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映画とドラマ

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子ども時代の読書が鮮やかによみがえる…映画『ストーリー・オブ・マイライフ』

子ども時代の読書が鮮やかによみがえる…映画『ストーリー・オブ・マイライフ』

いまや毎日の生活に欠かせない存在になっている、動画配信サイトであるが、ふとトップ画面を見たら劇場公開で見逃してしまった『ストーリー・オブ・マイライフ』を発見!興奮して心の中で歓声をあげながら再生ボタンを押した。

副題「わたしの若草物語」とあるように、1868年にアメリカの作家オルコットの書いた自伝的小説『若草物語』が原作である。長女のメグ、作家志望で男の子みたいなジョー、優しく恥ずかしがり屋のベ

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人間の持つ回復力を信じさせてくれた、ドラマ『マイ・ディア・ミスター』

人間の持つ回復力を信じさせてくれた、ドラマ『マイ・ディア・ミスター』

『マイ・ディア・ミスター』を見終わりました。

何がこんなに心を震わせたのか、少しだけ書いてみようと思います。本当はもう一周してみて、心にしみたいくつかの言葉を書き留めたいくらいなのですが、最終話だけもう一度見てメモしてみました。自分の【覚書】として。

物語の終盤、ドンフンとギフンが兄弟でしんみり話す場面があります。ギフンは以前自分が見た映画『誰も知らない』について語ります。映画に出てくる子ども

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映画『ガーンジー島の読書会の秘密』

映画『ガーンジー島の読書会の秘密』

これはもう、言うことなしで私の好みにぴったりの映画でした。冒頭20分で、物語の世界に心をガシッとつかまれてしまいました。そして、最後まで見終わった今、この映画が大好きだと、何度も何度も声に出したくなる、そのくらい、いい映画でした。

1940年冬、ナチスドイツの占領下にあったイギリス領ガーンジー島。ドイツ軍に家畜もラジオも奪われ、郵便も止められて人々は完全に孤立状態の中で寒さと飢えに震えて暮らして

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愛を呼び起こす物語

愛を呼び起こす物語

朝から雨。屋外でのイベントを楽しみにしていたけれど、雨天延期に。家に一人でいると手持ち無沙汰というか、何となく落ち着かないまま時間が過ぎてしまう。

このところ、時間があると観ているのが、BBCドラマ「 コール・ザ・ミッドワイフ ロンドン助産婦物語」見始めたら止まらなくなってしまって、今日からは遂にシーズン5に突入してしまった。

1950年代ロンドンの下町、イーストエンド。戦争の傷跡が残る町で

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映画「ノマドランド」

映画「ノマドランド」

ノマドランドを観てきました。

内容はこんな感じです。

企業の破たんと共に、長年住み慣れたネバタ州の住居も失ったファーンは、キャンピングカーに亡き夫との思い出を詰め込んで、〈現代のノマド=遊牧民〉として、季節労働の現場を渡り歩く。その日、その日を懸命に乗り越えながら、往く先々で出会うノマドたちとの心の交流と共に、誇りを持った彼女の自由な旅は続いていく──。

アマゾンの倉庫や、自然公園での季節労

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家族で見るのにはちょっときつい…ドラマ『俺の家の話』

家族で見るのにはちょっときつい…ドラマ『俺の家の話』

家族とドラマを見るのが苦手だ。

歳とともに涙もろくなってしまって、悲しいドラマを見ようものなら、涙ぐむ程度ではすまないくらい感情移入してしまう。そんなところを家族に見られたくない。

だから、家族で見るならドタバタ笑えるようなドラマとか、明らかに現実離れしているアクションやホラーの方がいい。昨日の夜も息子と一緒に竹内涼真出演の「君と世界が終わる日に」を見た。毎回思いもかけない展開に驚いて顔を見合

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ディケンズ 闇の中に描いた光

ディケンズ 闇の中に描いた光

あいかわらず動画配信サービスを利用して海外ドラマにはまっています。

中でもディケンズ原作のBBCドラマがいくつかあるので、それらを見続けて止まらなくなってしまいました。『大いなる遺産』『リトル・ドリッド』と楽しんで、次に観たのが『オリバー・ツイスト』です。

『オリバー・ツイスト』

親に捨てられて救貧院で育ったオリバーの健気さに心をつかまれます。ディケンズが生きた1850年頃のロンドンは、華や

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海外ドラマあれこれ

海外ドラマあれこれ

映画が好きで話題作などは映画館に出かけては観ていましたが、ここ一年は数えるほどしか劇場に出かけることはなくなりました。その代わり、アマゾンプライムビデオで映画を楽しんでいます。最近は映画からはちょっと離れて海外ドラマがお気に入りです。いくつかこのところ観たものをまとめてみますね。

自宅で映画鑑賞する欠点はいくつかありますが、その一つが集中して作品を楽しめないことでしょうか。(私だけかも知れません

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私も抱きしめてもらった気がした~映画「フェアウェル」

私も抱きしめてもらった気がした~映画「フェアウェル」

映画「フェアウェル」について昨日書いてみたけど、もうちょっと書き足りないことがあるので書いておこう。

最後のシーンだ。いとこの結婚式が終わり、いよいよ祖母ナイナイと別れてニューヨークに帰らなければならないビリー、見送らないでいいと言うのに、家の外まで出てくるナイナイ。タクシーが待っている。別れがたい思いを胸に抱き合う二人。

ナイナイはビリーを抱きしめて言う。「大丈夫、すべてうまくいくわ。長く生

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映画「フェアウェル」

映画「フェアウェル」

せっかく仕事が休みなので、映画を観に行ってきた。

観てきたのはこちら→映画「フェアウェル」公式サイト http://farewell-movie.com/

NYに暮らすビリーと家族は、ガンで余命3ヵ月と宣告された祖母ナイナイに最後に会うために中国へ帰郷する。家族は、病のことを本人に悟られないように、集まる口実として、いとこの結婚式をでっちあげる。ちゃんと真実を伝えるべきだと訴えるビリーと、悲し

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「私の罪は何ですか…」レニ・リーフェンシュタールを描いたドキュメンタリー映画を観た。

「私の罪は何ですか…」レニ・リーフェンシュタールを描いたドキュメンタリー映画を観た。



軍靴の音、オリンピックのマスゲームの映像が映画冒頭に流れる。狂気の20世紀、強制収容所と全体主義の時代を象徴する映像が続く。
第三帝国を代表する映画監督、レニ・リーフェンシュタール。ナチス党大会をニュース映像にした『意思の勝利』や映画『オリンピア』がナチスのプロパガンダを助けたとして今もドイツではその存在がタブーになっている。この映画は90歳になる本人に取材した、前編後編合わせて3時間の大作ド

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映画『ガザの美容室』

映画『ガザの美容室』

女たちでにぎわう美容室。忙しく髪にブラシをあてて働く母親に少女が訴える。「外へ出たい」「少しだけ」 母親の美容師は厳しく答える。「ダメ、奥で宿題をしなさい。」何とも言えない閉塞感につつまれたシーンで映画ははじまった。

https://youtu.be/6TqBOSVLWww

外はいつ戦闘が始まってもおかしくない、というか、ここガザには日常的に戦闘がある。そんな中で暮らす女性達が髪を整えてもらう

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映画『世界で一番ゴッホを描いた男』

映画『世界で一番ゴッホを描いた男』

何か残酷な結末が待っているのではないか、そんな予感があった。そうはあって欲しくないと祈るように最後まで見終わり、後味が悪くなかったことにほっとした。これが、ドキュメンタリーかと思うほど、人物に魅了された。

中国最大の油絵村、大芬(ダーフェン)20年もゴッホの複製画を描いてきたというシャオヨン。来る日も来る日も狭くて暑い工房でゴッホを描く。ヒマワリ、ジャガイモを食べる人々、ゴッホの自画像、…壁一面

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考え続ける#Black lives  matter 映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』

考え続ける#Black lives  matter 映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』

映画の最後、キング牧師の言葉が字幕に流れていく。

人種差別に暴力で闘うのは愚かなことである。暴力は破滅に至る。らせん状な下り階段で“目には目を”の思想はすべてを盲人に導く。暴力は敵の理解を求めず敵をはずかしめる。暴力は愛ではなく憎しみを糧とし、対話でなく独白しか存在しない社会を生む。そして暴力は自らを滅ぼし!生き残った者のこころには憎しみを暴力を振るった者には残虐性を植えつける。〈マーティン・ル

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