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或る若者の思索

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私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
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#毎日note

「待てど暮らせど」の「ドゥクラッセ」の部分

「待てど暮らせど」の「ドゥクラッセ」の部分

 真空ジェシカのラジオを聴いていたら、「待てど暮らせど」の"暮らせど"の部分について言及しているシーンがあった。
 待つのはわかるとして、暮らすまでいってしまうとこれは完全に変質者である。そういえばこち亀で、月面に置いていかれた両さんが迎えを待ちながら月を開拓していって、しまいには普通に月で暮らしを始める話があったが、これは完全に変質者である。月面調査隊が残した食料をもとにそれを培養するだけでは飽

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マスク社会は鏡花水月の術中に

マスク社会は鏡花水月の術中に

 コロナ禍も小康になり、人々がマスクをはずす場面も増えてきた。企業によっては従業員のマスクを不要とするお触れを出すところもあったり、飲食店でもパーテーションが徐々になくなったりしてきて、世界は元に戻りつつあるようだ。(もちろん基本的な感染対策は欠かさないようにしたいところ)
 
 コロナがあろうとなかろうと世界は回っていく。人々は進学・就職・転居などのプロセスを経て順々に人生のステージを歩んでい

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白湯(さゆ)じゃなくてお湯だろうが

白湯(さゆ)じゃなくてお湯だろうが

 ただの熱い水に何個も名称をつけるんじゃない。お湯はお湯、ひいては熱湯であろう。最近のガキャは何でもすぐにこうやってオシャレに言い換えようとする。ベロアじゃなくてコーデュロイ、援助交際じゃなくてパパ活みたいに。

「優雅にお湯をわかしてコーヒー飲むのよ」

 温度が高いお水はお湯である。これは紛れもない事実で、たとえば浴槽を満たすときも「お湯張りをします」というアナウンスが流れるし、チェーン店のウ

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俺たちは現代の参勤交代をしている

俺たちは現代の参勤交代をしている

 電車の中で見かけるくたびれたサラリーマンがスマホで十中八九プレイしている、クソほどつまんなさそうな謎のカラフルなパズルゲームは一体なんなのか。しかもよくよく見てみると、全員が同じゲームをやっているようで全員やってるゲームが微妙に違う。アメリカの激甘糖質爆弾ケーキ並の異様な原色カラーリングであることだけは共通しているが、その他は一体なんの違いがあるのか、皆目検討もつかない。そんな謎のパズルゲームを

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月が変わって、お見知り置きを

月が変わって、お見知り置きを

 "1ヶ月が12回来ると1年が終わる"という不可抗力的サイクルが出来上がっているせいで、なまじ1年間のカウントダウンを自然に設定する習慣がついてしまっている。さらにいうと、1日が約30回来ると1ヶ月が終わるというシステムが構築されているせいで、私たちはその意志とは裏腹に、日々無限に設定されるデッドラインを死ぬまでかろうじて掻い潜り続けるような生活を強いられているのだ。

 9月になったまさにその瞬

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解像度の低いこの街は淀み

解像度の低いこの街は淀み

 アジカンの或る街の群青を聴きながら歩いていると、この淀んだ汚い街の植物が、建物が、空気が、すべてのものが嫌に鮮明になったような気がしてくる。裏路地にぼうっと立つすすけた看板でさえ、まるで大繁盛店であるかのように見えるし、軒下の暗い雑草でさえ、大地にしっかりと息づく生命の力強さというものを感じさせる。この街が確かに生きているということを感じさせる。
 陽が落ちて、街が群青色の空に覆われる。まるで丁

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三途の川の渡し賃くらいチャージしておけ

三途の川の渡し賃くらいチャージしておけ

 私の交通系電子マネーカードには、常にわずかな金額しか入っていない。死の間際、信玄袋の中に小石や聖書などしか持っていなかったという田中正造くらい、ポッケナイナイである。
 「どうせすぐ使って無くなるんだから、多めにチャージしとけばええやん」とよく言われる。
 確かに。鉄道大正義社会に住んでいるので、それなりの金額をチャージしたとしても、確実に数日でなくなると私も思うし、何より駅の改札前でまごつくこ

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クソデカ体積の水を見に

クソデカ体積の水を見に

 書店にてスズキナオさんのエッセイの冒頭だけを少し立ち読みした。確か「遅く起きた日曜日に、膨大な体積の水を見に〜」みたいなことが書いてあったと思う。気になる出だしだったから今度買ってちゃんと読んでみよう。
 膨大な体積の水、というと一般的にそれは池であったり湖であったりダムであったり水の溜まっている場所を指し、それの最たるものはご存知の「海」ということになる。膨大な体積の水、という呼称は少し長いの

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野菜ジュースを無理して飲むような

野菜ジュースを無理して飲むような

 浮き足立たないような日々は足早にされど着実に。身体は確実に老いて、感性は緩やかに鈍っていく。昼下がりの微糖のコーヒーが、今日はやけに舌の上でザラつく。飲み口部分の金属味がチープなコクと否応なしに混ざりあって、さっき食べたカスタードパイの甘味も忘れてしまう。

 なんとなく飲まず嫌いしていた野菜ジュースを、なんとなく手に取ることが増えた。"若さ"だけが取り柄のゴールデンエイジをぬるりと駆け抜けてい

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流星都市発

流星都市発

シンギュラリティ(技術的特異点)でも起きて、とっとと労働から解放されたいと願わんばかりの日々。早く河川敷の土手で釣りをして短歌を詠むだけの太公望みたいな生活がしたい。おちおち2045年まで待ってなどいられん。

 2045年というと私は所謂アラフィフと呼ばれる齢になっているが、果たして世界はどうなっているのだろうか。新型コロナはおよそ350波目くらいだろうか(そこまで行くともはや新型ではない気が

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無欲であれ

無欲であれ

 欲しいものがない、やりたいことがない。

 そういう若者ははたしてタイマンなのだろうか。娯楽が多様化しすぎた今、逆に無欲がブームになったっていいはずである。勝つまで欲しがらないその姿勢は、かつてお前たちが賛美した"うつくしい”日本人の理想像ではないのかと問いたい

 若者はけっして"無欲"ではない。確かに野心的ではないが、決して無欲ではない。なんなら、アンタら世代よりよっぽど論理的であるし、水面

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もう走れない

もう走れない

 「サマーフィルムにのって」という映画を見てきた。タイトルからしてもう青春とかそういう甘酸っぱい系のワードが口いっぱいに広がるのだが、映画自体はそこまで青春を全面に押し出したような感じでもなく、一味変わった青春劇として見られた。
 女子高生3人×映像制作という面では、ついこの間「映像研には手を出すな」のアニメを見たばかりだったので、その設定を受け容れる土壌はできていた。いや待て、私は映画批評なぞで

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無事にロック

無事にロック

先週の肌寒さに震えたのも束の間、今日は溺れてしまいそうなほど暑い日だった。こう何度も気温に行き来されて振り回されている私たちはあまりにも無力。二日間リュックの中に放置されたままだったペットボトルのお茶を一口飲むと、茶葉の甘みだと言い張るには無理があるエグみが口に残った。明日以降腹を下さないことを祈る…。

 相変わらずの平沢進師匠の教祖っぷりに湧いたフジロックの最終日。そなたはコロナウイルスによ

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ドラマみたいだ

ドラマみたいだ

 最近蟻を見かけなくなったのは、地面に顔を近づけることがなくなったから。最近鳥を見かけなくなったのは、空を見上げることが少なくなったから。街が狭くなったのは、いろいろなことを知ったから。ドラマを見なくなったのは、一週間という刹那を知りたくないから。

 連ドラが最終回を迎え始めるシーズンがやってきた。週1回の楽しみといえば楽しみではあるが、それと同時に、月日の早さを思い知らされずにはいられない残酷

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