中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャ…

中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャーデザイナー 「自分自身とつながる」「自然とつながる」「社会とつながる」 の3つをテーマにした講座を全国で開催 現代農業 2022年から定期的に「自然農」について寄稿 漫画「ザッケン!」監修

記事一覧

夏の気候 五月雨と夕立と彩り

<夏の気候 五月雨と夕立と彩り> 春の終わりと夏の始まりを告げる鐘がなる。 それが春の嵐、またの名をメイストリームと呼ぶ。これは日本だけがそう呼んでいる。 ちょう…

ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか

<ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか> 農家にとって、春は一年で一番忙しい季節だろう。 田舎でのんびり農をして暮らそうと移住してきた人は誰もが春の忙しさに…

畑ノートには畑の神様が宿る

<畑の哲学>畑ノートには畑の神様が宿る 失敗を糧にする畑ノート 初心者向けのワークショップというのは基本的に成功体験をしてもらう会で、失敗を徹底的に避けてしまう…

あなたの暮らしの中心には何がありますか?

<あなたの暮らしの中心には何がありますか?> 「5月は田植えがあるから納品は8月ね」 昔、木工の鑿を注文するときに、そう言われたことがある。 そのとき、なんだか分か…

端午の節句と生命の力

<季節行事の農的暮らしと文化 5月 端午の節句と生命の力> 端午の節句といえば、全国で見られる鯉のぼりだろう。 それも地域の河川にロープを張り、何十匹ものカラフル…

味をしめた舌と記憶

<観察の極意と感性> 味をしめた舌と記憶 今年も雑草を堪能しながら畑仕事をしている。 仕事の合間のひと休憩のたびに足元に生えている雑草を口に運ぶ。 自然農の畑には…

<季節を知らせる花と日本人~夏~>

<季節を知らせる花と日本人~夏~> フジの花が咲く頃、旧暦では夏を迎える。 フジはマメ科のツル性植物で樹木の幹に絡みついて、 高いところに鮮やかな青紫色の花を咲か…

<5月の生き物 ツバメ>

<5月の生き物 ツバメ> ゴールデンウィークの日本の風景といえば、 田舎出身の都会人が家族揃って、生まれ故郷へ帰るために 荷物をたくさん抱えて、列をなして新幹線や…

<畑の哲学>諦めても、自然は終わらない

<畑の哲学>諦めても、自然は終わらない 「諦めたら、そこで試合終了ですよ」というのはおそらく誰もが知っている名言だろう。 もちろんスラムダンクは好きだし、ファン…

<定植の作法>

<定植の作法> いよいよ定植のタイミングが近づいてきたとしても、焦りは禁物だ。野良仕事には季節のタイミングがあるように、野菜たちもまた最適なタイミングで畑に移し…

<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>

<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン> 狭い面積で多種多様な植物を栽培する家庭菜園では、コンパニオンプランツを活用して畝の上を全て野菜やハーブだけにする方法…

多機能性がパーマカルチャー 緑肥

<多機能性がパーマカルチャー 緑肥> 「自然農を理解しているかどうかは通路を見れば分かる!」 主に緑肥はイネ科とマメ科の植物を利用するわけだが、通路にはイネ科植…

間を大切にする自然農 緑肥

<間を大切にする自然農 緑肥> 「土を裸にしない」これは自然農を実践する上で重要な教えのひとつである。多くの人はこの教えの通りに、畝の上を草マルチやワラマルチで…

<多重空間を最大限に活用する 支柱のデザイン>

<多重空間を最大限に活用する 支柱のデザイン> 自然農といえども、原産地ではない風土で育てるということは「不自然」のように思えるかもしれない。しかし農という営み…

耕すはテクニックだ

<耕すはテクニックだ> え?自然農なのに耕すんですか?とよく聞かれる。最近では土壌を耕すと生態系を破壊すると批判される。しかし考えてみてほしい。人類が農耕を始め…

モンスーン・サバンナ文化とスリーシスターズ

<モンスーン・サバンナ文化とスリーシスターズ> ホモ・サピエンスが森林から旅立つと森林の周縁にはサバンナが広がっていた。地球の寒冷化にともなって森林は縮小し、代…

夏の気候 五月雨と夕立と彩り

夏の気候 五月雨と夕立と彩り

<夏の気候 五月雨と夕立と彩り>

春の終わりと夏の始まりを告げる鐘がなる。
それが春の嵐、またの名をメイストリームと呼ぶ。これは日本だけがそう呼んでいる。
ちょうどゴールデンウィークが始まる4月の終わりから5月の上旬ごろに、強い風と強い雨が日本列島を襲う。
山間部や北日本では時に雪や霜が降りることもあるくらい冷え込むことがあるため、寒がりの人は炬燵をしまわなくて良かったと思うことだろう。農家はこ

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ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか

ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか

<ゆっくり急げ 日本人はどうして勤勉なのか>

農家にとって、春は一年で一番忙しい季節だろう。
田舎でのんびり農をして暮らそうと移住してきた人は誰もが春の忙しさに驚いているはずだ。春の長閑な風景は初春のみである。

畑作業の多さもその一因だが、この季節ならではの山菜の収穫も欠かせない。山菜はタイミングを逃すと味も食感も落ちる。
すぐに調理をする必要もあるし、アク抜きなどの作業も多いし、多くを保存食

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畑ノートには畑の神様が宿る

畑ノートには畑の神様が宿る

<畑の哲学>畑ノートには畑の神様が宿る 失敗を糧にする畑ノート

初心者向けのワークショップというのは基本的に成功体験をしてもらう会で、失敗を徹底的に避けてしまう。だからどうしてもイモ掘り体験会のようなスタイルになってしまう。

しかし、誰かにお膳立てされた成功体験を繰り返し続けても初心者は決して中級者にはなれない。失敗から学ぶことができて初めて中級者の道が開く。

失敗から学ぶことができれば、中

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あなたの暮らしの中心には何がありますか?

あなたの暮らしの中心には何がありますか?

<あなたの暮らしの中心には何がありますか?>
「5月は田植えがあるから納品は8月ね」
昔、木工の鑿を注文するときに、そう言われたことがある。
そのとき、なんだか分からないけど『かっこいい』と思った。

パーマカルチャーとは「永続可能な農的暮らしと文化」と日本では紹介されている。
だけど、この訳はなんだかしっくり来ないw

さて、畑を教える立場になってみて
パーマカルチャーをやるにしても自然農をやる

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端午の節句と生命の力

端午の節句と生命の力

<季節行事の農的暮らしと文化 5月 端午の節句と生命の力>

端午の節句といえば、全国で見られる鯉のぼりだろう。
それも地域の河川にロープを張り、何十匹ものカラフルな鯉が青空のもとはためく姿が力強い。
鯉のぼりを掲げる歴史は意外と浅く、はじまりは江戸時代の武士の間で立身出世を願ったものだった。河川に掲げるようになったのは1979年の熊本県杖立温泉がはじめだったようだ。青空だけではなく湯けむりつきで

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味をしめた舌と記憶

味をしめた舌と記憶

<観察の極意と感性> 味をしめた舌と記憶

今年も雑草を堪能しながら畑仕事をしている。
仕事の合間のひと休憩のたびに足元に生えている雑草を口に運ぶ。
自然農の畑には食べられる雑草がたくさんある。
だからこの時期は、毎日のように食卓には雑草料理が並ぶし、空いている時間を利用して野草で作るお茶や医薬品など作ることが多い。

あなたは雑草の味が変わっていくことに気がついているだろうか?
雑草は季節が進む

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<季節を知らせる花と日本人~夏~>

<季節を知らせる花と日本人~夏~>

<季節を知らせる花と日本人~夏~>
フジの花が咲く頃、旧暦では夏を迎える。
フジはマメ科のツル性植物で樹木の幹に絡みついて、
高いところに鮮やかな青紫色の花を咲かせる。

このツルはさまざまな民具に加工されてきた。
昔からクズと同様にカゴなどに身近なモノとして
農家の女性は冬の間に編んで、利用してきた。

木や竹で組み立てたパーゴラにフジを絡ませた
ちょっとした休憩所は全国でも見られる。
夏の日差

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<5月の生き物 ツバメ>

<5月の生き物 ツバメ>

<5月の生き物 ツバメ>
ゴールデンウィークの日本の風景といえば、
田舎出身の都会人が家族揃って、生まれ故郷へ帰るために
荷物をたくさん抱えて、列をなして新幹線や車に乗りこむ姿だろうか。
JRバス(国鉄バス)のシンボルマークはツバメだ・

そして、一時的に人口が増えた里山では
これまた一家総出で田植えが行われるのが日本の風景でもある。

賑やかになった古民家の軒下には必ずツバメが巣を作り、
親ツバ

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<畑の哲学>諦めても、自然は終わらない

<畑の哲学>諦めても、自然は終わらない

<畑の哲学>諦めても、自然は終わらない

「諦めたら、そこで試合終了ですよ」というのはおそらく誰もが知っている名言だろう。
もちろんスラムダンクは好きだし、ファンの一人であることは先に断言しておいきたい。

でも実際のところは諦めても試合は終わらない。
実際に試合中に「諦めました!」と審判に伝えても、審判は試合終了のホイッスルを吹いてくれない。
どんなに点差が開いていても、制限時間に達するかルール

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<定植の作法>

<定植の作法>

<定植の作法>

いよいよ定植のタイミングが近づいてきたとしても、焦りは禁物だ。野良仕事には季節のタイミングがあるように、野菜たちもまた最適なタイミングで畑に移してあげたい。

天気予報を細かくチェックしながら、1週間くらい前から温床のビニールを外して外気にしっかり触れさせておこう。また夏野菜は低温障害に合わないように最低気温に配慮したい。イネ科ウリ科は最低気温が10度以上、ナス科は15度以上が理

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<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>

<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>

<大地を最大限に活用する 根圏のデザイン>

狭い面積で多種多様な植物を栽培する家庭菜園では、コンパニオンプランツを活用して畝の上を全て野菜やハーブだけにする方法がオススメだ。マルチをうまく利用すれば、雑草の草刈りの頻度も量も減るし、食卓に並ぶ食材の栄養バランスも整い、見た目の美しさも増す。もちろん、無農薬・無肥料栽培の助けとなる。

コンパニオンプランツにおいてのよくある失敗例や活かせていない事

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多機能性がパーマカルチャー 緑肥

多機能性がパーマカルチャー 緑肥

<多機能性がパーマカルチャー 緑肥>

「自然農を理解しているかどうかは通路を見れば分かる!」
主に緑肥はイネ科とマメ科の植物を利用するわけだが、通路にはイネ科植物の方が適している。では、マメ科植物は使わないのか?というと、やはり使う。

畝の中央に野菜を植えて、その間にコンパニオンプランツとして枝豆やインゲンなどの青い豆で食べるものを植えることで面白いことが起きる。

マメ科植物は根っこでチッソ

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間を大切にする自然農 緑肥

間を大切にする自然農 緑肥

<間を大切にする自然農 緑肥>
「土を裸にしない」これは自然農を実践する上で重要な教えのひとつである。多くの人はこの教えの通りに、畝の上を草マルチやワラマルチで覆っていることだろう。
しかし実は、畝の上と同じように重要なのは通路の土を裸にしないことだ。それはなぜか。答えはシンプル。なぜなら野菜にとって畝の上も通路も同じ大地だから。そこに本来、境目はない。

実際に野菜の根は通路の方まで伸びてくる。

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<多重空間を最大限に活用する 支柱のデザイン>

<多重空間を最大限に活用する 支柱のデザイン>

<多重空間を最大限に活用する 支柱のデザイン>

自然農といえども、原産地ではない風土で育てるということは「不自然」のように思えるかもしれない。しかし農という営みは彼らにとって自然な状態を整えてあげることで、彼らにとっても人間にとっても都合の良い関係性を築いていく協働作業だとも言えるだろう。

そこで人間が手を入れて管理するときに考えることは二つだ。それは「彼らにとって自然かどうか」と「畑の空間を

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耕すはテクニックだ

耕すはテクニックだ

<耕すはテクニックだ>

え?自然農なのに耕すんですか?とよく聞かれる。最近では土壌を耕すと生態系を破壊すると批判される。しかし考えてみてほしい。人類が農耕を始めて1万年間ずっと耕してきたのに、どうして人類は発展し続けてきたのか。耕すたびに生態系が破壊されるのなら、もうとっくに人類は絶滅しているはずだ。
農家が大型機械を使って毎年のように耕すにも訳があるし、昔の人々が毎年耕しているにも訳がある。こ

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モンスーン・サバンナ文化とスリーシスターズ

モンスーン・サバンナ文化とスリーシスターズ

<モンスーン・サバンナ文化とスリーシスターズ>

ホモ・サピエンスが森林から旅立つと森林の周縁にはサバンナが広がっていた。地球の寒冷化にともなって森林は縮小し、代わりに広がっていたのが乾燥した大地、サバンナだった。そこにいち早く適応し、進出したのがイネ科植物で、それを追いかけるように微生物と協力関係を発達させた草食動物が進出する。イネ科はそれに対抗するかのように茎葉は岩石の主成分であるケイ素を身に

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