臨 機清
長く愛好してきたジャズに関する文章を綴じました。
文芸に関する評論、エッセイをまとめました。
noteを巡りながら見つけた素晴らしい詩作品をピックアップさせて貰い、このマガジンに纏めております。随時更新いたします。ぜひどうぞ、ご覧になってみて下さい。
「流動」より「兆候 秋」までの十篇。
好きなジャズの作品の記事をピックアップさせて貰い、ここに纏めました。
・明治四十二年九月
詩人丸山薫の詩集「花の芯」(1948年)から、「カロッサとリルケ」を取りあげてみたい。 この詩において丸山は、前半十行でカロッサを、後半五行でリルケを描き、前者を後者…
大地は降り積もる灰に覆われ 核を失くした作物が畸型の芽を吹く 時を経ずして腐爛し始め 焼けただれた土塊の上に崩れ落ちる その庭園は 地上のどの地図にも載っていない …
「森の奥」 ジュール・シュペルヴィエル ・今回の記事では、詩人丸山薫の随筆「シュペルヴィエルの詩」(現代詩文庫1036「丸山薫詩集」思潮社)に引用された箇所から取った…
道々に並ぶ葉が暗緑の網となり 崩れかけた紅の花の輪を包む 鳩は 何時も 思いもかけぬ所に降りて佇む 季節が次第に消えてゆく 風が境界を越えて流れてゆく 秋の川の表面…
・明治三十六年十一月
秋酣なり 秋の感 粛殺の秋 ・「秋酣なり」 明治三十八年十一月 「秋の感」 明治三十九年十一月 「粛殺の秋」 明治四十二年十一月 ・全て原文ママ ルビも原文に則って記…
宿命のように旋律を否んだから 体に傷を受けて飛ぶ鳥 しいられた全ての歌に背をむけて 降りやまぬ雨が 街を区切って貫く太い川をどこまでも 青く 青く 沈めてゆく 大地…
その白い手に触れるには余りに遠い 雨が開かない扉となって立ち塞ぐ 窓を打つ滴さえ 挑むように 愛しいはずの猫の鳴き声も虚しく 室を灯す一台のランプに油をさす 少年の…
彼女の瞳は遥かな記憶を喚び醒ます 青く暗い輝きを湛えた池 不毛の土地を百合の生命で照らし 風が辿り着く場所までその葉を運ぶ 伝説の高貴な女王が 民にかけた 解けない…
闇を次第に深めてゆく 一つの時代 ひとつの季節に 渦巻く怒号 暗い音響を彼方に聞く 透明とは 死の謂ではない 遠い記憶の内側にだけ息づいている 一輪の淡い花の輪郭 …
原文ママ。ルビも原文に則って表記。 但し、六行目の「逍遥」は原文では“遥”が行人偏に羊にあたる漢字(さまよう、の意)だが手元の「角川必携漢和辞典」(角川書店)でも載…
黄金を湛えた川縁の道 夕刻 暑気と湿気の強い残り香が漂い 午睡のような秋の静寂のなか 何処までも風を澄ませてゆく 影となって反映する記憶 水 揺れる緋の花々 車道の…
2024年3月7日 17:39
2024年3月6日 17:24
詩人丸山薫の詩集「花の芯」(1948年)から、「カロッサとリルケ」を取りあげてみたい。この詩において丸山は、前半十行でカロッサを、後半五行でリルケを描き、前者を後者と対照させている。要点はリルケにある。丸山が浮かび上がらせたのは「瞳」だった。リルケの瞳は「いつも蒼く澄んでゐて 形象をふかく吸ひつくし しかも何物の投影も宿さなかつた」。「カロッサとリルケ」の描出で面白いのは、前半部におい
2023年11月6日 06:57
大地は降り積もる灰に覆われ核を失くした作物が畸型の芽を吹く時を経ずして腐爛し始め焼けただれた土塊の上に崩れ落ちるその庭園は地上のどの地図にも載っていない誰の手によって守られたのだろう知識と配慮と慎重さをもってそれはまた偉大な存在の意思であったか園内に降り注ぐのは水晶の陽光一面の畑が青く染まる透き通る細い指には強度があり如何なる地上の闇もそれに触れられない熟練の小さ
2023年10月28日 07:48
「森の奥」 ジュール・シュペルヴィエル・今回の記事では、詩人丸山薫の随筆「シュペルヴィエルの詩」(現代詩文庫1036「丸山薫詩集」思潮社)に引用された箇所から取った。・丸山薫はそこで「シュペルヴィエルの詩はヴァレリーやリルケやコクトーの詩ほどに日本では有名でなく、関心ももたれていない。本国フランスでもたぶん似たりよったりだろう。だが私にはいちばん好きな詩人である。」と書いている。※私
2023年10月25日 06:55
私は今年多くの樹に触れてきた。樹の生命を思う。いまリルケ「世界内面空間」をよく読み返す。鳥と樹は互いに深く結びついた存在だ。両者はある点で、分かちがたい。樹と鳥と、そして人と。人はこれらを感じ、観察するが、破壊もしている。鳥は、樹の存在性を私(達)より遥かに分かっているはずだ。
2023年10月22日 07:16
道々に並ぶ葉が暗緑の網となり崩れかけた紅の花の輪を包む鳩は 何時も思いもかけぬ所に降りて佇む季節が次第に消えてゆく風が境界を越えて流れてゆく秋の川の表面を群青に染めぬき澄みわたる日没の空が一刻輝くこれらの静寂の内には小さな足音が隠れている崩壊を報せるように微かに水量を増す川底に汚泥が積もり群れ交う鳥の影が葦原に浮かぶ訪れる夜の前には青が水際立つ
2023年10月18日 11:47
今朝に投稿しました(ソネット)「市街地から」につきまして、幾つか思うところがあり今回ここで掲載を取り下げます。同様のテーマで再度詩作する可能性はあります。この間読んで下さいました皆様、有難うございました。
2023年10月16日 07:07
2023年10月14日 08:21
秋酣なり秋の感粛殺の秋・「秋酣なり」 明治三十八年十一月「秋の感」 明治三十九年十一月「粛殺の秋」 明治四十二年十一月・全て原文ママ ルビも原文に則って記入・「内村鑑三所感集」(岩波文庫)は現在(本記事投稿時点で)出版社品切れ
2023年10月12日 07:40
宿命のように旋律を否んだから体に傷を受けて飛ぶ鳥しいられた全ての歌に背をむけて降りやまぬ雨が街を区切って貫く太い川をどこまでも青く 青く 沈めてゆく大地はもう黒く焼けただれているただあの青い川を道しるべにして飛ぼう取り戻せない空夜明けに向かって伸びる細い枝を眺めて呟き 喘ぎながら鳥 鳥 うたをうばわれた鳥きみのなかに宿るうたは今もまだ眠ったまま傷ある鳥の翼は で
2023年10月7日 07:28
昏き季節を照らしだす灯りは青く収めた翼のなかに守り続けた記憶をいまこそ 風の手に渡してhttps://youtu.be/DwAMm3kevQE?si=Uk4KLNtWu2nHiGES
2023年10月5日 06:47
その白い手に触れるには余りに遠い雨が開かない扉となって立ち塞ぐ窓を打つ滴さえ 挑むように愛しいはずの猫の鳴き声も虚しく室を灯す一台のランプに油をさす少年の日から続けていること彼がいつか鍵を外す時までのはてしない坑道を照らす小さな火あなたの青い瞳は何処までも隠れ彼の想いを先に読み取ってゆくいやそれもランプに光る鏡の投影水のような息吹きで澄んだ夜は綴った言葉が薄い香りに消
2023年9月30日 06:29
彼女の瞳は遥かな記憶を喚び醒ます青く暗い輝きを湛えた池不毛の土地を百合の生命で照らし風が辿り着く場所までその葉を運ぶ伝説の高貴な女王が 民にかけた解けない謎のような言葉の数々はあなたの水面に何を結んだのかいや何を描かなかったか彼女の隠れた眼差しの輪に私は自分の古い傷痕を浸してみる泉はやがて五月の香気で溢れ始める猫のように俊敏で氷のように冷厳なあなたの鏡の淵に立ち尽く
2023年9月25日 06:16
闇を次第に深めてゆく一つの時代 ひとつの季節に渦巻く怒号 暗い音響を彼方に聞く透明とは 死の謂ではない遠い記憶の内側にだけ息づいている一輪の淡い花の輪郭横たわる川に その冷えきった水に誰が灯を落とすのだろう純粋なままに 静かに燃える灯を季節の境界の谷底を腐臭が包み道を失くした膨大な影が蠢いている闇が光に照らされてからは
2023年9月21日 13:32
原文ママ。ルビも原文に則って表記。但し、六行目の「逍遥」は原文では“遥”が行人偏に羊にあたる漢字(さまよう、の意)だが手元の「角川必携漢和辞典」(角川書店)でも載らないため文脈から「逍遥」に替えた。
2023年9月19日 07:23
黄金を湛えた川縁の道 夕刻暑気と湿気の強い残り香が漂い午睡のような秋の静寂のなか何処までも風を澄ませてゆく影となって反映する記憶水 揺れる緋の花々 車道の音響思い思いに通行する人々全てがひとつの諧調で束ねられるこれらの事象はやがてまた調和を崩してゆく喪失された美と均衡をだが 開かれた秋の扉の奥処から吹きつけてくる 黄金の風がこの一刻を 永遠に染める