Hiro.I

小説書いてます。 velvetdesign8929@gmail.com

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記事一覧

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会3

住み慣れた街、北青山。あらためて歩いてみるといい所だなと思う。普段せせこましく動き回っていると全く気にかけないようなことも新鮮に写る。 なにしろ全く余裕のない生…

Hiro.I
4週間前

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 2

このベンチに座っていてもどうしようもない。何かが変わるわけでも問題が解決するわけでもない。昔読んだ自己啓発本に「迷った時は動いてみろ」と書いてあったのを思い出し…

Hiro.I
1か月前

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 序章

ベンチにてひとり途方に暮れる 銀杏並木が続く道端のベンチに一人で座っていた。 今までの人生、特別にひどいことがあったわけじゃない。いや、あったのかもしれないがな…

Hiro.I
2か月前
2

【短編小説】カーゴ・カルトの罠 ある起業家の哀しい物語

Kは「世界でもトップのIT 起業家になるという夢を持っていた。そして大成功しあらゆるメディアに出演して大金持ちになるといつも口にしていた。 アップル社の前CEOでiPhon…

Hiro.I
4か月前
1

【短編小説】 Here's to Life

若い頃から酒はバーボンのソーダ割が好きだったがここ最近はスコッチをロックで飲んでいる。 バーボンは髭、デニムに皮のブーツが似合う不良的なイメージ、スコッチは細身…

Hiro.I
4か月前
3

【短編小説】 歩道橋にて 過去の彼女に会いに行く旅

11月30日 もう12月になる。一年が経つのは早い、早すぎるんだ。 もう少し月日が経つスピードを緩めてくれないか、と偉大な存在なるものに心からお願いしたい。 そんなKの…

Hiro.I
6か月前
2

【短編小説】見上げればいつの間にか秋の空

失笑恐怖症という病気があるらしいことを最近知った。 緊張や不安、過度なストレスを緩和させるために脳が防衛本能で強制的に笑わせている病気で絶対に笑ってはいけない状…

Hiro.I
7か月前

【短編小説】あなたの明日が青空でありますように。〜再会〜(オー・ヘンリーに捧ぐ)

警官は初めて男から視線を外し少し悲しそうだったが直ぐに真顔になり言った。 「さて、私はそろそろ行きます。その友人がちゃんと来てくれるといいですね。いや、きっと来…

Hiro.I
8か月前
3

【短編小説】 30年後,街角にて。 (オー・ヘンリーに捧ぐ)

その警官は暗い路地裏をゆっくりとパトロールしていた。 警察官になってもう30年にもなるが相変わらず交番勤務で街をパトロールをしていることが多い。 警察官は昇進試験に…

Hiro.I
8か月前
2

【短編小説】偶然(あの選択をしたから (2))

夏が終わるとすぐに寒い冬になる。情緒ある四季にめぐまれている美しいこの国は、最近急を曲がるように季節が変わるようになった。 だがこの日は珍しく良く晴れた日本の秋…

Hiro.I
8か月前
1

【短編小説】エリック・クラプトンやジェフ・ベックになりたかった日(あの選択をしたから (1))

来る日も来る日も暑い暑い日々が続いている。 今年の夏は全く暑過ぎるよ。Kはヘッセの小説にあったセリフを力なく呟いた。2023年夏は史上最も高温になり、過去最高の2010年…

Hiro.I
8か月前
1

【短編小説】ある師匠の哀しみ

SNSを使い始めてもう20年にもなる。 確か2000年ごろのSNSは掲示板やチャットだけのシンプルなものだったが、それでも自分と全く違う世界の人と交流できるのが楽しくて楽し…

Hiro.I
9か月前
3

プロと素人の間にある絶対に埋められないもの。

昔は一般人と芸能人の間には見た目だけとってもその差は歴然としていたが、今の時代はさほど変わりはない。 一般人が綺麗になったということもあるが、あまり差がつくと一…

Hiro.I
10か月前

思い込みのパワーは凄い。
目の前のコーヒーカップなど簡単に消すことができる。この力をうまく使えないだろうか。

Hiro.I
11か月前

<短編小説>恋はいつも記憶の中からやってくる

Kには不思議な癖があった。 いや、誰にでもあることなのかもしれない。 それは現実に起きていないことが記憶の中に鮮明に残るのだ。 今日は海に行き潮風にあたり連れの女と…

Hiro.I
11か月前
5

「デカローグ」《クシシュトフ・キェシロフスキ》

この映画を見たのはもう2年も前になるが深く記憶に残る一生忘れられない映画になった。 誰にも起こり得る日常の出来事、ままならぬ人生。そのひとつひとつが間違いなく珠玉…

Hiro.I
11か月前
3
【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会3

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会3

住み慣れた街、北青山。あらためて歩いてみるといい所だなと思う。普段せせこましく動き回っていると全く気にかけないようなことも新鮮に写る。
なにしろ全く余裕のない生活をしていたからな。クライアントの信頼を損ねないためにかなり無理をして仕事を期日までにやり遂げ、明らかに理不尽と思われる要求も飲んできた。期待されたこと以上の結果を出し、その分のギャラも要求するというスタイルはプロとして当たり前だと思ってき

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【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 2

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 2

このベンチに座っていてもどうしようもない。何かが変わるわけでも問題が解決するわけでもない。昔読んだ自己啓発本に「迷った時は動いてみろ」と書いてあったのを思い出し場所を変えてみようとKは思った。
そういえばその本には「やらずに後悔するより、やって後悔した方がいい」とも書いてあった。だが自死がこの言葉に当てはまるとはどうしても思えない。

「何かを決断をしなければならない時、自己嫌悪の少ない方を選ぶ」

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【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 序章

【短編小説】 ガーディアンエンジェル(守護天使)との再会 序章

ベンチにてひとり途方に暮れる

銀杏並木が続く道端のベンチに一人で座っていた。
今までの人生、特別にひどいことがあったわけじゃない。いや、あったのかもしれないがなんとか生活はできていたし、こうやって今も生きている。
20前に起業した会社も借金は増えたがなんとか金を融資を受けつつビジネスを続けていた。自分で会社をやっているなら誰でも金策の悩みは尽きないものだ。事業を続けていれば常に困難と立ち向かって

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【短編小説】カーゴ・カルトの罠 ある起業家の哀しい物語

【短編小説】カーゴ・カルトの罠 ある起業家の哀しい物語

Kは「世界でもトップのIT 起業家になるという夢を持っていた。そして大成功しあらゆるメディアに出演して大金持ちになるといつも口にしていた。

アップル社の前CEOでiPhoneおよびiPadを世に送り出したスティーブ・ジョブズが彼のお気に入りだった。それ自体全く悪くないお手本だし夢を持つことも大切なことだ。

スティーブ・ジョブズは余計なことを考えるエネルギーを減らすために毎日同じ服を着て、一切の

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【短編小説】 Here's to Life

【短編小説】 Here's to Life

若い頃から酒はバーボンのソーダ割が好きだったがここ最近はスコッチをロックで飲んでいる。
バーボンは髭、デニムに皮のブーツが似合う不良的なイメージ、スコッチは細身のスーツを着てクールに飲む雰囲気、世界観が気に入ってるんだ。
そんなこともこのバーのマスターに教えてもらった。いささか古い映画の受け売りのような気がするが。
一人でゆっくり酒を飲むときはこのバーで、それも日曜の夜と決めている。
煉瓦造りと外

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【短編小説】 歩道橋にて 過去の彼女に会いに行く旅

【短編小説】 歩道橋にて 過去の彼女に会いに行く旅

11月30日

もう12月になる。一年が経つのは早い、早すぎるんだ。
もう少し月日が経つスピードを緩めてくれないか、と偉大な存在なるものに心からお願いしたい。
そんなKの願いが聞き入れられたのかもしれないが、今日は暖かくてまるで小春日和のような天気でいつもより時の経つのがゆっくりのようだ。いや、むしろ時間が少し戻っているような感覚さえあるこんな日は理由もなくいいことが起こる様な気がする。

Kはい

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【短編小説】見上げればいつの間にか秋の空

【短編小説】見上げればいつの間にか秋の空

失笑恐怖症という病気があるらしいことを最近知った。
緊張や不安、過度なストレスを緩和させるために脳が防衛本能で強制的に笑わせている病気で絶対に笑ってはいけない状況で笑ってしまう病気だ。
若い頃、私は場の空気を全く読まない男と言われていて会社の上司が激怒して説教をしている時も大笑いして周囲を唖然とさせたものだった。友人が交通事故に遭った時も、恋人と別れて大泣きしている時も私は大笑いしたものだった。

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【短編小説】あなたの明日が青空でありますように。〜再会〜(オー・ヘンリーに捧ぐ)

【短編小説】あなたの明日が青空でありますように。〜再会〜(オー・ヘンリーに捧ぐ)

警官は初めて男から視線を外し少し悲しそうだったが直ぐに真顔になり言った。
「さて、私はそろそろ行きます。その友人がちゃんと来てくれるといいですね。いや、きっと来てくれるでしょう。もう時間は過ぎていますがもう帰るつもりですか?」
「いや、あと30分は待つよ。いやもっと待つかもしれない。奴に会えるためならいつまでも待つつもりだ。じゃあ、おまわりさん、オレのつまらない話を聞いてくれてありがとう」
「いえ

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【短編小説】 30年後,街角にて。 (オー・ヘンリーに捧ぐ)

【短編小説】 30年後,街角にて。 (オー・ヘンリーに捧ぐ)

その警官は暗い路地裏をゆっくりとパトロールしていた。
警察官になってもう30年にもなるが相変わらず交番勤務で街をパトロールをしていることが多い。
警察官は昇進試験に合格しないと出世できない。早い人は巡査部長を経て、警部補・警部と出世していくのだが、彼はいつまでたっても巡査部長のままだ。
もう一つ上の階級である警部補にはなりたいとは思っているがどうしてもというわけではない。
彼の元来優しすぎる性格は

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【短編小説】偶然(あの選択をしたから (2))

【短編小説】偶然(あの選択をしたから (2))

夏が終わるとすぐに寒い冬になる。情緒ある四季にめぐまれている美しいこの国は、最近急を曲がるように季節が変わるようになった。
だがこの日は珍しく良く晴れた日本の秋晴れらしい日だった。

Kは自分のバンドを解散させた。というか自然にフェイドアウトさせた。
信頼し実力も認めていたドラマーが辞めたという理由もある。
その後いろいろドラマーを見つけセッションしたのだが、これからという時に有名ミュージシャン、

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【短編小説】エリック・クラプトンやジェフ・ベックになりたかった日(あの選択をしたから (1))

【短編小説】エリック・クラプトンやジェフ・ベックになりたかった日(あの選択をしたから (1))

来る日も来る日も暑い暑い日々が続いている。
今年の夏は全く暑過ぎるよ。Kはヘッセの小説にあったセリフを力なく呟いた。2023年夏は史上最も高温になり、過去最高の2010年を上回る見通しらしい。これだけ暑いと外に出る気など完璧になくなるのだが、それでもどうしても外出しなければならない時はその瞬間にうんざりする。暑さで方向感覚を失ったセミが顔にぶつかってきた。歩道を渡ろうと信号待ちしている時に暑さゆえ

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【短編小説】ある師匠の哀しみ

【短編小説】ある師匠の哀しみ

SNSを使い始めてもう20年にもなる。
確か2000年ごろのSNSは掲示板やチャットだけのシンプルなものだったが、それでも自分と全く違う世界の人と交流できるのが楽しくて楽しくて仕方がなかった。
信じられないことだが会社で仕事中にチャットをやったり、朝から晩まで、いや3日ぐらいチャット部屋に入っている奴らがいたものだ。
完全に中毒だったと思うのだが彼らは今どうしてるんだろう。
日本を代表する多国籍コ

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プロと素人の間にある絶対に埋められないもの。

昔は一般人と芸能人の間には見た目だけとってもその差は歴然としていたが、今の時代はさほど変わりはない。
一般人が綺麗になったということもあるが、あまり差がつくと一般受けしないという話を聞いたことがある。
それでもプロならばやはり圧倒的なオーラや雰囲気があって人から憧れられる存在じゃないと人前で何かを表現する資格はないんじゃないだろうか。プロは一般人が叶えられないことを具現化している存在だと思うから。

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思い込みのパワーは凄い。
目の前のコーヒーカップなど簡単に消すことができる。この力をうまく使えないだろうか。

<短編小説>恋はいつも記憶の中からやってくる

<短編小説>恋はいつも記憶の中からやってくる

Kには不思議な癖があった。
いや、誰にでもあることなのかもしれない。
それは現実に起きていないことが記憶の中に鮮明に残るのだ。
今日は海に行き潮風にあたり連れの女と海辺を散歩して帰ってきて、風の心地よさも女との会話の内容もまた女の感触もはっきりと記憶の中に残っているのに、実際はどこにも出かけてなどいない。白日夢でも見ていたのか。
いや今日は一日仕事で外を歩き回っていたから昼寝などする時間はない。

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「デカローグ」《クシシュトフ・キェシロフスキ》

「デカローグ」《クシシュトフ・キェシロフスキ》

この映画を見たのはもう2年も前になるが深く記憶に残る一生忘れられない映画になった。
誰にも起こり得る日常の出来事、ままならぬ人生。そのひとつひとつが間違いなく珠玉のストーリーになる。たとえ絶望に打ちひしがれることがあっても
夢、希望そして愛は確かにあり忘れてはいけないことに気付かされる名画。
何か迷ったことが起きたときに立ち止まって考えるきっかけを与えてくれる映画。