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[学校×教育×文学]挿話閑話

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ほぼ週刊の予定ですが、不定期連載。 学校教育をめぐるあれこれを、言いたい時に、言いたいように書き付けていきます。#学校×教育 文がクソゥあかんわ^^;
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記事一覧

夏目漱石の「文学論」とDXの思考法

夏目漱石の「文学論」とDXの思考法

「日本経済復活への最強戦略」というサブタイトルがついた文藝春秋の本を読んでいたら、夏目漱石の「文学論」に関するきわめて興味深い話が出てきた。

世界最大級のオンラインマーケットを運営しているアリババのビジネスモデルを分析するところから始まる第4章に、「デジタル化したシステムに人間が望むことをどうやって指示するのか」という問題を解決するために、レイヤー構造が関係しているという話が出てくる。

そこに

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捨てる―学校が教えてくれないスキル

捨てる―学校が教えてくれないスキル

謎の算数プリント孫の話です。

朝、手を付けていない算数の計算プリントを発見した親が、小学校低学年の孫を問いつめていました。

「これはなに? 宿題じゃないの? なんでやってないの?」

口ごもりながら答えている内容をまとめると、こういうことです。

昨日先生からもらったプリントではあるが、宿題ではないから、やっておく必要はない。

授業用のプリントでもないから、ランドセルに入れて学校に持っていく

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麹町中学校だからできるんでしょ?という話

麹町中学校だからできるんでしょ?という話

千代田区立麹町中学校の工藤勇一先生が、見事に学校改革を成し遂げつつあった時、「立地が違うし、生徒の質も違うし、東京の真ん中の麹町中学校だからできるんでしょ?」という声を聞くことがありました。

「工藤勇一がすごいわけじゃない。ああいう立地だからできるわけで、あんなこと、うちの学校でやれるわけがない。」というわけです。

そんなわけはないわけで、それは「風向きは変わりましたか?これからの学校改革【ど

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都留文科大学文学部国文学科 新入生のための映画「かすかな光へ」鑑賞会を開きました

都留文科大学文学部国文学科 新入生のための映画「かすかな光へ」鑑賞会を開きました

昨年度の新入生に対して、新型コロナ感染症の拡大という未曾有の事態を前になすすべもなく、悶々とした日々を送らせてしまいました。

その反省から、少しでも良い形で大学と出会い、キャンパスデビューし、新生活をスタートさせてもらおうと、学科長としてまた新1年生の学年担任として企画したのが、4月2日(金)の映画鑑賞会です。

例年は入学式の後、桃の花咲く甲府盆地へと貸切バスを走らせ、県立の文学館や美術館を訪

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掛川教育フェス2021 開催準備進行中!

鈴木寛、安藤昇、乾武司、品田健、吉川牧人、高木俊輔、江藤由布、三輪開人、和田誠、新井貴之(順不同)など、豪華メンバーが次々に登場する3daysのビッグイベントです。私も出ます!

開催日:2021/03/27(土)~28(日) [プレ:03/21(日)]
会場:オンライン
参加費:無料
対象:小・中・高・大学生、教育関係者、保護者、その他どなたでも!

「コロナとGIGAの中で揺れる教育を何とかし
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「誌上開催」となった日文協のシンポジウム

「誌上開催」となった日文協のシンポジウム

2020年11月29日に共立女子大学で開催される予定だった日本文学協会の大会シンポジウムでが「誌上開催」されることになりました。

中古文学会をZOOMのウェビナーで開催してYouTubeにアップしてもらったばかりなので、当然オンライン開催だと思っていた私はガッカリしたわけですが、それならそれで面白おかしくやってみようと思い直し、オンライン発表の代替としてYouTubeで「紙芝居動画」を配信し始め

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SAMRモデルについて

教育ICTが導入されることによって、これから学校教育がどう変わっていくのかについて、S(代替)、A(拡張)、M(変容)、R(再定義)の4つの段階に分けて開設しています。Puentedulaが提唱したSAMRモデルの解説動画です。
Kaori Hakoneさんの動画のカバーヴァージョン、あるいはリメイク作品(?)として作りました。

チコちゃんは叱られない―公共放送におけるコンニャク問答

チコちゃんは叱られない―公共放送におけるコンニャク問答

オンラインでゆるゆる続けてきた大学院での取り組みの一端を、Googleサイトを共同編集してアウトプットしてみました。

学生が特設ホームページにつけたタイトルは、「矛盾する問答」です。(ぜひご覧ください)

国会の「ごはん論法」が学校教育に由来するものではないかという妄想のもとに書いた、「国会答弁と文学教育」という駄文の延長線上に位置する授業の記録です。

今回は、国会でも学校教育でもなく、NHK

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正しい字体と正しい性愛

正しい字体と正しい性愛

オンライン授業が始まることになった5月。休校中の課題を配信するために4月初旬につくったGoogleサイトの特設HPをコピーして非常勤の複数の大学の共通課題としてアップしました。8本の動画と1本の論文を提示し、それぞれGoogleフォームで回収した感想をスプレッドシートに書き出して特設HPで共有するという方法です。

8本の動画は、「学校システムを告訴する」・「小学校1年生のSNSデビュー」・「Yo

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「教師がしたい授業」でイノベーションは起こせない

「教師がしたい授業」でイノベーションは起こせない

「まずは教師がどういう授業をしたいかということを考えるべきで、そういう目的がないのに教育にICTするのは間違いだ」という類の発言を聞くことがよくあります。

でもじつは、「どういう授業をしたいか」ということがないままICTを導入することは、けっして「間違い」ではありません。

「〜したい」という授業は、既知のものである限りにおいて、イノベーションの起こる余地が少ないからです。

「〜したい」に基づ

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ヴァーチャルでリアルなこの世界をめぐる断章

ヴァーチャルでリアルなこの世界をめぐる断章

N高校をつくった大人たちが「ネットだけではなく、リアルも大切にしている」という類のセールストークをしていたところ、当のN高生から「先生たちはネットとリアルとかって区別してますけど、僕たちにとってはどっちもリアルですよ」とダメ出しされたという話があります。

外部からの批判を見越した対応として「リアルも…」と言っていたわけですが、ネットの可能性を信じている大人にとっても、ちょっと虚を突かれるダメ出し

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リモートワークの罪悪感をめぐる断章

リモートワークの罪悪感をめぐる断章

働き方改革という意味でも、学び方改革という意味でも、少なくとも感染リスクが十分に下げられない状況であるなら、すべてを対面授業でやらずにオンライン授業を取り入れる方法には、デメリットだけではなく多くのメリットがあります。

不登校の生徒が授業に参加しやすくなるとか、子育て期の教員が働きやすくなるとか、産休代替の教員をより広い地域から探せるとか、学び直しが用意になるとか、オンライン授業を経験することで

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COVID19とサバイバーズ・ギルト

COVID19とサバイバーズ・ギルト

サバイバーズ・ギルトと敗戦後新美南吉の「ごんぎつね」や夏目漱石の「こころ」が敗戦後になって国語教科書に広く掲載されるようになったのは、サバイバーズ・ギルト(生き残りの罪障感)がモチーフになっているからだという仮説を提示したことがあります。2004年5月の「敗戦後文学としての『こころ』―漱石と教科書」が最初に公にした論考です。

こちらはウェブ記事ですが、かつての私がこんなことを書いています。

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コロナと生きる学校教育のニュー・ノーマル(新常態)

コロナと生きる学校教育のニュー・ノーマル(新常態)

学校教育のニュー・ノーマル(新常態)もともと自由な行動が制限されがちだった学校で、3密を避けるためのさまざまな不自由が常態化しつつあります。

座る場所を指定され、体の向きを指示され、移動できる範囲を制限され、狭い机に向かって黙々と課題をこなすことを強いられる授業。

もちろん学校教育をになう現場の教員は、悪意でやっているわけではありません。むしろ児童や生徒の不自由が、過大なストレスにつながらない

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