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愛するということ

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村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」解釈

村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」解釈

僕がどうしても、いるかホテルに行かなければならなかった理由。それは、そこからやり直さなければならなかったからだ。

つまり、静かにコツコツと、無駄遣いが最大の美徳とされる高度資本主義社会において、せっせと雪かきをしながら溜め込んできた暫定的で便宜的ながらくたを全て放り出してでも、もう一度人生の行き止まりに戻り、また一歩前に足を踏み出し、心を取り戻し、踊らなければならなかったからである。

ダンスダ

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つるつるとしたサテンのリボンのように

つるつるとしたサテンのリボンのように

趣味の良いインテリアショップで働いていると、色々な家族の形を目にする。

混乱のないように前置きしておくと、私は現在3つの仕事をしている。
通訳ガイドと、ライター、加えてアルバイトのショップ店員だ。

タイムマネジメントが常に課題としてあるのだが、この話について語ると長くなるので、また別の機会にでも話そうと思う。

さて、話題が逸れてしまったが、約半年前に素敵なインテリアショップで働き始めて

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太宰治 「斜陽」

太宰治 「斜陽」

「革命」というものが、チンプンカンプンで、ちっとも腑に落ちなかった。

だけど、今わかった。

革命とは「愛の結晶」であり、「死と再生」、あるいは「終焉と再興」だったのだ。

前半戦、呑気な貴族の優雅な暮らしぶりの描写ばかり続き(いえ、たまには災いのモチーフとして描かれた蛇が登場し、刻一刻と悲劇さを増して行ったけれど)、なんだか飽き飽きしてきたなあ、とあくびが出そうになるところで、突然物語の本編が

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映画 「人間失格〜太宰治と3人の女たち〜」

映画 「人間失格〜太宰治と3人の女たち〜」

なぜだろうか、
日本橋アートアクアリウムの狭い水槽の中を、懸命に生きる金魚の姿が、脳裏に蘇る。

「人間は、恋と革命のために生まれてきた。」

そんな、太宰の愛人、静子の情熱的なセリフが似合う、官能的で艶やかな作品。

太宰の波乱万丈な恋愛模様に、監督である蜷川実花さんの艶やかな世界観が重なった「人間失格」は、映画の垣根を超え、もはや完成されたアート作品と呼ぶに相応しい。

お見合いで結婚し、3人

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わたしと彼と夏祭りと

わたしと彼と夏祭りと

夏祭りに心惹かれる理由なんて、挙げればキリがない。

だけど、あえて言葉にするのならば、その夜だけはありふれた日常が、見知らぬ非日常になりすまし、何食わぬ顔してそこに存在しているからなのかもしれない。

人でごった返した改札。
軒を連ねる屋台の出店。
居酒屋の前にたむろする鮮やかな髪色の若者たち。
威勢良く飛び交う店員の声。
どこを見渡しても目に飛び込んでくる、明かりの灯った提灯。

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プロフェッショナル・カップル的日曜日

プロフェッショナル・カップル的日曜日

なんてことはない、日曜日。
一緒にカフェでお昼を食べ、政治の話をした。

彼は、私の意見に耳を傾け、私のことをセクシーだと言い、自分の意見を述べた。

私は、何がセクシーなのかちっとも分からない、と口を尖らせ、政治に詳しい彼に、まるで子供のようにたくさんの質問を投げかけた。彼は、一つ一つ、無知な私にも分かるよう丁寧に教えてくれた。

私は、教えてくれてありがとう、あなたの話はとても面白い、と

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ニジ

ニジ

そいつは、突然やってくる。

土砂降りの雨が降っていて、
もう助けてくれよってぐらい
ゴウゴウと降っていて。

お、やっと止んだ、
ふぅやれやれって思ったタイミングで
そいつは現れるんだ。

驚くほど美しい、七色の衣を纏い
曇天の空の中に消えていくように

まっすぐに橋を架けるんだ

まったく、参っちゃうよなぁ

困らせられたと思ったら、
綺麗なドレスにおめかしして
また姿を見せてくるんだから。

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すてきな補完関係

すてきな補完関係

昼間は、私のプロジェクト。

夜は、彼のプロジェクト。

それぞれのプロジェクトに、共に参画しあった日曜日。

"互いに高め合っていける関係"

なんて

知らないけれど、

きっとこーゆー関係なのだと思う。

私と彼は

出自も育ちも趣味も何もかもが違うけれど

何か新しいことをしてみること

つまりcreativeであることが大好きで。

休日にじっとしていられないタイプ。

あとは、sens

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この世に生を与えたのならば

この世に生を与えたのならば

子供は
親の承認欲求を満たすための
機械ではない。

さいきんの親は
子供に甘えていると思う。

無論、
全ての親がそうであると
言っているのではないし、

子育ての経験がない私の意見など
綺麗事だと叱責されるかもしれない。

ただ、
忙しさにかまけて
子供とのコミュニケーションを蔑ろにしたり

はたまた
せっかく子供が時間をとって
久しぶりに親元を訪れてみても
終始自分の話ばかりで

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それはそれは

それはそれは

西荻窪の
善福寺公園

遊具で遊ぶ子供達を
優しく見守るようにそびえ立つ
銀杏の木

太陽の光を
余すところなく
身体中に浴びてきたのだろう
独り占めしてきたのだろう

見事な三角錐の形をしていた

あまりに大きすぎて
葉の黄緑が美しすぎて
樹形が整いすぎていて
メタセコイヤの木にも見えた

それはそれは
大きな銀杏でした

あれほどまでに立派で
凛々しい姿をした大銀杏を
わたしは見たことがない

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日光resfeber

日光resfeber

日光。
夢みたいだった。

眠い目をこすりながら、
浅草駅のセブンイレブンで待ち合わせ。

A型で心配性の私が
断固主張した結果
彼が折れてくれて

張り切って40分も前に
駅に着いたはいいけど

その必要もないほど
プラットフォームはちっぽけで。
駅弁すら見当たらないほど。

2人でどうしよっか?って言いながら
仕方なく
朝の浅草の商店街を
ぶらりぶらりと
手を繋いでお散歩し

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ロマンチック日光紀行

ロマンチック日光紀行

彼との日光旅行。
いざ終わってしまうとそれはあまりにも呆気なくて、
まるで綿菓子のように甘美な思い出だけを残してく。

毎度のことだけど、
これだから旅はやめられないんだ。

特に今回は前回の京都旅行に次ぐ、大切な人との記念日旅行だもの。

帰りの特急電車で彼は言った、
よかった、うまくできたね。
言われてるのは、旅を2人で乗り越えることが出来れば、ずっとこの先もうまくいくって。
だか

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3年記念日旅行のもちもの

3年記念日旅行のもちもの

新しいピカピカのイヤリング
可愛くて2個も買っちゃった

最高なbangとfaceになるためのコテとメイク一式

もちもちお肌をキープするための化粧水と乳液

ほんのり肌見せがポイント
タートルネックのセーターとレースのオーガンジー、ミニスカート
あなたの柔らかな手を想像するだけでドキドキしちゃう

この日のために
自慢のおしゃれな彼女になるために
黒いベレー帽も買ってみたわ

あなたと

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まるで蟻のように

まるで蟻のように

人間はなぜ、他人に期待してしまうのか。
その根源を辿れば、たぶん、
言語を持ってしまったから、という答えに行き着く。

言語をもち、
気持ちが通じ合う喜びを知ってしまったから。

「電話が鳴る、そしてこう思う。誰かが誰かに向けて何かを語ろうとしているのだ、と。

僕に向かって何かを語ろうとする人間なんてもう誰ひとりいなかったし、少なくとも僕が語って欲しいと思っていることを誰ひとりとして語って

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