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或る若者の思索

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私が日常生活の中で感じた何気ないことを、日記よりちょっとだけ推敲して書いてます。
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#思い出

日本で一番気まずい奴ら

日本で一番気まずい奴ら

 2016年公開の映画「日本で一番悪い奴ら」。主演を綾野剛が務めた、いわゆる警察の汚職、不祥事などをテーマとした映画だ。内容も北海道で実際に起きた「稲葉事件」を基に描かれており、この映画のタイトルも同事件を取り扱った書籍から取られている。

※以下、ネタバレ内容含みます。

 当時大学生だった私は家にいた。ある日、ふと父親が「映画見に行こ」と言い、私と弟2人を連れ立った。向かったのは隣の市にある

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スマブラは持ってないやつのほうが上手い

スマブラは持ってないやつのほうが上手い

 そいつは運動から勉強までひととおり何でも器用にこなす、たまに鼻にかかる奴だった。私はというと運動はてんでダメで、特に球技は壊滅的、しかし走るのと泳ぐのだけは問題なかった。勉強は苦手ではなかったけど、中の上あたりをずっと徘徊していたと思う。
 そいつは明朗快活な奴で、いわゆるヤンキーとも仲が良く、対照的にオタク連中とも親和性の高い、水と油の両方を性質を持ったような奴だった。私はというと、ヤンキーに

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私は二度、旅に出る

私は二度、旅に出る

 若いうちは無茶な行程の旅路でも意外となんとかなるものだ。片道8時間かかる各駅停車での移動だって、ネカフェでの雑魚寝宿泊だって、市街散策で交通機関を使わずひたすら歩き続けることだって、体力と気力があればそんなの苦でもない。移動だけで潰れる一日も、安く済ませるためには仕方がない。シャワールームと身体を横にするスペースさえあればホテルもネカフェもさして変わらない。おまけに深夜バスなら宿泊と移動が同時に

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昔見たひかりへ

昔見たひかりへ

 休日にぶらりと、日本のいろんなところへと足を延ばすのが趣味になった。でも子どもの頃の私はどちらかというと出不精なタチで、休みの日は家にこもってゲームとかをしているような人間だった。
 それがあるとき、何かの因果でアクティブな人間へと生まれ変わったような気がする。まるで雷が落ちたようだとしばしば形容される、そんなセンシティヴな出来事があったわけではない。私はそこまで感受性が高くないので、外的要因な

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思い出に広告がカットインしてくる

思い出に広告がカットインしてくる

 動画サイトで動画を見ようとしたら、動画が始まる前に広告が流れるようになった。さらに一定時間ごとに短い広告が挿入されている。基本無料で使わせていただているのだから仕方ない、そうは思うけれど、ほんのちょっと前まではそんな仕様なかったんだから疎ましく思うのも仕方ない。
 動画サイトを徘徊していると、「切り抜き動画」や「ショート動画」というのが目に付くようになった。切り抜き動画とは、配信者が投稿した長尺

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眠れない夏の夜に

眠れない夏の夜に

 皮膚にへばりつくようななまぬるい風が、草木を心地よく揺らす風に変わったような気がした。人々の熱気とともに、夏は音速で過ぎていったのだ。

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 成就した恋ほど語るに値しないものはない、というとある学生の言葉があるが、あれは本当にそう。幸せな結末ほどつまらないものはないし、過ぎ去った季節には誰も興味がない。ハッピーエンドはハッピーエンド以外の何者でもない。人は皆、心のどっかで、自分に被害のない

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盆・ボヤージュ

盆・ボヤージュ

悲しいことは、悲しいことがあれから一度もないことさ。最後に悲しみに暮れたのはいつの日か。お盆の時期になると、なんとなく肌身で感じるやるせなさ。このやるせなさの輪郭が年々、形取られていくようになってきた。

 「夏休みのターニングポイント」くらいにしか、お盆というものを認識していなかった。気づいたらなんとなく夏だったのだが、気づいたらなんとなく秋の口が見えている。夏、この度めでたく24度目の解散。

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致死量の行列、死の行進

致死量の行列、死の行進

 雨の日は公共機関が混む。朝の通勤電車は、混雑度がいつもの二割増しくらいになる。加えて高湿度であり、傘から滴る水滴で足元も濡れているので、"マジで"通勤地獄になる。「でも日本には四季があるから...」、そんな免罪符、サラリーマンに通用すると思うな!お前はもう亜熱帯雨林に帰ってくれ、ポロロッカに巻き込まれて藻屑となれ。

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 夜8時、私は最寄り駅で電車を下りて、バス停に向かっていた。いつもは自転

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人生美味礼賛

人生美味礼賛

 四の五の言わずにまずはこちらをご覧頂きたい。

 これは私のInstagramのほんのひと握りの部分をスクショしたものである。御覧の通り欲望があふれている。この投稿の上下にはひたすら同じように料理を写したものが連なっている。
 私のライフワークのひとつになっている「食べ歩き」のいわば記録簿のようなものだ。どこかで食事をしたら写真に収めて、食後にInstagramに投稿する。そして行ったお店はマッ

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