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菊地成孔・大谷能生『M/D マイルス・デューイ・デイヴィスⅢ世研究』用プレイリスト(Apple Music)と、読書感想文
いわゆる(?)菊地&大谷本のなかでも大著の部類にあたる『M/D』(2008、エスクアイア マガジン ジャパン)に登場する大量の楽曲を一気にきけるプレイリストを作った。
もう15年前の本だが、数あるマイルス本のなかでも名著だと思う。本を読みながら聴くもよし、ジャズ史入門として単独で聴くもよし、好きな形でお楽しみいただければ幸い。
本書はマイルス・デイヴィスの生涯に関して菊地・大谷が東京大学にておこ
[古い日記]リアリティTVは現実よりもリアル(2010-04-22)
2010年4月22日木曜日
MTV Taking the Stageの摘要
MTV製作のTaking The StageというリアリティTV番組にはまっている。
先月の頭に帰省していたときに実家のケーブルテレビでたまたま見始めたのだが、これが面白くて面白くて一気に引き込まれてしまった。
シーズン1の放送は終了しており、全編フルエピソードをMTVのホームページで見ることができる。(※現在は公
[後編] 人文書を読むよろこびの回復:東浩紀『訂正可能性の哲学』(2023.09.01読了)
感想文の前編↓
人工知能民主主義の摘要
『訂正可能性の哲学』の第2部では、東が人工知能民主主義と呼ぶ一群の社会思想への応答が展開される。
人工知能民主主義の論客として主に想定されているのは鈴木健、成田悠輔、落合陽一である。彼らはまとめていってしまえば、情報技術の発展と存分な活用を前提に、政治、経済活動、社会のあり方のドラスティックな変容を構想するタイプの知識人だ。それぞれの主張やビジョンは確
Jay Deeの未発売ビート集『Another Batch』(1998)について
以前、ジェイ・ディラ/J DillaについてA to Zのエンサイクロペディア方式で紹介した記事を作った。そちらは主に伝記的な内容で埋まってしまったので、今回は彼の音楽的特徴を凝縮した未発売のビート・テープについて紹介してみたいと思う。
ジェイ・ディラが残した生涯最高傑作は何だろうか?録音芸術としての完成度や、プロデューサーとして関わった楽曲のセールスの観点などから選んでも、いろいろな作品が
[読書の記録] 小川さやか『チョンキンマンションのボスは知っているーアングラ経済の人類学ー』(2023.08.05読了)
著者は文化人類学者で、タンザニアでのフィールドワークを通じて、「マチンガ」と呼ばれる路上商人たち、ギグワーカーたちの関係のなかに入りこみ、彼らの資本主義経済に対する独特な関わり方を研究している。その成果を元にした一般向けの図書には、『「その日暮らし」の人類学 -もう一つの資本主義経済』(光文社新書, 2016)がある。
本書は、そんな著者が香港に舞台を移し、チョンキンマンションに長期滞在してビ
[読書の記録] Dan Charnas "Dilla Time: The Life and Afterlife of J Dilla, the Hip-Hop Producer Who Reinvented Rhythm" (2023.06.22読了)
著者のダン・チャナスはニューヨーク大学ティッシュ芸術校で教鞭をとる音楽史の研究者だ。特にヒップホップの歴史を商業的な側面から読み解く研究を専門としており、主著にはヒップホップビジネスの一大年代記である”The Big Payback”(2010, Berkeley)がある。
本書は、チャナスが巧みなストーリーテリングの技法を駆使して、Jディラ(本名James Dewitt Yancey 197
Jacob Collierの音楽について(2022年11月東京ライブの感想)
ヤング星野源含め、あまりにみんなが良いことしか書かないし言わないので敢えて、という逆張り親父ではないのだが、先日のジェイコブ・コリアーのライブ(2022年11月28日 Zepp Divercity Tokyoにて開催)で気づいたことを自分用にメモしていたので、今更だがリライトしてここに置いておく。
この夏には再度の来日の控えているわけでもあるし。
JCの芸風について
ジェイコブ・コリアー(以下
[読書の記録]松葉類『飢えた者たちのデモクラシー』(2023.04.15読了)
3月に出版された松葉類の『飢えた者たちのデモクラシー レヴィナス政治哲学のために』は、20世紀のフランスで活躍した哲学者エマニュエル・レヴィナスの政治哲学を検討した書物である。
20世紀に、主にフランスを舞台として活動した哲学者たちが担い手となったポストモダニズムと呼ばれる思想の潮流があった。わたしの理解では、レヴィナスも思想史上このグループに含めて語られることがある。レヴィナスを含め、ポス
[読書の記録]松尾潔『松尾潔のメロウな日々』(2014年9月23日読了)
鈴木雅之、久保田利伸、EXILE、平井堅、宇多田、JUJU、CHEMISTRY他
いま日本でR&Bな歌謡曲を作らせたら最も売れっ子なプロデューサーである松尾潔さんが、90年代、当時接触することすら困難と言われたさまざまなアーティストとの個人的交流を通じて、米国産ブラックミュージックの先進的紹介者として活躍していた、自身のライター時代を回想して書いた本である。
この人がライターをしていなかったら
[読書の記録] Jonathan Safran Foer "Extremely Loud and Incredibly Close"(2014.03.13読了)
この小説を原作とする映画が2011年に出ているのでそちらを知っている人も多いだろう。私が読んだのは小説のほうで、英語の原書で読んだ。なお映画版は見ていない。
本の感想だが、まずもって、ユダヤな感性のひねくれユーモアが好きな人には圧倒的におススメできる。ウディ・アレン的センスというか。
語りの主体である主人公オスカーは9歳にして既に重度の厨二病患者(少し非定型な感じもあるのか?)である。彼の極め