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いわゆる読書感想文(一般書)

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「先生と付喪神たちのおしゃべりが楽しい~『芦屋山手 お道具迎賓館』~」

「先生と付喪神たちのおしゃべりが楽しい~『芦屋山手 お道具迎賓館』~」

『芦屋山手 お道具迎賓館』 高殿 円  著 (淡交社)
2024.3.22読了

タイトルだけではいったいどのような内容の本なのか、わかる方はあまりいらっしゃらないでしょう。
もちろん私もさっぱり予想がつき

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「近代画の巨匠を知るなら、その周辺の人物を追え!~『ジヴェルニーの食卓』~」

「近代画の巨匠を知るなら、その周辺の人物を追え!~『ジヴェルニーの食卓』~」

『ジヴェルニーの食卓』 原田マハ 著 (集英社文庫)
                           2024.3.9読了

私、原田マハさんの本で読了済みは数冊しかありません。
『楽園のカンヴァス』『生きるぼくら』『総理の夫』は読んでいましたので、今回のこの本は彼女の作品の4冊目ということになります。

いずれもその内容はそれぞれ分野が全く違っていて(農業と家族の話と、文字通り政治と政治

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「ジェンダーな内容に新しさを感じる古典~『とりかえばや物語』~」

「ジェンダーな内容に新しさを感じる古典~『とりかえばや物語』~」

『とりかえばや物語』 田辺聖子 著 (文春文庫)
                           2019/08/28読了

NHKの大河ドラマですでに始まっている『光る君へ』は紫式部とその生涯を描き、とても興味があるので期待して観ております。
本人の詳しい人物像、いつ頃生まれたのか、本名は何なのかなどはもとより私生活についてもほとんどわかっていないからほぼフィクションではありますが、だか

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「どこにでもある商店街で繰り広げられる日常・非日常~『エレジーは流れない』~」

「どこにでもある商店街で繰り広げられる日常・非日常~『エレジーは流れない』~」

                          2021.9.30読了
三浦しをん 著 (双葉社)

とある温泉のある町の商店街に住む高校生の主人公は、あまり繁盛しているとは言えない土産物屋を営む母親と二人で暮らしています。
彼にはしかし、もう一人母親と呼べる人物がいて、その母親が住む高台の豪華な邸宅に月の第三週目に寝泊まりするという習慣を、幼い時から特に疑問も持たずに続けていました。

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「農業の原型を知って生きる意味を知る~『生きるぼくら』~」

「農業の原型を知って生きる意味を知る~『生きるぼくら』~」

             原田マハ 著 (徳間書店) 2013.01.11読了

ある書評を読んで、とても気になって読んでみた本です。
そしてやはり読んでとてもよかったです!

今の日本で問題になっているあれやこれやを一冊に凝縮したというか、よくぞできたというか、さすがだなって思いました。

いじめにはじまり、離婚、引きこもり、母子家庭、独居老人、介護問題、就農者減少、離村、就活問題、認知症

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「自分の中の闇は何かを変えたいと願っているか~『よるのばけもの』~」

「自分の中の闇は何かを変えたいと願っているか~『よるのばけもの』~」

『よるのばけもの』 住野 よる 著 (双葉社)     2017.1読了                      

またまた他サイトのレビューでも書いている人がいましたが、とにかくこの著者の書くものは全て、確かな説明が不足しているように感じます。
同じことを思っている人が少なからずいたことに、内心ほっとしてもいます。

いずれにしても、それは良くも悪くも、この著者の一番の特徴なのかもしれま

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「ひんやりとした空気が本の全体をまとう~『森のノート』~」

「ひんやりとした空気が本の全体をまとう~『森のノート』~」

『森のノート』 酒井 駒子 著 (筑摩書房)   2017.12読了

酒井駒子さんの独特の絵が大好きで著作が出ると、ついつい手に取ってしまいます。
子どもを中心に描かれていることが多いのですが、表情がすごくいいのです。
また絵のタッチもすごく好きです。
それまで多くの絵本での作品を見てきましたが、まずはその中の絵の表現を見とめるのが常です。

こちらはエッセイ本ではありますが、いつもの駒子さ

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「求む!国のために働く真のリーダー~『会津武士道 侍たちは何のために生きたのか』~」

「求む!国のために働く真のリーダー~『会津武士道 侍たちは何のために生きたのか』~」

『会津武士道 侍たちは何のために生きたのか』 中村彰彦 著 (PHP研究所)  2013.6読了

かつて放送されていたNHKの「BS歴史館」という番組で紹介された会津藩の初代藩主、保科正之のリーダーとしての人格や資質に惹かれ読んで

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「あの有名な芥川賞作品だが、さらに声援を送りたい~『火花』~」

「あの有名な芥川賞作品だが、さらに声援を送りたい~『火花』~」

『火花』 又吉 直樹 著 (文藝春秋)       2016.3読了

図書館予約した本がやっと回ってきました。実に、7ヶ月待ちです@@(あくまでも2016年3月時点でのはなしです)

すでにたくさんのレビューが存在しますが、とりあえず私なりに書いてみようと思います。


お笑い芸人を目指す徳永。ある花火大会の余興で、ひとりの漫才師と運命的な出会いをします。
徳永にとっては、

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「この作者の意図がよく読み取れない私の読解力が試されている?~『また、同じ夢を見ていた』~」

「この作者の意図がよく読み取れない私の読解力が試されている?~『また、同じ夢を見ていた』~」

『また、同じ夢を見ていた』 住野 よる 著 (双葉社)          2016.3読了

私が作者の前作『君の膵臓をたべたい』を読んだということで、同僚から「これ、読まないんですか?」と言われ「あ、じゃあ、は

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「曲作りにもそのセンスが光る、女性ならではの視点に感服~『ねじねじ録』~」

「曲作りにもそのセンスが光る、女性ならではの視点に感服~『ねじねじ録』~」

『ねじねじ録』 藤崎彩織 著 (水鈴社)       2021.8読了

私の大好きなバンド「SEKAI NO OWARI」の唯一の女性メンバー、Saoriちゃんのエッセイ集です。
デビューして音楽活動を続けそして結婚・出産した後も、常にふとしたある瞬間に頭にひらめくいろいろな思考を、彼女ならではの視点で表現されています。

子どもの頃の忘れられない思い出や事件、事故。
今現在において、女性な

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「あなたはその正義の違和感を見抜けるか?~『闇祓』~」

「あなたはその正義の違和感を見抜けるか?~『闇祓』~」

『闇祓』 辻村 深月 著 (KADOKAWA)       2021.12読了

表紙とタイトルを見て、なにやら不穏な感じを抱いたが、それは正解だったのかも。
人間誰もが持つ正義の、そのもろさと危うさがえぐり出された本作。
私のニガテなミステリー・ホラーではあるが、作者の上手さなのか、ページをめくる手が止まらなかった。


学校、ママ友グループ、会社、部活、SNS…様々な人間関係の中に、ゆっく

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「過去と現在を結ぶ手紙は彼女を救えるか?~『大正浪漫』~」

「過去と現在を結ぶ手紙は彼女を救えるか?~『大正浪漫』~」

『大正浪漫』 NATSUMI  著 ( 双葉社)       2021.11読了

ご存じ、小説の世界を音楽にする人気アーティストユニット・YOASOBIの曲とともに発表された原作小説。
この世界観が映像化もされていて、動画サイトYouTubeでも公開されています。

私は原作の方を先に読んで動画を観たのですが、とても美しい映像で表紙絵の主人公ふたりがそのまま画面に出てきて物語の中に引き込まれ

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「物語の最後が恐怖で縮み上がりそうになる~『出版禁止』~」

「物語の最後が恐怖で縮み上がりそうになる~『出版禁止』~」

『出版禁止』長江俊和 著 (新潮社) 2015.1読了

本書はミステリーホラーです。
あまり好きなジャンルではありませんが、意を決して読んでみました。

あるルポライターが、以前おこった心中事件で生き残った女性にインタビューし、その真相をふたたび取材するという企画で、雑誌に記事として載せることになった。
これまでなかなかイン

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