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人文・社会全般

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記事一覧

地名の話

地名の話

 今日は、7月28日が「地名の日」ということで、地名の話をしたいと思います。このタイトル、読む人が読めば分かるのですが、柳田國男の真似をしています。

柳田國男と地名 柳田國男は日本の民俗学の確立に大きく貢献した人物であり、地理学の概論では蝸牛考(カタツムリの呼称の地域差)で有名です。柳田は当時の地理学者とも接点を持っており、実は地理学評論にも寄稿しています。柳田國男(1932a)「地名の話(上)

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「人間」って何だろう

「人間」って何だろう

 最近、地理に関することをたくさん書いているので、今回は少し離れて、ぼんやりした話を書いてみます。「人間って何だろう」、「人間らしさ」て何だろう、という疑問です。ヘッダーは人ではなく、稲の中から出てきた実家の猫です。ジャングルから出てきたトラのような風格をそなえています。

「人間」や「人(ひと)」の意味は何なのか この疑問は、私が素朴に何度か考えてきたものです。というのも、「人間らしい」という言

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夏目漱石『坊っちゃん』を地理の視点から考える

夏目漱石『坊っちゃん』を地理の視点から考える

 今回は、読書の秋ということで、文学作品と地理の話です。私はあまりたくさん読書はしませんが、夏目漱石が好きです。特に、小説『坊っちゃん』は読みやすく、楽しく読んでいました。小説の世界(舞台)について地理の視点で考えると、文学を読むのがより楽しくなるということを書かせていただきます。最後に松山旅行のときの写真も紹介します。

 今回読んだのは、夏目漱石『坊っちゃん』(角川文庫,2015年改版,はじめ

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「雑」の字は「雑煮」にだけ使えばいい―「雑学」・「雑用」は本当にあるのか―

「雑」の字は「雑煮」にだけ使えばいい―「雑学」・「雑用」は本当にあるのか―

 この記事で言いたいことは「雑」ではなくシンプルです。「雑」という字は本来多様性を表すものではないか、「雑学」とか「雑用」のようなものは、本当は存在しないのではないか、という考えです。

 地理学(とくに文化地理学)の入門で、雑煮の調理法の地域的差異の話題はとてもよく紹介されます。簡単に説明すると、①餅の形が東日本では四角く、西日本では丸い②味つけにもすまし汁、みそなどの違いがある③局所的に小豆雑

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距離をとるほど、近くなったら

距離をとるほど、近くなったら

 (物理的に)距離をとったら、(心理的な)距離が近くなるといいな、というお話です。ヘッダーの写真は、距離をとって向き合う実家の犬と猫です。

 私はBump of Chickenが好きですが、アルバム『jupiter』の中に「キャッチボール」という歌があります。キャッチボールをしながら、上手になって少しずつ離れていくと、声は遠くなるけれど、(心の)コエは近くなる、というような歌詞で、とてもいい曲で

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8月9日にしか書けないことがある

8月9日にしか書けないことがある

 今回は、長崎について書いてみたいと思います。今日で長崎への原爆投下から75年が経ちました。とても長い時間です。8月9日は、私たちに平和への気持ちを新たにさせてくれる特別な日であり、長崎の街は、今も私たちに平和の大切さを教えてくれます。長崎には、出島など国際交流の歴史が蓄積され、キリスト教との関わりなど、異文化理解の貴重な舞台でもあります。

 長崎市の地理院地図です。限られた平地に江戸時代から町

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調べ学習の思い出

調べ学習の思い出

 ここでは、私が小学校で体験した調べ学習について書いてみます。

 私の小学校の近くには、小さな遺跡がありました。正確にいえば、遺跡としての姿は残っておらず、石器や土器が出土するところだったということです。縄文時代か弥生時代かは思い出せません。

 私がこの遺跡に興味を持ったきっかけは、昼休みに校庭で拾ったキツネのような形の石でした。

 拾った石を小学校の教頭先生に見せに行くと、先生は「これはす

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お盆の団子、祖母との思い出(地域ごとの多彩な文化の話)

お盆の団子、祖母との思い出(地域ごとの多彩な文化の話)

 お盆に帰省しなかったのは、かなり久しぶりでした。そして、今住んでいる街にお盆の時期にいるのは初めてです。

 夕方、窓の外から聞き慣れない音が聞こえました。それで見てみると、お盆の行事でした。この地域の独自の風習だと思います。文化は本当に多様で、その多様さこそ素晴らしいと思います。地域の人にとってはありきたりでも、それぞれがとても大きな意味を持つと思います。

 今日は、お盆の団子と、優しかった

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徒然草が好きです

徒然草が好きです

 タイトルの通り、徒然草が好きです。中学校や高校の古典の授業で学んでから、今でも愛読しています。ここでは徒然草の思い出、古典と土地との関わりなどについて書いてみます。ヘッダーは2018年4月の仁和寺です。

 徒然草をはじめに学んだのは中学校で、「神無月のころ、来栖野といふ所を過ぎて‥」の文章でした。なぜミカンの木の周りに囲いを作ったのかみんなで考えました。懐かしいです。

 高校でも古典は好きで

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私の宝物(子どもの頃拾った石器をパワポでトレースした話)

私の宝物(子どもの頃拾った石器をパワポでトレースした話)

 先日、調べ学習の思い出で、石器を拾っていた話を書きました。

 先日の記事を書いていたとき、近くになくて写真を載せられなかったのですが、あとから無事に石器を入れていた箱を引っ張り出したので、ここでは私の宝物を紹介したいと思います。

 これらが小学生の頃から地道に拾い続けた石器と黒曜石(の一部)です。方眼は5mm四方です。右下は矢じりのキツネ形がそのまま欠けずに残っていて、特に気に入っています。

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研究を音楽にたとえてみた

研究を音楽にたとえてみた

 今回は、研究者が行う研究活動、特に論文を発表する作業を、アーティストの音楽活動でのCDの発売にたとえるとどのように表現できるか考えてみたいと思います。ヘッダーは学術雑誌とCDを重ねて写真を撮ったものです。BUMP OF CHICKENのファンです。

 研究者というと、実験室で白衣を着て実験を繰り返しているようなイメージの方もいるかもしれませんが、研究者も分野によって様々です。そして、研究者と呼

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「一体感」は本当に一つになっているのか

「一体感」は本当に一つになっているのか

 今回は、一体感という言葉について考えています。ヘッダーは今日届いたハンブレッダーズのグッズです。順調にファンの道を突き進んでいます。

「会場が一つになった」「全国民の願い」「市民はみんな望んでいる」、こんな言葉を見かけると、本当にそうなのかなと、疑問を感じたりします。

 もちろん、私はライブなど何かの機会で同じ会場にいる人たちを大切にしたいと思います。また、今住んでいる国も、街も、大好きです

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文章を書くときの「引用・参照」について

文章を書くときの「引用・参照」について

 今回は、文章を書くうえで気をつけていることについて書きます。なんだか難しい内容のようですが、シンプルな内容です。ヘッダーはジェットストリームの多色ペンです。とても便利です。

 何かの文章を書くときに、誰かの文章を参考にしたら、参照元を示すことがとても大切です。また、引用であることが分かるように括弧でくくったり、出典を示して参考文献をつけたりします。特に大学で書く文章では厳しく指導されるのではな

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「仕事から仕事へつなぐこと」の大切さ

「仕事から仕事へつなぐこと」の大切さ

 最近、地図の作り方の説明などを書きながら、広い意味でのものづくりについて考えていました。今回は、「仕事から仕事へつなぐこと」の大切さについて考えたことを書いてみます。ヘッダーは、「職人」として思い浮かんだ「大工」に関する地名、「元大工町」がある青森県弘前市の城下町です。日本の城下町起源の都市には職人集団にちなんだ地名が今も残っていますね。

 さて本題ですが、私は地理に関わる仕事をしているので、

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