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読書記録

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記事一覧

第1467号 人の心性はこんなところに現れるもの

1、読書記録347

本日ご紹介するのはこちら

平野多恵2024『おみくじの歴史: 神仏のお告げはなぜ詩歌なのか 』吉川弘文館(歴史文化ライブラリー 583)

2、こんなおみくじがほしい

日本人でおみくじを一度も引いたことがない、という人はなかなかいないのではないでしょうか。

それだけ身近なものなのに、意外とその歴史は知られていません。

本来容易に決断できない時に、それを神仏にうかがうた

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第1465号 郷土の偉人を調べるきっかけに

1、読書記録346

本日ご紹介するのはこちら。

https://bookmeter.com/books/21702804

古田義弘2023『仙台領に生きる 郷土の偉人傳Ⅴ』

住宅問題評論家から郷土史家へと変遷した稀有な経歴の持ち主の著者。

あとがきには米寿を迎えた、とありますからそのバイタリティに驚かされます。

しかもすでに郷土の偉人傳も5冊目ということ。

やはり継続することは素晴ら

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第1464号 「なんとなく」から「そうだったのか」に

1、読書記録345

本日ご紹介するのはこちら。

島村恭則2024『現代民俗学入門』創元ビジュアル教養+α

身近なところから、しかもかなり現代的な疑問をとっかかりに、

若手から中堅の研究者が解説してくれる、かなり手に取りやすい内容になっています。

なんと私の大学の時の同級生も一項目執筆していました。

2、身近な話題を掘り下げる

構成としては

1章 日常のなぜ

2章 四季のなぜ

3

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第1461回 まだまだブラックボックスの中に

1、読書記録344

今回ご紹介するのはこちら

出版社の編集者で、昭和の歴史探偵、半藤一利氏と親しく交流していたことがあとがきに記されています。

そんな著者が、太平洋戦争開戦のポイント・オブ・ノーリターン(帰還不能点)である昭和16年9月6日の御前会議に徹底的にこだわって調べまとめたのが本書です。

当時の新聞の縮刷版や、NHKアーカイブスの「日本ニュース」からの引用、

恵比寿にある防衛研究

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第1460回 社会現象を冷静に眺めるために

1、読書記録343

本日はこちら。

飯島渉2024『感染症の歴史学』岩波新書

2、記録し、歴史に位置付ける

新型コロナ感染症に翻弄された月日を地域としてどう記録していくのか。

常に考えていましたが、まずは我が国全体の状況を簡易にまとめた書物はないか、思っていたところにちょうどいい新書がありました。

本書は第1章を新型コロナのパンデミックについての記録とし、

2章以降でこれまでの感染症

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第1455号 受け入れなかった文化

1、読書記録341

本日ご紹介するのはこちら。

関根達人2023『つながるアイヌ考古学』

「ゴールデンカムイ」の流行もあって注目を集めるアイヌの文化。

考古学的にはどこまでわかっているのか、それを確認するにはぴったりの本です。

2、発生と終焉

まず大きな問題は「アイヌ文化」のはじまりについて。

東北地方まで弥生時代になった頃には続縄文文化であった北海道は、オホーツク文化と擦文文化と呼

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第1452回 受け入れる側と送り出す側

1、読書記録339

今回ご紹介するのはこちら。

一條三子2017『学童集団疎開――受入れ地域から考える』 (岩波現代全書)

我が町も取材対象になっていたことをうかがって気になっていましたが

ようやく目を通すことができましたのでご紹介します。

2、建前と現実

本書は埼玉県の滑川高校の教員だった著者が

郷土部の活動として地域の歴史を調べていくうちにたどり着いた、

という疑問が出発点にな

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第1443回 図書館ウォークを趣味に

1、読書記録338

本日ご紹介するのはこちら。

ちょっと歴史の話題からはずれますが、気になってしまったのです。

2、図書館を巡るということ

著者は元図書館員のライターさん。

連載されているnoteは35,000フォロワーの人気アカウントです。

大阪出身なのに青森県の図書館に勤務しているから、帰省のついでに遠回りして地方の図書館に立ち寄ってみたりするのです。

運転免許を持っていないから

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第1441回  2023年「私の選ぶ今年の一冊」

1、今年も素敵な読書体験できました

年末押し迫ってきましたので毎年やっているこの企画もそろそろ投入しようと思います。

今年どんな本を読んできたのか。

それを振り返るだけでも自分の学びになります。

特にこの記事では2023年に出版された本を取り上げます。

今年前半はNoteをあまり更新していなかったので、

一部は読書メーターのつぶやきの引用になります。

2、読書一覧

①山田康弘202

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第1440回 漢字は過去と今も繋ぐ

1、読書記録337

本日ご紹介するのはこちら。

阿辻哲次2013『漢字の社会史 東洋文明を支えた文字の三千年』吉川弘文館

漢字学の大家である著者が1999年に著したものを「読み直す日本史」シリーズで復刊したものです。

2、漢字の過去と未来

漢字の成り立ちから解きほぐして、儒教や書道との関わり、印刷技術からコンピュータを用いて漢字をどう使うか、という視野の広い本でした。

エジプトやメソポ

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第1439回 爆風でも残されたもの

1、読書記録336

本日ご紹介するのはこちら

月刊文化財 令和6年1月号 通巻724巻

◆新指定の文化財―記念物ー

2、新指定の史跡など

令和5年10月20日に答申を受け、新規に史跡指定となったものが詳しく紹介されています。

9件の新指定
茨城県ひたちなか市 十五郎横穴群
岐阜県飛騨市 姉小路氏城跡
愛知県豊川市 三河国府跡
鳥取県米子市 尾高城跡
広島県広島市 広島原爆遺跡
広島県東

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第1434回 彼の国の凄さは奥深さ

1、読書記録335

本日ご紹介するのはこちら。

岡本隆司2023『物語 江南の歴史 もうひとつの中国史』中公新書

三国志育ちなので定期的に中国史成分を摂取したくなりますね。

著者は高校生の時に読んだ中公新書『揚子江』(陳舜臣・増井経夫著)から憧憬の念を抱き、大学生になってからは1ヶ月も中国南部を旅したという筋金入りの中国フリークです。

2、南に取り込まれる北

中国の目まぐるしい王朝交代

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第1433回 仙台藩の女性の地位

1、読書記録334

本日ご紹介するのはこちら。

著者の柳谷慶子氏は戸籍名は菊池であるが、本書は先祖の苗字でもある柳谷を筆名とした、と記しています。

東北学院大学で近世の女性史を中心に研究され、本書でも伊達家や南部家、佐竹家など東北各藩の事例が豊富に用いられます。

2、政宗は流石のセンス

まず面白かったのは年末の煤払い。

奥方が住むエリアの大掃除を担当したのは、男たち。

その間女性たち

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第1429回 伊達家の可能性

1、読書記録333

本日ご紹介するのはこちら。

J・F・モリス2023『伊達家:仙台藩 家からみる江戸大名』吉川弘文館

地元の歴史を語る上で、押さえておかなくてはならない本ですね。

2、大きな一家

著者はオーストラリア出身で、本人曰く「東北の歴史を何も知らなかった(本書あとがきより)」のであえて留学先に東北大学を選んだという経歴を持ちます。

仙台藩関係の論文で英語で読めるものはいわゆる

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