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美味しいものたちとの出逢い

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美味しいレストランの逸品たち、市場で瑞々しく輝く食材、採れたての魚など、さまざまな美味しさとの邂逅について、忘れずに心にとどめるための備忘録です。
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蕗の小さなお寿司

蕗の小さなお寿司

茹でたての蕗の皮をむくのが、好きです。
中からあらわれる美しい緑色に出会えるのも、
今の季節ならでは。

蕗は皮ごと、鍋のサイズに合わせてカットし、塩を加えた湯を沸かした鍋へ。
茹でたてを水にとって、
少しずつむいた端っこの皮をいっぺんに持って下方向にすっとひくと、指先が黒くなることもなく
つるりと簡単にむけます。

皮をむいた翡翠色の蕗を
鰹のだし汁と薄口しょうゆ、みりんで煮含め、
煮汁の中で冷

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海老芋のあったか治部煮

海老芋のあったか治部煮

先日、母と娘を伴って関西に向かいました。

神戸の施設にいる叔母〜母の姉〜が、昨年末の電話で会いたいと言ってくれたのが母の背中を押す形になり、連れて行くことに。

ふたりは父の葬儀以来、コロナもあってなんと10年ぶりの再会でした。
歳を重ねても、何年離れていても、
きょうだいというのは、何とも言い難い格別の絆が在るもの。
二人の背中を見ながらしみじみと感じ、
束の間のあたたかい時を過ごしました。

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晩秋ルッコラのピュレ

晩秋ルッコラのピュレ

一向に寒くならない今年の11月ですが、
雨上がりの朝ならではの、
一面、雨風で散った落ち葉の絨毯。
あたたかい色合いの妙が、
晩秋の風情そのもので、
急ぎ足が はたと止まってしまいました。

春と秋、どちらも短いのが惜しまれますが、
それでも、桜よりは紅葉の方が
少しだけ長く楽しめて嬉しいのです。

そんな晩秋の今週末、
農家の直売所で見かけたルッコラは
日頃目にするハウス栽培のパック入りの、

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名残りのホヤを噛みしめる夏。

名残りのホヤを噛みしめる夏。

いよいよ8月。
5月から出回り始め、パンパンに膨らんだ水風船のような大きさだったホヤも、次第に小ぶりになってくる頃。
それでもこの口いっぱいに広がる海を味わいたくて、見かけると手に取ってしまいます。

捌きたてを一切れ口に放り込むたびに
思わず「く~っっ!」と唸ってしまう美味しさ。

疲れも吹き飛んでしまう勢いです。

ホヤにおこぜ、カサゴにナマコ。
ちょっとグロテスクに見えるもの、
見た目が美し

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さくらんぼのピクルス🍒

さくらんぼのピクルス🍒

青森、そして山形から、今年もさくらんぼが次々届きました。
箱の蓋を開けるたびに、そのルビィ色の実の愛らしさに見惚れてしまいます。
大きく甘くて、まるですもものような食べ応え。

傷みやすいけれど、
やはり日本のさくらんぼが好きです。

ぼやぼやしているとあっという間にいなくなってしまうさくらんぼ。
半分は、一番美味しい、そのままで。
残りは長く味わえるよう
キルシュというさくらんぼのお酒に漬け、

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夏蜜柑のチャツネ

夏蜜柑のチャツネ

近所の友人宅の裏庭が、大好きです。

春には特に植えてもいないのに蕗の薹が食べきれないほどに芽吹き、
それをたくさん取らせてもらったはずなのに
初夏には立派な蕗がニョキニョキと、奥まで足を踏み入れられないほどに繁茂して。
日陰には茗荷に茗荷竹。
そして、この夏蜜柑の木も。
庭の隅に佇んでいて、大きな実が忘れられたように幾つもなっていました。
傷はあるけれどもちろん無農薬で、
果肉も食べ応えたっぷり

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実山椒と梅雨

実山椒と梅雨

いよいよ梅雨の足音がひたひた、ピチャピチャ、と聞こえてきました。

ジメジメと鬱陶しいイメージの、梅雨。

けれどこの時季、実は嫌いではありません。

梅にらっきょう、赤紫蘇などに加え、
氷砂糖や保存瓶の類いが店頭にずらりと並ぶとともに、嬉しい季節仕事がいっぺんに目白押しでやってくる、あの勢い。
むしろ好きでたまらないのです。

ほんの束の間しか手に取ることができない
過ぎ去る季節の幸。
それがひ

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応援したくなる鮮魚店のこと。

応援したくなる鮮魚店のこと。

神奈川・北鎌倉の、
小高いところにある閑静な住宅街。
駅からは気軽に歩けない距離だし、
コンビニなど一つも見当たらない場所。
買い物難民がたくさんいらっしゃりそうな、
そんな場所にポツンと一筋の商店街があります。

クラウドファンディングの力を集め、
様々な魚の巧者や地元の有志が力を合わせて、
ここに魚屋さんをオープンされたとのことで、車を飛ばして行ってきました。

商店街とは言っても、駐車場はな

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パセリは美味しい名脇役。

パセリは美味しい名脇役。

日毎に勢いを増す陽射しに、たびたびの恵みの雨を得て、新しい芽がぐんぐん育ち伸びる頃。

隔週宅配の野菜の箱にも大根の抜き菜がこんもり届き、
そして先日、パセリ農家さんが、間引き菜を段ボール二箱分ぎっしり詰めて送ってくださいました。
友人の依頼でパセリの利用法をざっくりご紹介させて頂いただけなので、恐縮しきりです。

若々しく柔らかい葉は、そのままで香り高く美味しく、間引きなんてもったいないほど。

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こごみで、春の寿司

こごみで、春の寿司

あくも優しい旬のこごみ。

青、赤取り混ぜてたくさん手に入ったので、
鯛やさよりなどの魚たちに
小ぶりの筍、そら豆など、
家じゅうの旬をかき集めて、
ちらし寿司に仕立ててみました。

その時の旬菜であれば、具は何でも。
野菜や刺身が数種それぞれ少しずつしかない時、
お寿司にしてみると、不思議と心細くありません。

こごみは、巻いた部分を特に念入りに洗ったら塩ゆでするだけ。
筍は下ゆでののち、薄味で

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筍と木の芽の塩釜焼き

筍と木の芽の塩釜焼き

今年の桜の饗宴も、春の雨とともに締めくくりを迎え、
すこし寂しくなりました。

けれど、気づけばずいぶんと日も長くなり、
ひと雨ごとにあたりは暖かくなって、
散歩にはうってつけの心地の良さ。

なかなかゆっくり歩く余裕がないけれど
このやわらかな季節、
大きく手を振ってからだごと楽しみたくなってきました。

4月に入ってからずっと
上ばかりを向いて春を探していた気がしますが、
見れば足元にも。

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つくしづくし。

つくしづくし。

数日間の旅から戻り、翌朝庭に出たら
枝だけだった庭の山椒や楓の木の、どこにこんな力が、と思うほどにみなぎる新芽たち🌱
あまりの勢いに、目を見張りました。

満開、真っ盛りの桜のほかにも、
気づけば周りはもう、春そのもの。
溢れかえる芽吹きの力が、見上げても見下ろしてもそこここに見つかります。
近くの土手にもつくしがたくさん顔を出していました。
桜同様、年々早まっているようで
うっかりしているとす

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弥生の豆いろいろ

弥生の豆いろいろ

随分と暖かい日が増えました。
纏う衣が薄く、少なくなるごとに、
面白いように心も軽やかになっていきます。

この間お正月を迎えたと思ったら、もうじきお彼岸なのだと、
和菓子屋さんのおいしそうなぼたもちでやっと気がつくわたし。

食いしん坊にもほどがあるよ、と半ば呆れつつ…

近所のご住職に
「お墓参りにいけなかったら、遠くからでも手を合わせて思い出すといいんですよ」
と教えてもらったことを思い出し

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いちごの春巻きカンノーリ

いちごの春巻きカンノーリ

ものすご~くおいしい苺を、頂いちゃいました。

村田さん家のいちご。

ユーモラスなロゴの箱も、どことなく昭和を感じる愛らしいものです。

まずはそのまま、へたを持ってパクリと頂きました。
ルビィ色の大きなとちおとめは、
甘いだけでなく、食べごたえ抜群。
娘は目を1.5倍くらい見開いて、
一粒ごとに食べては大騒ぎし、
立て続けに大きな粒を
4個もいってしまいました。

このいちごは、煮たり干したり

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