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「夕日の国」 短編小説 ファンタジー絵物語
「コトン」と小さな音がして白い封筒がドアの下に落ちた。
「郵便だ。陽子からかな?」
バラの花を描いていた絵筆をおくと、カップに熱いコーヒーをそそぎ、手紙をとりにいった。
ぼくは、美術学校を出て半年の、絵描きのたまごだった。
近所の画材店で絵を売ってもらい、どうにか暮らしはじめたところだった。
まだまだとても、まともに生活していくほどの収入はなかったが、こうして好きな絵を描いてさえいられ
【短編小説】『簪(かんざし)』
こんな空の色にも、立派な名前がついていることを菜津子は知っていた。
三日三晩降りつづいた秋雨がやんだ。やんだはいいが、黄昏の空には象のお腹みたいに硬くて分厚い雲がいっぱいに残っていた。
思い出すのもこんな空模様の夕方のこと。
学校から大急ぎで帰った、当時八歳の菜津子を玄関で迎えてくれたのは祖母だった。
「なっちゃん、おかえり。まあ、傘もささんと!」
「ただいま、おばあちゃん! 雨
毎日超短話485「天使の遅刻」
「羽根はどうした?」
教室に入ってきた先生に言われて、羽根がないことに気が付く。今朝はギリギリの時間に起きたので、あわてて忘れてしまったらしい。
「今日は人間やってこい」
そう言われてしまって、今、歩いている。飛んでばかりだったから、歩いていることが楽しい。
一年前の超短話↓
毎日超短話284「入道雲」
ガチャガチャで入道雲が当たった。
ベランダの植木鉢の上に浮かべる。ときどき雨を降らせてくれたり、雨上がりには虹が出る。雷が鳴るときは、雷様が雲の上に見え隠れ。
秋になったら、うろこ雲を当てたい。
最優秀賞と特別賞を頂きました【文苑堂第1回54字の物語コンテスト】
2022年8月12日から9月30日にかけて開催された、文苑堂書店さん主催の第1回54字の物語コンテスト。
なんとなんと、最優秀賞と特別賞を頂きました!
「賞」をもらったのは、中学と高校の吹奏楽コンクール以来、そして個人としては人生初です。
公募に落ちまくり、一次選考すら突破したことなかった私にとって、初の受賞です。
今までの落選は、きっとこの54字の物語コンテストを受賞するためだったんですね。
Bar「凍った星をグラスに。」#シロクマ文芸部
「凍った星をグラスに。」というBarが、確か、青山一丁目あたりにあって、仕事終わりによく通ったものだ。
そこには、いろんな凍ったものが揃っていて重宝した。
凍った炎に喜び、凍った音楽で耳を癒し、凍った時間に酔いしれ、凍った光に希望を貰った。凍った心も噂ほど悪くはなかった。
一番、勘弁して欲しかったのは凍ったユーモアで、これを味わったとたん、自分だけじゃなく、周囲にいた客の全員が瞬時に凍った。