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政治史/ジェンダー論あたり

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  • 大雑把さんのための世界史

    ざっくりした世界史の解説を書いて並べています。 初学者にも、学び直しにも、そして教科書のサイドストーリーにもぜひどうぞ。

  • 読書感想文

    日々読んだ本の足跡を、ぽろぽろと残します

記事一覧

万福の雨だれ

あまりに長く、旅を続けすぎた。 旅は非日常というが、それが日常になってしまえば、以前は心踊ったであろう景色や出会いに対する心の揺れが「いつものやつ」になってしま…

3

「雄安新区」についての記録と考察

これは、中国語のまったく話せない大学生が、同じく中国語のできない友人3人とともに、中国の国家経済新区を冒険した、という旅行記である。 2017年4月、中国の習近平政権…

8

2019年7月第3週について

人類が目にするニュースの多さは、加速度的に増えている。よっ、IT時代。たぶん縄文時代の人間が3年くらいかけて触れた情報と、この1ヶ月で日本人が触れたニュースは同じぐ…

6

フェミニストを休業すると決めた夏の話

#metoo が日本で一時的にブームになるより前から、わたしはフェミニストを名乗っていた。当時はそんなにフェミニストだからといって目くじらを立てられることもなかったと…

7

Speachless

実写版アラジンの感想をつらつらと。 前評判があまりによかったのでワクワクで映画館へ向かい、そしてその通りに、Will Smithと Naomi Scottの演技に拍手をした。しかし、…

4

拝啓、ViVi編集部様〜ファッションとポピュリズム への考察〜

最近めっきり怒ることが減った。 エネルギーが勿体ない、別に怒っても意味がない、それぞれの正義がある、おおかたそんな理由だ。 だけど、久しぶりに怒り、という感情をも…

3

少子化で、何が悪い

「少子化にならないために、お子さんやお孫さんに子供を3人以上生むようにお願いしていただきたい」なんて、政治家のお爺さんはなんでそんなこと言えるんだろう、とニュー…

15

恋愛中毒

山本文緒「恋愛中毒」 20年前のベストセラー、という言葉に惹かれて手に取った本だった。2019年を生きるわたしだけど、1000年前に書かれた枕草子や伊勢物語に「せやなぁ」…

5

傷つけること

感傷的な夜にかきとめたメモ。 傷つけることはこわい、というのが幼い頃からの感覚だ。物理の授業で、「モノは別のモノを押すと同時に押されています」と習ってなるほどと…

5

成長に慣れた平成人へ

平成という時代について特に考えたことはない。 第一に、わたしはそもそも平成しか生きたことがない。第二に、時代の区切りなんて人工的に引かれた境界でしかなく、日々の…

1

経歴詐称、についての考察

経歴詐称が話題だ。まぁこのネット社会でその経歴詐称ができたのはすごい、みたいな感嘆。彼の実績を買っていた人の失望。彼を信奉していた人たちの現実逃避。そんないろい…

4

がんばりへの考察

東大の入学式で上野千鶴子さんが送った祝辞が最高すぎた。 昨年度の受験界隈最大のニュースだった医学部入試不正問題にはじまり、ジェンダーギャップの現状を指摘し、それ…

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女子が賢くあるということ

賢くあるということ① 女にとって、賢いことはいいことなのだろうか。 女は、どのようにあれば、幸せになれるのだろうか。 そんなことを考えるようになったのはいつからだ…

7

万福の雨だれ

あまりに長く、旅を続けすぎた。
旅は非日常というが、それが日常になってしまえば、以前は心踊ったであろう景色や出会いに対する心の揺れが「いつものやつ」になってしまう。
ここ最近のわたしはいつも、そんな渇いた心のやり場がなくて、その渇きを誰のせいにもできなくて、ゆらゆらと日常としての旅を彷徨っていた。

雨は旅には似合わない。そう思っているので、今日は普段よりも気が滅入る朝を迎えた。
何をしようか、ど

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「雄安新区」についての記録と考察

「雄安新区」についての記録と考察

これは、中国語のまったく話せない大学生が、同じく中国語のできない友人3人とともに、中国の国家経済新区を冒険した、という旅行記である。

2017年4月、中国の習近平政権は、「北京から100キロ圏に河北経済圏をつくる!そこを『雄安新区』と名付け、千年に一度の国家プロジェクトとし、自由貿易試験区をつくり、深セン、浦東に続く中国経済の中枢とする!ウンヌン…」と発表した(当時のわたしはそんなことなど知りも

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2019年7月第3週について

人類が目にするニュースの多さは、加速度的に増えている。よっ、IT時代。たぶん縄文時代の人間が3年くらいかけて触れた情報と、この1ヶ月で日本人が触れたニュースは同じぐらいの量なんじゃないだろうか。知らんけど。

2019年7月第3週。日本列島をあまりに多くのニュースが駆け巡った。その多くは遥か後方へと流れ去っていき、緩やかに忘却されてゆく。

7/18 京都アニメーション放火事件
7/20 イラン、

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フェミニストを休業すると決めた夏の話

フェミニストを休業すると決めた夏の話

#metoo が日本で一時的にブームになるより前から、わたしはフェミニストを名乗っていた。当時はそんなにフェミニストだからといって目くじらを立てられることもなかったと思う。わたしはフェミニストTシャツ、というGUが売り出したキャッチーなTシャツを着て、フェミニストたるもの何を目指すか、なんて文章をInstagramにつらつらと書いたりしていた。もうおよそ、2年前の夏のことだ。

"yep,I'm

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Speachless

Speachless

実写版アラジンの感想をつらつらと。
前評判があまりによかったのでワクワクで映画館へ向かい、そしてその通りに、Will Smithと Naomi Scottの演技に拍手をした。しかし、映画を観終わって3日、フツフツとモヤモヤが沸いてきたのである。

①厳密なフェミニズム、ではない

一部で言われている「アラジンはフェミニズムの話だったァ!!!!」という感想には、疑問が残る。それはたぶんある種の曲解だ

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拝啓、ViVi編集部様〜ファッションとポピュリズム への考察〜

拝啓、ViVi編集部様〜ファッションとポピュリズム への考察〜

最近めっきり怒ることが減った。
エネルギーが勿体ない、別に怒っても意味がない、それぞれの正義がある、おおかたそんな理由だ。
だけど、久しぶりに怒り、という感情をもった。
こんなTweetがタイムラインに流れてきて、「何言ってんだ」という気持ちがふつふつと沸いてきた。

わたしはおおよそ、2014年〜2017年頃にかけて、この赤文字系雑誌ViViの愛読者のひとりだった。毎月の企画を楽しみにして発売日

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少子化で、何が悪い

少子化で、何が悪い

「少子化にならないために、お子さんやお孫さんに子供を3人以上生むようにお願いしていただきたい」なんて、政治家のお爺さんはなんでそんなこと言えるんだろう、とニュースサイトを見てぼんやりと思った。

なんでだよ、子供を何人もうけるか、なんて自分で決めるよ。近代人権意識はないのかよ。
それに、産みたくたって産める身体なのか、産める経済状況なのかなんてわかんねえよ。こちとらもう何年も生理不順でしんどい思い

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恋愛中毒

恋愛中毒

山本文緒「恋愛中毒」

20年前のベストセラー、という言葉に惹かれて手に取った本だった。2019年を生きるわたしだけど、1000年前に書かれた枕草子や伊勢物語に「せやなぁ」なんて思うくらいなのだ、20年前の価値観も、特に人を好きになることについては大差ないはずだと、やっぱりわたしたちは人を好きになってしまうのだと思いたくて手に取った本だった。きっとわたしの両親や、あるいはわたしにドヤ顔で愛の講釈を

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傷つけること

感傷的な夜にかきとめたメモ。

傷つけることはこわい、というのが幼い頃からの感覚だ。物理の授業で、「モノは別のモノを押すと同時に押されています」と習ってなるほどと思った。傷つけるべく殴った者には、殴られたものと同じだけの痛みが伴う。その感覚だけは昔から研ぎ澄まされていたと思う。

言葉で人を傷つけたとき、「あ、いま傷つけちゃったな絶対」という気持ちで胸が締め付けられるような感覚に襲われる。幼い頃に

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成長に慣れた平成人へ

平成という時代について特に考えたことはない。
第一に、わたしはそもそも平成しか生きたことがない。第二に、時代の区切りなんて人工的に引かれた境界でしかなく、日々の流れの中ではたいした意味のないものだと思っている。平成最後の、あるいは令和最初の、なんて枕詞はなにも意味をもたず、昨日のあとに今日があり、きっとそのあとに明日がある、その時間の流れに身を任せて、ただ日々を越えてゆくだけそれでいいと思っている

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経歴詐称、についての考察

経歴詐称が話題だ。まぁこのネット社会でその経歴詐称ができたのはすごい、みたいな感嘆。彼の実績を買っていた人の失望。彼を信奉していた人たちの現実逃避。そんないろいろが渦巻いている。まぁ何にせよ、その中心にあるのは好奇心だ。切り口を変えると野次馬根性。かくいうわたしもその1人だ。

数時間かけて、意識高い系界隈の死、について考えた。わたしが近づかず離れなかった「界隈」が動揺しているのを見て、なんとあっ

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がんばりへの考察

東大の入学式で上野千鶴子さんが送った祝辞が最高すぎた。
昨年度の受験界隈最大のニュースだった医学部入試不正問題にはじまり、ジェンダーギャップの現状を指摘し、それを東大に落としこみ、この格差社会に言及する。その上で、東大新入生に東京大学の素晴らしさと学んでほしいことを伝える。

その中でもこの一節が、あとあと全文を読んだだけにすぎないわたしでさえ身震いしてしまうようなすてきな一節だった。

‘’そし

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女子が賢くあるということ

賢くあるということ①

女にとって、賢いことはいいことなのだろうか。
女は、どのようにあれば、幸せになれるのだろうか。
そんなことを考えるようになったのはいつからだろう。

昔は女の子でよかったと思うことの方が多かった気がする。
ピンクのフリフリも、白のもこもこ、黒のキラキラ、全部好きだった。ピアノもバレエもやっててよかった、と思ったし、髪を伸ばしておさげにできるのは自分たちの特権だと思っていた。

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