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♯07 ラブシックと不在着信
いつだって通話していたい。いつだって隣にいたい。
でも離れてる瞬間のほうが僕らには多い。それがわかってはいるけど
脳と心が大きく乖離している。
だから通話やメッセージや写真や動画が僕らを繋ぎとめている。
そんなことわかっている。わかりきっているだけに辛い。
僕らは限りないフィクションを観ている。それをフィクションと疑おうともしない。VRで知り合ってから、そこはもう非現実の世界。
でも間違いなく
#05 好きな気持ちに嘘偽りはなくて
愛してるよって言わなくちゃ伝わらないのは分かってる。
云わなくても好きなこと愛してること想ってること、言わずして
伝わる方法はないのかな。
きっとないんだろうな。私の頭ではいくら考えても思いつかない。
どこまでも、どこまでも、いつまでも、いつまでも、
消えない愛があればいいのに。
どこにもないんだろう。少なくとも今のところ。
仁人はなに考えてるかな?死にたい死にたいばっかり伝えて大切なこと
何一つ
#04 すれ違う日々、最後の一手。
あれから仁人にどれだけ救われていたのか気付く日々だった。
仁人がVRで配信してるのにどんな顔して行けばいいかわからなくて。
あれからも死にたいって慟哭が消えることは無かった。
仁人に一日何回死にたいって言ってたんだろう。
その度にどれだけ辛い苦しい思いをさせてきたんだろう。
もう話すことはないのかな。
一度くらい逢ってみたかったな。昇華し切れない後悔ばかり募る。
電話鳴らしてみようかな。でも何を話
#03 もう辞める?
「もう辞めるね?」
死にたい死にたい死にたい死にたい死にたい
死にたい死にたい、、、。
何回聞いたことだろう?流石に僕も疲れ果てて言ってしまった。
「日和、一回しか言わないからよく聞いて?」
「何?」
「あのね?」
「今の私に何言っても無駄かも知れないけど。」
「それでも言う。一度しか言わない。だからどうか聞いて欲しい。
もう僕は死なないで欲しいなんて言わない。」
「どうして?」
#02 死にたいなんて言わないでよ
例のアプリに身を置いてからは色んな人に出逢い、色んな形で刺激を貰った。
ヴァーチャルロワイヤル。
なかの人達はヴァーチャロとかヴァチャロワなんて呼称していた。
僕はVRと呼んでいた。名前なんてシェア出来てるならなんでも良いというのが
僕の考え方で。僕の呼び名だってなんだっていい。言った通りシェア出来てるなら。裏で思われがよくない意味の名前でシェアして呼ぶのはどうかと思うけれど。
そこに行ってみて
#12 君が僕の名前を呼ぶから
僕の記憶は全て嘘だった。
なにもかもが偽憶だった。
でも、全てが愛に溢れていた。
愛にも哀にも溢れていた。
彼女がユキが遺したものは
あまりにも大き過ぎた。
永くて甘い夢をずっと見ていた。
何で死んだんだ。
死ぬ必要なんてなかった。
どこにもなかった。
でも彼女なりにきっと後悔とか
たくさんしたんだろう。
僕はこの記憶にずっと埋め尽くされて
いたかった。
目を覚ますと思ってた。ギリギリ
#01 ヴァーチャルな世界へ
飽きた。とにかく全てが飽和している。
空腹で目を覚まして、冷蔵庫を開ける。いつもの通り空っぽで
せいぜい水が冷やしてあるかどうか。
スーパーに食材を探しに行こうかと考える。
サーモンと缶チューハイでも、なんて考えながら
逡巡しているとカツオが安くなってるからなんて理由でサーモンを諦める。
缶チューハイはシャルドネにしようと考えていたのに
こっちの方が安いからとチェリーにする。どいつもこいつもそん
#11メルティラヴァー
放り込んだ薬みたいに。
珈琲に溶け込む砂糖みたいに。
掌に触れた雪みたいに。
甘く深くあんなに交わったのに離れていく。
恋も愛も融解していく。
遅かれ早かれこうなる日がくることはわかっていた。
最初は妄想話をしていると勘違いされた。至極当然の反応だ。
「なんかの小説の話?読書なんてするっけ?」
そんな言葉が返ってきた。
確かな傷みが胸に去来する。
私は嘘に嘘を重ね続けた。
物語を演じ続け
#10 One Last Kiss
私が物語の主人公だとしたら
この人生という物語はどう終わるのだろう。
先が見えない。
窓際に飾った花の開いたはずの蕾は閉じるともなく宛を探していているように見えた。
「ユキ、ユキ、聞いてる?」
「あ、ごめん、ぼっーとしてた。どうしたの?」
「いや最近雨続きで頭痛くないかなって。」
「私は毎日なんとなくで風邪薬飲んでるから平気だよ?ライムきつい?」
「風邪引いてないのに飲んでいいものなの?
言わなくちゃ伝わらない時の方がきっと多くて#07
彼の携帯を鳴らす。
いつもの嘘をつく。
またかよーって彼は笑って受け入れてくれる。
誰にも等しい約束された明日はない。
私達にはそれは余計になかった。
発作や発病、もし来れば、近くに
互いが認められないとなると、
事故みたいな形での終わりが来ることが
予想される。
ライムの場合は自殺率なんておかしな言葉を
使ってみると常人の20倍くらいだろう。
私の場合は20-40倍とかになるのかもしれない。
常識と良識と病識と夢の季節#06
統合失調症の疑い。そう記された書類を見てから
気がつけば僕には病名が付けられていた。
統合失調感情障害。
僕は恥ずかしい事にそれまで精神病なる病気の概念も
何もかも知らなかった。
それからネットで調べたり、誰が何年にこの概念を発見し、なんて知らなくてもいいような事まで頭に叩き込んだ。やれと言われていたらここまでやらなかっただろう。
ユキのサポートもなかったら、関連疾患についてまで知れば知るほどに
36.7℃の心が傍にあるから#04
昏睡から目覚めてから
世界を憎んで呪っているそんな自分に初めて出会った。
その時の気分は、ちゃんと黒い自分が
存在したんだな。という、不思議な感想。
雪みたいに融けちゃいそう。
雲みたいに掴めない。
そんなふうに言われることがよくあった。
目を覚ましてから、次第に深まる家族の溝は
思えば僕がどんどん掘っていってしまったものだった。
なのに僕は周囲のせいにしていた。
話を聞いてなかったあいつが悪い、