ユミイシマル

好きなもの:新鮮な野菜。猫。歌。空。宇宙。ここでは、思いつくままごちゃ混ぜに書き綴って…

ユミイシマル

好きなもの:新鮮な野菜。猫。歌。空。宇宙。ここでは、思いつくままごちゃ混ぜに書き綴っています。

記事一覧

校長先生、お元気で

お別れの日は来てしまった。 大好きだった彼に、もう会えなくなってしまう。 その”彼”は、明日には施設に入所してしまうからだ。 デイサービスに通っておられた95歳の男…

1

ひよちゃんとオレンジ

ヨシ子さんの庭の梅の木は、 毎年花がほころぶ頃になると 半切りのオレンジがいくつも無造作に挿されていた。 玄関のすぐ左側にある薔薇のアーチをくぐると レンガの小道…

ユミイシマル
1か月前
2

チャイムと叔父さん

先日のこと。 小学校の前を通りかかった時、 ちょうどキンコンカンとチャイムが鳴り、 校庭にいた児童たちに教室へ戻るようにと伝える 先生の声の放送がかぶさって響き渡…

ユミイシマル
2か月前
4

エアコンなしで越冬した話

2023年の夏の終わりに、 部屋のエアコンが壊れた。 冷暖房のヤツ。 2004年製だったから エアコン界の長老だ。 あの酷暑と言われた夏の間、 私を守るために 日夜ともに過…

ユミイシマル
2か月前
4

しみじみと、手を使う

それは、漬物がきっかけだった。 自分が好む味の漬物をようやく探しあてて 繰り返しその漬物を買ってきては食べていた私は、 ある時 本当はぴったりの味じゃないのに ち…

ユミイシマル
2か月前
2

プールの日向ぼっこ

大寒を目前にすでに極寒の午後、 吹きすさぶ風で髪がボサボサになり、 寒さのついでに、いっそのこと遠回りでもしてやれ、と思った。 商店街からの帰り道、 寒さと、髪が…

ユミイシマル
3か月前
3

今年は、歌う

2023年の、とある忘年会でカラオケを熱唱した。 歌ったのがSuperflyの『Beautiful』だったから どうしたって”熱唱”になった。 それをきっかけにして 私は「今年は歌う」…

ユミイシマル
4か月前
6

何でもない日バンザイ

♪なんでもない日、バンザイ♪ ディズニー映画『不思議の国のアリス』の お茶会の歌の歌詞。 今日を”生まれなかった日”と言って、 ”誕生日じゃない日”を祝うパーティ…

ユミイシマル
4か月前
4

年の瀬の干し柿

「クリスマスが過ぎると、急に慌ただしく感じますよね。」 歯科の受付の女性が、ゴシゴシと年の瀬の磨き方でガラスを拭きながら言った言葉に 私もまったく同感だった。 ク…

ユミイシマル
4か月前
3

赤ちゃん

近ごろ、私は赤ちゃんに釘づけになる。 エレベーターで、電車の中で、 お店番をしている八百屋さんで。 よその赤ちゃんをジロジロニコニコ見つめる。 ”赤ちゃんは、手の…

ユミイシマル
4か月前
6

誕生日と命日

11月18日はミッキーマウスの誕生日で、今年ミッキーは95歳らしい。 そして11月18日は私の母の命日で、今年で35年になる。 娘たちが小さい頃にディズニーのビデオをいただ…

ユミイシマル
5か月前
4

同僚は外国人 その1

夕方5時。駅への帰り道の同僚は、グローバルだ。中国人とモンゴル人、ネパール人、そして日本人の私。日本語が共通言語だけれど、みんな他に母国語を持つ人たちと仕事を終…

ユミイシマル
5か月前
4

やってみるから、わかる

将棋が面白い。最近になって偶然将棋を打つようになり、思いがけずさまざまなことに思いが及んでいる。将棋を知っていて良かった。昭和40年代に生まれた私が子供の頃、大人…

ユミイシマル
6か月前
8

You can!

「She can!」 ニコニコと、友人の夫はそう言った。 友人がトライしていることに対してのコメントだった。 友人は日本人女性で、夫さんは英語圏の白人男性。 短いのに、な…

ユミイシマル
7か月前
3

人づき合いとクレヨン

クレヨンは他の色と完全には混じらない。 だから隣の色と重なり合う時には 色の順番や塗る力の加減をしないといけない。 幼稚園でお絵描きする幼児になったように 真剣に…

ユミイシマル
8か月前
4

再生

日本の山林のほとんどが植林だなんて、知らなかった。 『原生林』が貴重だということは 要するにそういう意味だったんだ。 屋久島や知床半島の原生林は、 だから大切に保…

ユミイシマル
8か月前
6
校長先生、お元気で

校長先生、お元気で

お別れの日は来てしまった。
大好きだった彼に、もう会えなくなってしまう。
その”彼”は、明日には施設に入所してしまうからだ。

デイサービスに通っておられた95歳の男性。
その彼の穏やかな仕草の全てに
私たちスタッフは癒され続けた。

仕事柄、
通っておられた方とお別れをすることは
よくあることで、
寂しいお別れだって珍しくはない。

でも、今回はどういうわけだか
私だけじゃなくスタッフ皆にとって

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ひよちゃんとオレンジ

ひよちゃんとオレンジ

ヨシ子さんの庭の梅の木は、
毎年花がほころぶ頃になると
半切りのオレンジがいくつも無造作に挿されていた。

玄関のすぐ左側にある薔薇のアーチをくぐると
レンガの小道が車椅子の幅で整えられていて、
右手には人の背丈ほどのかわいい梅の木が植っていた。

その梅の木の奥にヨシ子さんの部屋があったから
梅の花にまじって空を見上げるオレンジは
ヨシ子さんのベッドからもよく見えた。
枝えだにブスりブスりと挿さ

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チャイムと叔父さん

チャイムと叔父さん

先日のこと。
小学校の前を通りかかった時、
ちょうどキンコンカンとチャイムが鳴り、

校庭にいた児童たちに教室へ戻るようにと伝える
先生の声の放送がかぶさって響き渡った。

私たちの人生は
いろんな”チャイム”で区切られていて
随分素直にそれを当たり前と思っている。

チャイムが鳴ったら
自分の個人的な思いには関係なく
何をするべきなのかを
与えられて、
そちらが最優先なのだ。

受け入れていると

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エアコンなしで越冬した話

エアコンなしで越冬した話

2023年の夏の終わりに、
部屋のエアコンが壊れた。
冷暖房のヤツ。

2004年製だったから
エアコン界の長老だ。

あの酷暑と言われた夏の間、
私を守るために
日夜ともに過ごしてくれたエアコンは

ある残暑の夕方に
ピッといういつもの音を最後に
スンと静かになった。

電気屋さんがくまなく見てくれたけれど
もう寿命ですね、と
予想通りの見立てだった。

ならば買い替えるしかない。
が、問題なの

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しみじみと、手を使う

しみじみと、手を使う

それは、漬物がきっかけだった。

自分が好む味の漬物をようやく探しあてて
繰り返しその漬物を買ってきては食べていた私は、

ある時
本当はぴったりの味じゃないのに
ちょっと我慢している、ということに気がついた。

とても美味しいのだけれど
ちょっと甘みが、違ったのだ。

そしてさらに気がついた。

裏の原材料を見る限り、
これは自分で作れると。

すなわち、自分で作れば
ちょうどいい味が作れるはず

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プールの日向ぼっこ

プールの日向ぼっこ

大寒を目前にすでに極寒の午後、
吹きすさぶ風で髪がボサボサになり、
寒さのついでに、いっそのこと遠回りでもしてやれ、と思った。

商店街からの帰り道、
寒さと、髪が荒れるに任せていた私は、
そのうちに半ばヤケクソになって、
いつも右へ折れる地点で、左へ折れた。

見慣れていない景色を眺めながら歩くのは、
それでも少し気持ちが上がる。
漫然と慣れた道を歩くよりも、目を見開くし、
目線も自然に上げるか

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今年は、歌う

今年は、歌う

2023年の、とある忘年会でカラオケを熱唱した。
歌ったのがSuperflyの『Beautiful』だったから
どうしたって”熱唱”になった。

それをきっかけにして
私は「今年は歌う」と心に決めたのだ。

その日”初めまして”だった人たちから
「すごく胸を打たれた」「感動した」という感想を、
かわるがわるいただいたものだから
お世辞でもなんでもそれがすごく嬉しくて、
帰ってすぐさま娘に報告をした

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何でもない日バンザイ

何でもない日バンザイ

♪なんでもない日、バンザイ♪

ディズニー映画『不思議の国のアリス』の
お茶会の歌の歌詞。

今日を”生まれなかった日”と言って、
”誕生日じゃない日”を祝うパーティーが
エンドレスに開かれている。

なんともイカれている場面だけど
♪年がら年中 お祭りだ〜♪と
底抜けに陽気でイカれたあのお茶会にお呼ばれしたい時もある。

「あけましておめでとう」
が飛び交った元旦の昨日は、
誰にも共通の特別な日

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年の瀬の干し柿

年の瀬の干し柿

「クリスマスが過ぎると、急に慌ただしく感じますよね。」
歯科の受付の女性が、ゴシゴシと年の瀬の磨き方でガラスを拭きながら言った言葉に
私もまったく同感だった。

クリスマス当日を境にして、
デコレーションがしめ縄へと姿を変えたり、
話す話題もお正月料理のことになったり、
年内に、という言葉を聞いたり言ったりするようになる。
もういくつ寝るとお正月、という歌も
しっくりくる。

年内最後の休日の今日

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赤ちゃん

赤ちゃん

近ごろ、私は赤ちゃんに釘づけになる。
エレベーターで、電車の中で、
お店番をしている八百屋さんで。
よその赤ちゃんをジロジロニコニコ見つめる。

”赤ちゃんは、手の中に夢をギュッと握って生まれてくる。
その手を開いた時、握っていた夢が飛び出していく。
その夢をまたつかまえる旅が、人生。”

20年以上も前の子育て時代に、
そんな夢のある話を聞いたことを思い出す。

無垢な表情で笑う赤ちゃんは
オギ

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誕生日と命日

誕生日と命日

11月18日はミッキーマウスの誕生日で、今年ミッキーは95歳らしい。
そして11月18日は私の母の命日で、今年で35年になる。

娘たちが小さい頃にディズニーのビデオをいただいたのがきっかけで、
我が家はディズニー好きの家族になった。
中でも次女のミッキーマウス好きはすごくて、
「ミッチー、ミッチー」と、まだ語彙が少ない頃にもう
ミッキーマウスを呼ぶようになっていた。

そんなに好きなミッチーの誕

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同僚は外国人 その1

同僚は外国人 その1

夕方5時。駅への帰り道の同僚は、グローバルだ。中国人とモンゴル人、ネパール人、そして日本人の私。日本語が共通言語だけれど、みんな他に母国語を持つ人たちと仕事を終えて、最寄り駅まで一緒に歩く。
彼らは、先月から働いているデイサービスのいわば先輩スタッフ。みんな介護職で男性も女性もいるし、年代も20代から40代とバラバラ。日本に来た時期も経緯もそれぞれだ。

外国人のいる職場で働いてみたい、と以前から

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やってみるから、わかる

やってみるから、わかる

将棋が面白い。最近になって偶然将棋を打つようになり、思いがけずさまざまなことに思いが及んでいる。将棋を知っていて良かった。昭和40年代に生まれた私が子供の頃、大人たちと混じって花札や将棋、ポーカーといった遊びをすることがちょくちょくあった。花札やポーカーのルールはすっかり忘れてしまったが、将棋の方はうろ覚えながら記憶にとどまっていて、それがこのたび生かされている。

最近私は、自分の父親ぐらいの年

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You can!

You can!

「She can!」
ニコニコと、友人の夫はそう言った。
友人がトライしていることに対してのコメントだった。
友人は日本人女性で、夫さんは英語圏の白人男性。
短いのに、なんというパワーワードなんだろう。
未来という見えない時間に向かっている時に、疑いのない口調でこう言われたらどんなにか心強いはずだ。

その友人がトライしているのは、自宅での和菓子教室オープン。
日本の伝統和菓子作りに外国人の人気が

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人づき合いとクレヨン

人づき合いとクレヨン

クレヨンは他の色と完全には混じらない。
だから隣の色と重なり合う時には
色の順番や塗る力の加減をしないといけない。

幼稚園でお絵描きする幼児になったように
真剣に色を塗っていたら
まるで私が色と色の間を取り持っているみたいで
面白くなってきた。

白いA4コピー用紙の4分の1サイズに
思いつくまま落書きのように色塗りをしている。
今朝手にしたのは、百円ショップで買ってきた
ミッフィーのクレヨン。

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再生

再生

日本の山林のほとんどが植林だなんて、知らなかった。
『原生林』が貴重だということは
要するにそういう意味だったんだ。

屋久島や知床半島の原生林は、
だから大切に保護されているんだ。

航空写真で見る日本の山林のほとんどが
一度は丸裸になったなんてちょっと想像できない。

一度伐採された山が自然の力で再生する。
それは”元の姿ではない”、というマイナスの見方もあるけれど
すごい力だと私は思う。

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