだ」

いつか自分の夢だと思って抱いた希望は、私じゃない誰かにとっての大切な夢で、それがあまりに

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「ゴミ袋いっぱいの愛」

「ゴミ袋いっぱいの愛」

時々、ふと無性に全てを捨ててしまいたくなる。

出会ったあの日に「使うかもしれないから」そう言って、大切に溜め込んだ愛しいガラクタたち。数ヵ月に1度、私はそれを躊躇なくゴミ袋へ放り込んでいく。

「血も涙もない奴だ」

幼い頃、初めてその台詞を言われた場面が頭をよぎる。そのとき一体、何をしていたのか。どういう経緯でそう言われたのか。詳しいことはもう思い出せない。けど未だにこうして思い出すほど、引き

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「特技:不幸探し」

「特技:不幸探し」

これといって悪いことなんて、なかったはずなのに。家へと向かう私の足は、こんなにも重い。

何か忘れた仕事はなかったっけ。
ああ、あのときはもっと、
こうすればよかったな。
すれ違う陽気な大人たちからはお酒の匂い。
頼むから、もう少し静かに。
ああもう。
歩道いっぱいに広がらないでくれ。

空いていたはずのお腹は
なんだかもやもやでいっぱいで。
そういえば。洗えなかった食器が
シンクに残ったままだ。

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「どんな私でありたい?」

「どんな私でありたい?」

そう問いかけられる度、私の思考は止まっていた。

数年前、自己啓発が流行り始める少し前のことだ。私は自分探しに必死だった。そんなとき、信じるべき”何か”を見つけ、それを信じて疑わない眼をした人たちから、何度もそんな問いを投げかけられていた。「理想のあなたは?」「なんでも手に入るとしたら何が欲しい?」そんななんてことない問いがいつも私を追い詰めていた。

物欲がないわけではない。したいことがないわけ

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平凡で 退屈な 日々。

平凡で 退屈な 日々。

あの人が 懐かしいあの笑顔で
私に笑いかけている

その瞬間 夢だと気付き
枕元のスマホに手を伸ばす

今日こそは 早く起きようと思ったのに
いつもと同じ時間を示す時計に うんざりする

光の差し込む部屋で 優雅に朝食を
なんて 夢のまた夢で

鏡と時計を交互に見ながら バタバタと
今日も私は 私をつくり上げていく

いつも 同じ時間に家を出て
いつも 同じ時間に仕事をする
そしてまたいつも 同じ

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歯の浮くような台詞から耳をふさいで

歯の浮くような台詞から耳をふさいで

本当に「自分に自信がある人が嫌い」なんだな、と最近よく思う。

わからなければ、こんなにイライラしたりしないのに、でもなぜか「自分に自信がある人」はすぐわかってしまう。

たとえ正しいことを言っていたとしても、なんだか胡散臭かったり、聞きたくなくても、聞こえてくる。本当に耳障りで仕方ない。

もちろん、それだけじゃなくて、彼らは、それはもう全身から自信をまき散らしている。

***

そんな人間に

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「当たり前」を忘れない私でいたい

「当たり前」を忘れない私でいたい

ようやく、風が心地よくなってきた。

今年の夏は妙に長い。暑さにめっぽう弱い私からすれば「夏が終わってしまう」そんな感傷に浸ることは、まずない。ようやくやってくる過ごしやすい季節への歓迎と、それと同時に少しホッとしている自分もいる。

夏の次には、当然秋が来ると信じていたし、これまでずっとそれが当たり前だった。

だけど、あまりに長く続く残暑。

ちっとも下がらない週間予報の最高気温に「もしかした

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「子どもらしさ」という呪縛

イライラしていた1日だった。

落ち着きのない教室の空気。
かすかに聞こえてくる話し声。
舟をこぐ生徒たち。

目に映るもの、聞こえるもの、肌で感じる空気。
何もかもが鬱陶しく、全てが私をばかにしているように思えた。

抑えようとすればするほど、苛立ちは募り、そんな昂る感情とは裏腹に、凍てつくような言葉が口から流れ出す。恐れというよりは、戸惑いに近い感情とともに凍りつき始める空気を感じながら、私は

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