記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』をみる。

https://twitter.com/Marcel_movie_JP

ディーン・フライシャー・キャンプ監督、話題のデビュー作。

主人公は僅か2.5cmほどの小さな貝・マルセル、ひょんなきっかけから祖母のコニーと共に暮らしている。モダニズム建築の雄マルセル・ブロイヤーにインスパイアを受けているのか、もしくは仏語圏ではポピュラーな男性名であること、あるいは借りぐらしという生活様式などから「ホテル マルセル」を文字っているのではとも解釈できる。冒頭から細やかな遊び心のある1本。

映像作家ディーンとの出会いをきっかけにYouTuberとして生き別れとなった元家主の捜索を始めたのだが祖母の健康状態は日に日に悪化の一途を辿る、それどころか「便乗したい」「バズりたい」といった現代人の欲求との間で板挟みにされたマルセルの心にも少しずつ穴が空いていくのだった。敢えて明言されることはなくとも米における「Shelter-in-Place」観も透けてきた。

真新しいストーリー展開といった風合いは敢えて抑え目に設定されている。むしろ「どこかで見たことのある風景を全く新しい手法で描く」という点において、今年上映されたどの作品でも敵わないほど突出した魅力があった。「実写映画とストップモーションのマッシュアップ」が唸り声を上げた場面といえば、やはりドライブのシーンだと思います。「制作期間7年」の重み。

貝を主人公にした意図。安息の地を求めて、あるいは「住処を変える」ことで描ける成長絵巻だったという含意か。塞ぎ込み過ぎな現代社会、自分の殻に閉じこもりがちでいたコロナ禍の暮らしを振り払うために。あるいは一生心に留めて生きていきなさいねと諭してくれているようにすら感じられた。「開け放った窓」には死生観のメタファーも漂っていて…詳しくは劇場で。

足元にできる、涙の水たまり。コニーは優しくも厳しく孫に語り掛ける時にだけ、彼のことを「マルチェッロ」と呼んだんですよね。細やかな遊び心。オープニングで印象的に映った、窓から差し込む光の先のシューズボックスでさえ大団円のための緻密な伏線として機能している。実に収まりが良い。年甲斐もなく、劇中に3回も泣いてしまいました。素晴らしい映画でした。

<今後の鑑賞候補作品 ※気まぐれに変更有>

『CLOSE/クロース』
『猫と、とうさん』
『劇場版 ほんとにあった!呪いのビデオ100』
『海の夜明けから真昼まで』
『カールじいさんのデート』
『星くずの片隅で』
『17歳は止まらない』
『ファルコン・レイク』
『エリザベート1878』
『アステロイド・シティ』
『コカイン・ベア』
『ほつれる』
『春画先生』
『ダンサー イン Paris』
『アナログ』
『シアター・キャンプ』
『白鍵と黒鍵の間に』
『哀れなるものたち』
『ナポレオン』
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』

※『モダンかアナーキー』の全国公開を熱望しております…予告編最高や‼️


この記事が参加している募集

おすすめ名作映画

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?