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何度も読み返したい素敵な文章の数々 vol.4

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2018年2月の記事一覧

スローライフ。フツーライフ。

日が高くなりはじめてから目を覚まし、布団に横たわりながらスコット・フィッツジェラルドの短編集『冬の夢』に収められた「罪の赦し」を読み進める。緊張感を含んだ物語が繊細な描写とともに進んでいく。

読書がひと段落すると、洗面所へ行って髭を剃る。奥さんが沸かしてくれたお風呂に入るためにドアをあけると、湯気がもわっと漏れ出てくる。浴室いっぱいに充満した湯気のおかげで湯船につかる前からあったかい。地味な幸せ

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弱火でトロトロ書くように。

弱火でトロトロ書くように。

昨年のある暑い夏の日。額に汗がじんわりとにじむ夜。彼はうちの自宅へとやって来た。彼がいったい誰なのか、ぼくにはわからない。そんなぼくは顔に笑みを作っていたが、その仮面の奥はというと…自信がなかった。なんなら少し、困り気味だったかもしれない。それくらいに、ぼくには彼の存在の意味がとんとわからなかったのだ。

しかし、妻は彼のことを知っていたようで、快く我が家に招き入れていた。「うれしい!」と弾むよう

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「ただひたすら褒め合う会」が控えめに言って最高だった話

「ただひたすら褒め合う会」が控えめに言って最高だった話

 こんにちは。褒められてますか?

 ぼくは昨日褒められすぎまして、ついウーロンハイを飲みすぎまして、まだあたまがちょっとクラクラしているなかこれを書いています。

 ……あ、昨晩、「ただひたすら褒め合う会」という飲み会を開催しましたので、緊急レポートします。

 そもそもはこのツイートが始まりでした。

 結論から言いますと、褒め合う飲み会、通称「ほめ会」は、全員がハッピーになりますし、控えめに

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「バーフバリ」を観ると、自分がほんの少しでもビジュアルの仕事に関わっていると言うのが恥ずかしくなるくらいのスゴさを感じる。音楽も素晴らしい。くだらないことしてないで、あと10年くらい不眠不休で頑張ろう。

受け入れる側が、常に正しいのか不安になってしまったドイツコメディ。

受け入れる側が、常に正しいのか不安になってしまったドイツコメディ。

「はじめてのおもてなし」

この邦題は良く出来ていると私は思う。ドイツは他の欧州先進国同様、前の大戦以降、幾度となく各国からの移民、難民を受け入れてきている。けれど、受け入れる側として、真っ向から対峙する「コメディ」ってあんまりなくて(日本に来てないだけ?)、「はじめての」はある意味、ドイツの難民受け容れ体制を皮肉ってるよなぁって。

これまでも何度も何度も受け入れてきている(トルコやベトナムやら

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市原悦子さんが大好きな件。

市原悦子さんが大好きな件。

日本で好きな女優は、と聞かれたら迷わずそう答えます。いや、今までもそう答えてきました。

いつからかと言われると、多分小学生時分に「黒い雨」を見たときからだと思います。あとは大河ドラマで竹中直人演じる秀吉の母親役を演じたとき、かな。それから悦ちゃんの出るドラマ(もちろん「家政婦は見た」です)を見るようにしていたら、「桜乙女の事件帖」だったり「弁護士高見澤響子」だったり「いじわるばあさん」だったり色

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ハレとケ:都会が祭りに見えた日

自分はコミュニティメディアの人であって、いわゆるコミュニティづくりとかコミュニティデザインとかになると専門外なのですが、なにかとそういう話の近くにいることもあり語る機会もないこともないので整理の意味も込めてコミュニティ観みたいなものを記してみます。

地方で生まれ育った人が東京で初めて渋谷だとか新宿だとかの人の多さを見て「これは何の祭りだ」と驚く、みたいな話はよくあります。

祭りというのは「ハレ

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フィルター越しの欲求

フィルター越しの欲求

「これがほしい」「あれがやりたい」「どこそこへ行きたい」「あれが食べたい」

人間の欲求は果てしない。欲求があるからこそ、物事へのモチベーションが上げられるという側面もある。

ただ、この欲求は、正しく育まれなければ健全に持てないものなのかもしれない、と思っている。

何度か話したことがあるけれど、わたしは何かを選ぶとき、真っ先に値段を見るくせがある。それは自分のお小遣いをもらい始める前、幼少期か

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イライラ撃退法

イライラ撃退法

何となく、周りの人に対してイラついてしまう日、ありませんか?
約束したことをいつまで経ってもやってくれない人があっちにもこっちにもいるぞ、と思ったり、「私のこと軽く見てるよね?」という態度を人からとられてしまったり……。

「やるべきことをやってくれない人」に関しては、催促したらうるさがられるかな?と遠慮するのを止めて、リマインドの回数を増やすぐらいしかできることはないと思います。
こういう時は「

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自分に自信がなくて、虚勢を張っている人と話すとこちらも苦しい。その人は一生懸命に弱点を隠そうとして、そのガードによっていいところも隠れてしまっている。弱点も含め素直に話ができれば、きっといいところが見つけられるのに。私は結構、誰かのいいところを見つけるのが得意だと思ってるんだけど

自分が感じていることは真実でない。勝手に自分でセルフイメージを下げていたり、逆に傲慢にもひとをバカにしていたり?無意識にやってしまうことがあります。それは真実ではない!ということを伝えたい。
感情をシェアしすることが大事です。

感情の学校の細川一滴と、副担任の天乃陽妃が毎朝行っている「感情のシェア」をシェアしてみた! 
あなたは今、どんな感情ですか?

「特別なじぶん」と「平凡なじぶん」が編みだす世界のひみつ

「特別なじぶん」と「平凡なじぶん」が編みだす世界のひみつ

一見似ても似つかぬふたつの項目を見比べたら、実は根っこの原理は同じだということがある。

2年くらいまえに、「ストレングスファインダー」なる、個人の気質や能力を5つのカテゴリーに分類してくれる、いわゆる性格診断をやったのだけれど、その5つのうち「着想」というタイプが含まれていた。

他の4つは「達成欲」「学習欲」「内省」「収集心」だったが「着想」だけが少し異質で、でも説明を読めばとかくドンピシャだ

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いい文章を書けと神さまが遣わした人

いい文章を書けと神さまが遣わした人

デパートで知らない人に声をかけられた。
アメジストのような色の、おしゃれなコートを羽織ったおばあさん。

「ねえ、申し訳ないのだけれど、もしお時間があればタイツを選んでいただけないかしら。私のために」

私はすこし驚いて、とまどいながら、もちろんですと答えた。向こうの方を見やると、手持ち無沙汰で足を交差させ、たたずんでいる店員さんが見えた。

なぜ私に…?、と一瞬考えたのが透けて見えたのか、おばあ

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生きたInformation Architecture

生きたInformation Architecture

昨日は、World IA Day 2018 Tokyoでの「曖昧さと不確実性」というタイトルでの講演だった。はじめて逐次通訳が入る形での講演だったが、話の仕方や時間コントロールがむずかしかった。

イベント自体のテーマが「IAの倫理と哲学」だったので、「情報はそもそも曖昧で不確実なものである」ことを伝えたいとして話をした。
背景としては「常識だと思っていたものが大きく変化する時代」において、「どう

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