粟野光一

趣味の音楽や読書、映画などの話題について、よしなしごとを気まぐれに。

粟野光一

趣味の音楽や読書、映画などの話題について、よしなしごとを気まぐれに。

マガジン

  • Langsamer Satz

    ラングザマー・ザッツ (緩徐楽章)。 音楽にまつわる雑文(雑な文)を、ゆっくり、のんびりと書きます。

  • message in a bottle

    日々の暮らしの中で、 言えなかったこと、言わなかったことが どんどん積もっていく。 その言葉を、伝えたかった相手には届かずとも、 誰か見知らぬ人が受け取り、 何かを感じてくれることがあればと願い、 ボトルメッセージに乗せて流す。 言えなかった、言わなかった言葉の せめてもの供養として。

  • 音盤道楽記

    音盤を聴いた感想、考えたことなどを。

  • 風に乗って

    私の永遠のアイドル、薬師丸ひろ子について書きます。

記事一覧

カーラ・ボノフが歌う"The Water Is Wide"。
名盤「ささやく夜」所収のスコットランド民謡を、
ギター2本と自身の弾き語りで。

歳を重ねないと歌えない歌、
歳を重ねないと味わえない歌は絶対にある。
これもそう。

https://www.youtube.com/watch?v=BnPUhQyajJ8

粟野光一
1時間前

ハーデリッヒが弾くフィドル。
真面目に遊んで楽しんでいるさまが、とてもいい。
俗世の憂さを一気に晴らしてくれる。

https://www.youtube.com/watch?v=GIRuIPoMQEI

粟野光一
1時間前

(続)1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

 一つ前のnoteで、フジコ・ヘミングさんとバーンスタインとの出会いについて書いた。  1970年、ウィーンでバーンスタインが「マタイ受難曲」を指揮した演奏会の後、ヘミ…

粟野光一
2週間前
25

1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

 先日亡くなったピアニストのフジコ・ヘミングさんの記事を新聞で読んでいて、彼女がかつてバーンスタインに認められたという有名なエピソードを思い出した。しかし、実際…

粟野光一
2週間前
22

フライングブラボー(拍手)と私

 コンサートでのフライングブラボー、フライング拍手というのが、どうも苦手だ。曲の最後の音が鳴ったあと、響きが消えないうちにブラボーを叫んだり拍手を始めたりする、…

粟野光一
3週間前
15

愛しのクラシック・ラジオ・パーソナリティたち

 ラジオを聞くのが好きだ。ラジオで誰かがしゃべっているのが聞こえていると、辛うじて世界とつながっているように思えるからだ。在宅での仕事中、自室に引きこもって一人…

粟野光一
1か月前
25

何かいいこと

 一日の終わり、毎日つけている手帳に「今日の良かったこと」を3つ書き留めるようにしている。どんな些細なことでも、くだらないことでもいい。達成感を得られたこと、嬉…

粟野光一
1か月前
14

「学び直し」より「学び重ね」

 とある通信制大学の説明会に参加した。定年後を見据えて、これまでの仕事とは違う分野の「学び直し」をしたいと考えてのことだ。そこで聞いた言葉がやけに胸に響いたので…

粟野光一
2か月前
13

「一年一組せんせいあのね」鹿島和夫(選)ヨシタケシンスケ(絵) (理論社)

 行きつけの本屋をブラついていたら、画家のヨシタケシンスケ氏が昨年出された絵本「一年一組せんせいあのね」が平積みになっているのに気がつき、慌てて購入した。そんな…

粟野光一
2か月前
27

「楽しく働く」より「機嫌よく働く」

 楽しく働けたらいいなと思う。仕事が楽しくて仕方がない、仕事の続きがしたくてたまらなくて、早く明日になってほしいと願いながら眠りに就く、そんな日々を過ごせたらど…

粟野光一
2か月前
10

オカンブレイク ~ 良い言い換えと悪い言い換え

 永田町界隈では、妙な言い換えが流行しているようだ。  政策集団、還付(還流)金、留保・・・。  政治家がこの類の言葉遊びをするのは昔から変わらない。あの人たちは…

粟野光一
2か月前
20

音楽エッセイの居場所

 映画「PERFECT DAYS」に感化され、幸田文のエッセイ集「木」を読んでいる。  幸田の遺著となった「木」は、えぞ松、藤、けやき、杉などさまざまな木を題材とした文を集…

粟野光一
2か月前
15

I'm in a Billy Joel State of Mind - ビリー・ジョエル来日公演(2024.1.24)と新曲"Turn the Lights Back On"

 先日放映されたBS朝日のTV番組「ベストヒットUSA」、ビリー・ジョエル特集を見ていたら、去る1月に東京ドームでおこなわれた16年ぶり、一夜限りのコンサートのダイジェ…

粟野光一
2か月前
21

【演奏会 感想】アリス・アデール ~ フレンチ・プログラム(2024.2.17 武蔵野市民文化会館)

   武蔵野市民文化会館から最寄り駅(といっても結構歩くのだけれど)の三鷹までを結ぶまっすぐな道は、「かたらいの道」と名づけられている。誰がつけたか知らないが、…

粟野光一
3か月前
30

【演奏会 感想】アリス・アデール ~「フーガの技法」(2024.2.12 武蔵野市民文化会館)

 かねてから実演を聴きたいと切望していた名ピアニスト、アリス・アデールが初めて来日している。その初日、バッハの「フーガの技法」だけを弾くリサイタルを武蔵野市民文…

粟野光一
3か月前
26

Alone again, naturally

 金曜日の昼下がり。行きつけの公園は、たくさんの小学生たちに占領されていた。すぐそばの施設に見学で来たのだろう。子どもたちは芝生の上で数人のグループずつに分かれ…

粟野光一
3か月前
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カーラ・ボノフが歌う"The Water Is Wide"。
名盤「ささやく夜」所収のスコットランド民謡を、
ギター2本と自身の弾き語りで。

歳を重ねないと歌えない歌、
歳を重ねないと味わえない歌は絶対にある。
これもそう。

https://www.youtube.com/watch?v=BnPUhQyajJ8

ハーデリッヒが弾くフィドル。
真面目に遊んで楽しんでいるさまが、とてもいい。
俗世の憂さを一気に晴らしてくれる。

https://www.youtube.com/watch?v=GIRuIPoMQEI

(続)1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

(続)1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

 一つ前のnoteで、フジコ・ヘミングさんとバーンスタインとの出会いについて書いた。

 1970年、ウィーンでバーンスタインが「マタイ受難曲」を指揮した演奏会の後、ヘミングさんが世界的指揮者の楽屋を訪れてピアノを弾き、彼に認められたというのが公式のエピソード(※注)。バーンスタイン・ファンの私は、もしかすると未知のレア音源が存在するのではという期待を胸に、当時の公式な演奏記録を調べてみた。

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1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

1970年、バーンスタインは本当にウィーンで「マタイ受難曲」を振ったのか

 先日亡くなったピアニストのフジコ・ヘミングさんの記事を新聞で読んでいて、彼女がかつてバーンスタインに認められたという有名なエピソードを思い出した。しかし、実際、両者にどういう接点があったのか詳しいことは知らなかった。

 今さらながら興味が湧いて調べたら、すぐにそれについて言及した記事が見つかった。

 彼女がバーンスタインに認められたということより何より、彼が1970年にウィーンで「マタイ受難

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フライングブラボー(拍手)と私

フライングブラボー(拍手)と私

 コンサートでのフライングブラボー、フライング拍手というのが、どうも苦手だ。曲の最後の音が鳴ったあと、響きが消えないうちにブラボーを叫んだり拍手を始めたりする、あれだ。

 私は、どんな終わり方をする音楽でも、ホールにまだ音が残っていて、演奏者が立ちずさんでいる間は、音楽の余韻を静けさの中で楽しみたい。いましがた完結した音楽の姿が完全に消えてしまうまで、舞台と客席が一体となり、高い集中力を維持した

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愛しのクラシック・ラジオ・パーソナリティたち

愛しのクラシック・ラジオ・パーソナリティたち

 ラジオを聞くのが好きだ。ラジオで誰かがしゃべっているのが聞こえていると、辛うじて世界とつながっているように思えるからだ。在宅での仕事中、自室に引きこもって一人ぽつねんと作業していても、オンライン会議やチャットがあるとき以外は、何がしかのラジオ番組を流しっぱなしにしている。

 だが、リモートワークのお供として、クラシック音楽の番組はほぼ聴かない。聴けないというのが正確かもしれない。つい聴き入って

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何かいいこと

何かいいこと

 一日の終わり、毎日つけている手帳に「今日の良かったこと」を3つ書き留めるようにしている。どんな些細なことでも、くだらないことでもいい。達成感を得られたこと、嬉しかったこと、良かったと思えることをとにかく箇条書きにするのだ。

 さしたる目的も持たず、衝動的にやり始めたのだが、これがなかなか難しい。

 1つや2つなら何とかすぐに思いつく。仕事が片付いたとか、食べたものが美味かったとか、散歩で見た

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「学び直し」より「学び重ね」

「学び直し」より「学び重ね」

 とある通信制大学の説明会に参加した。定年後を見据えて、これまでの仕事とは違う分野の「学び直し」をしたいと考えてのことだ。そこで聞いた言葉がやけに胸に響いたので、メモっておく。

 大学の方が仰っていたのは、大体こんな感じのこと。

「学び直し」という言葉は、リセットというニュアンスを込めて使われていて、学ぶ人のこれまでのキャリアを否定するみたいで好きじゃない。そうじゃなくて、これまで仕事をして積

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「一年一組せんせいあのね」鹿島和夫(選)ヨシタケシンスケ(絵) (理論社)

「一年一組せんせいあのね」鹿島和夫(選)ヨシタケシンスケ(絵) (理論社)

 行きつけの本屋をブラついていたら、画家のヨシタケシンスケ氏が昨年出された絵本「一年一組せんせいあのね」が平積みになっているのに気がつき、慌てて購入した。そんな本が出ていたなんて、まったく知らなかった。知っていたら、真っ先に買っていただろうに。

 原著は神戸の元小学校教諭、鹿島和夫先生が書かれた有名な本で、先生が担任をしていた小学一年生との交換日記「あのね帳」の内容をまとめたものだ。「あのね帳」

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「楽しく働く」より「機嫌よく働く」

「楽しく働く」より「機嫌よく働く」

 楽しく働けたらいいなと思う。仕事が楽しくて仕方がない、仕事の続きがしたくてたまらなくて、早く明日になってほしいと願いながら眠りに就く、そんな日々を過ごせたらどんなにいいだろう。

 でも、現実はそうはいかない。嫌な仕事、気が進まない仕事、やりたくない仕事はどうしてもある。あんな奴と一緒には働きたくないと思うことだってある。自分がどんなに頑張っていても、会社の経済状況が芳しくなかったり、自分の成果

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オカンブレイク ~ 良い言い換えと悪い言い換え

オカンブレイク ~ 良い言い換えと悪い言い換え

 永田町界隈では、妙な言い換えが流行しているようだ。

 政策集団、還付(還流)金、留保・・・。

 政治家がこの類の言葉遊びをするのは昔から変わらない。あの人たちは、自分に都合の悪いことを無難な言葉に希釈して問題点を矮小化し、国民の目を逸らさせようとする。

 もしかすると、そういう技術を持つことは、政治家になるための必要条件なのだろうか。政治家の求人広告には必須スキルとして「言い換え」が挙げら

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音楽エッセイの居場所

音楽エッセイの居場所

 映画「PERFECT DAYS」に感化され、幸田文のエッセイ集「木」を読んでいる。

 幸田の遺著となった「木」は、えぞ松、藤、けやき、杉などさまざまな木を題材とした文を集めたものである。木そのものだけでなく、木に触れた著者の心の動きとそれに突き動かされた行動、そして、木と共に生きる人たちの姿が濃やかに描かれている。

 どのエッセイでも、専門用語はほとんど使われていない。徹頭徹尾、私たちの日常

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I'm in a Billy Joel State of Mind - ビリー・ジョエル来日公演(2024.1.24)と新曲"Turn the Lights Back On"

I'm in a Billy Joel State of Mind - ビリー・ジョエル来日公演(2024.1.24)と新曲"Turn the Lights Back On"


 先日放映されたBS朝日のTV番組「ベストヒットUSA」、ビリー・ジョエル特集を見ていたら、去る1月に東京ドームでおこなわれた16年ぶり、一夜限りのコンサートのダイジェスト映像が流れた。しかも、YouTubeで数多くUpされている客席撮りではなく、正真正銘プロショットの映像!たった数分の抜粋なのが残念だったが、贅沢は言うまい。

 私も、あの日、東京ドームのアリーナ席にいた。ライヴを聴いた感想を

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【演奏会 感想】アリス・アデール ~ フレンチ・プログラム(2024.2.17 武蔵野市民文化会館)

【演奏会 感想】アリス・アデール ~ フレンチ・プログラム(2024.2.17 武蔵野市民文化会館)

 

 武蔵野市民文化会館から最寄り駅(といっても結構歩くのだけれど)の三鷹までを結ぶまっすぐな道は、「かたらいの道」と名づけられている。誰がつけたか知らないが、いい名前だと思う。

 素晴らしかった(またはつまらなかった)演奏会の帰り、感想を誰かとあれこれかたらいながら家路に着く。それは音楽好きにとっては、素敵な時間だ。

 でも、かたらう相手は他人である必要はない。自分でもいい。演奏会の余韻を

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【演奏会 感想】アリス・アデール ~「フーガの技法」(2024.2.12 武蔵野市民文化会館)

【演奏会 感想】アリス・アデール ~「フーガの技法」(2024.2.12 武蔵野市民文化会館)

 かねてから実演を聴きたいと切望していた名ピアニスト、アリス・アデールが初めて来日している。その初日、バッハの「フーガの技法」だけを弾くリサイタルを武蔵野市民文化会館で聴いた。

 私の耳に狂いはなかった。

 いや、私の審美眼のことを言っているのではない。もう10年以上前、アデールが弾く「フーガの技法」のCDを初めて聴いたとき、私の中に生まれた直観が当たった、ということだ。

 その直観とは、ア

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Alone again, naturally

Alone again, naturally

 金曜日の昼下がり。行きつけの公園は、たくさんの小学生たちに占領されていた。すぐそばの施設に見学で来たのだろう。子どもたちは芝生の上で数人のグループずつに分かれ、おしゃべりしながら楽しそうに弁当を食べていた。

 微笑ましい光景を見渡していると、集団の輪から少し離れ、歩行路のすぐ脇にシートを広げて一人で座っている少年がいることに気がついた。他の子とほんのちょっと離れているだけで、完全に孤立している

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