記事一覧
Doppelganger N.Klein /The Case against Perfection M.Sandel/ 鈴木邦男の愛国問答 鈴木邦男
Doppelganger Naomi Klein
The Case against Perfection Michael Sandel
鈴木邦男の愛国問答 鈴木邦男
最近読んだ本です。まったく違う主題の本ですが、どれも、社会の諸問題の根源には「selfの拡張」があることを指摘していて、その偶然に驚きました。しかし驚くことではないんですよね。
拡張していくselfはもちろん資本主義の産物です。「s
【訳書】ラルース百科事典の芸術 ~フランス老舗出版社の至宝~ (グラフィック社)
1月に刊行された拙訳書です。ちょっと手違いがあり、最近やっと手に取りました。
〈創業170周年を迎えた老舗出版社の比類なきアーカイブの結晶〉
~ラルース百科事典を彩る挿絵画から、美と驚異の世界へ誘う70点を収録。知的好奇心溢れる人なら年齢を問わず、本書に学び魅了されるでしょう。
深海、原生林、公園や庭園の秘密を探求し、そこに生きる小鳥や甲殻類、猛禽類や蝶類と出会いましょう。
画家のアトリエやガラ
『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』 川本直 ~苺大福の悦び~
『ジュリアン・バトラーの真実の生涯』
川本直
この小説は何かに似ている…と考え続けて、やっとわかりました。
「苺大福」
この世では決して味わえない(だって虚構だから)、極上の苺大福です。
苺は餡子に包まれ、求肥がこれをくるむ、という三重構造。
そして、苺も、餡子も、求肥も全員主役で、どれが欠けても成り立ちません。
ふたりの「主人公」ジュリアンとジョージは、天才型美少年と秀才型朴念仁のカップ
『谷崎マンガ 変態アンソロジー』 谷崎潤一郎原作
『谷崎マンガ 変態アンソロジー』
谷崎潤一郎原作
11人の漫画家と画家による、谷崎文学のマンガ化。
『痴人の愛』『陰影礼賛』『台所太平記』から、初期の短篇まで、「変態」「異端」「倒錯」などさまざまに呼ばれた谷崎文学のエッセンスを、11人のアーティストが新たな視点から表現するアンソロジー。
それぞれの作品はもちろんのこと、作家の対談、付録等々、豪華な文学遊びがこの小さな文庫本に詰まっています。
『二魂一体の友』 萩原朔太郎 室生犀星 『我が愛する詩人の伝記』 室生犀星 ~よこしまな読み方~
『二魂一体の友』は萩原朔太郎と室生犀星がおたがいについて書いた文章を集めた本です。あらためてここで紹介するまでもなく、ふたりは日本近代詩のスーパースター。犀星はのちに小説家に転じましたが、転向の経緯や心境について双方の立場から書かれた文章も本書に収められています。
詩論もたくさん盛り込まれているこの本。しかしどんな高尚な芸術論が展開されようとも、注目せずにいられなかったのは、文学が結びつけたふた
『The Bluest Eye』Toni Morrison ~「色」と「美」の呪力~
1. 色は支配する
『The Bluest Eye』の物語の主役はじつは色なのではないでしょうか。
黒人であるトニ・モリソンのデビュー作の主人公は、黒人の少女ピコーラ。ピコーラとその家族や友だち、彼女の住む町の人びとを通して、人種差別、性差別、性暴力、家庭内暴力の一筋縄ではいかない姿が描かれます。
ナラティヴは、ピコーラの友だちクローディアによる一人称の語りの章と、視点の異なる三人称の章に分かれ
『オリエンタリズム』 エドワード・W・サイード ~心象地理≒思考停止~
オリエンタリズム 上・下
エドワード・W・サイード
今沢紀子訳/板垣雄三・杉田英明監修
脳内で処理してつくりだした妄想上の他者。
私たちは、頭の中で勝手に他者を解釈して、憧れたり、見下したり、敵視したりすることがあります。そういうメカニズムによって自身の存在意義を高める人間や共同体も残念ながらあります。
その桁違いにスケールの大きいバージョンが、帝国主義のヨーロッパで花開いた「オリエンタリズム