おばた りょうすけ

プロの中国伝統武術家です。都内などで形意拳や八卦掌という伝統武術や武器術を教えています…

おばた りょうすけ

プロの中国伝統武術家です。都内などで形意拳や八卦掌という伝統武術や武器術を教えています。以前は18年間、茨城県警察科学捜査研究所・法医研究室で鑑定をやっていました。武術修行や科捜研勤務などで得た経験をもとに感じたことなどを書きます。京都出身。茨城大学農学部卒。旺龍堂代表。

記事一覧

練武知真 第13話『引いて見ることの大切さを知る為の武術』

伝統武術「形意拳」は、体幹を後ろ寄りに配置した 「三体式(さんたいしき)」 と呼ばれる姿勢を基本とします。 まずは特定の姿勢を維持しながら身体各部を調整する 「站…

練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

格闘において「歩法」すなわちフットワークが大切なことは誰もが知るところです。 自分の本体を安全な場所へ移動し、 自分に有利で、相手に不利な位置取りをすることは、…

練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

武術において、相手から目を離すことは大きなリスクとなります。 どんなに怖かろうが、目をそらさず、相手をちゃんと見て、 相手の動向を把握して、防御し、攻撃しなけれ…

練武知真 第10話『地に足をつける為の武術』

中国武術の修行は【站樁功(たんとうこう)】と呼ばれる 特定の姿勢を維持して立つ訓練から始まることが多いです。 車派形意拳では、 「馬歩站樁功(まほ)」や 「三体…

練武知真 第9話『周囲に流されない為の武術』

「時代の流れに取り残されないように」 「流行りに乗り遅れないように」 「今はこういう時代だから」 そういう言葉をよく耳にします。 時代の流れをよく読み、 …

生まれてこのかた57年

去る3月31日に57歳となりました。 たくさんのお祝いのメッセージ、ありがとうございます。 - 毎年この日になると思うのが、 「イロイロあったなぁ」 という感慨。 誕…

練武知真 第8話『信じる事の大切さを学ぶ為の武術』

武術の修行は「自己の変革」の連続です。 以前にできなかった動きが、今はできるようになっている。 自分にはそこまでのレベルは無理だと決めてかかっていたものも、…

練武知真 第7話『他者を受け入れる事を学ぶ為の武術』

武術というと何やら テンション高く相手を攻撃する・・・ あるいは ガッチリと防御して相手の隙をうかがう・・・ そのようなイメージがあると思います。 確かに世…

練武知真 第6話『自分の弱さを知る為の武術』

いきなりですが質問です。 「武術や武道を学びたい」と思うほとんどの人に共通する想いは何でしょう? 答えは「強くなりたい」という想い。 そう。簡単でしょう? …

練武知真 第5話『目的と手段を履き違えない為の武術』

ある日、僕の武術の師が言いました。 「無目的の練習は意味がない」と。 今自分がおこなっている修行が何の為であるか、 よく考えながら鍛錬に励め・・・ という事…

練武知真 第4話『和する心を学ぶ為の武術』

武術というのは、ややもすると、他者を傷つけ、排除する為のものと思われがちです。 いえ、確かに、そのとおり。 元々は、危害を加えてくる者を撃退する技術として武術は…

練武知真 第3話『賢くなる為の武術』

さて。 武術とは元来どういうものでしょう。 現代的な価値でいうと、健康や趣味、自己啓発など様々な価値がありますが、 御存じのように元々は人間同士が戦って勝つ為の…

練武知真 第2話『強くなる為の武術』

武術の元々の目的は、そう、 「強くなる」 ことです。 外部からの脅威に対して、自分や大切な人や物を守る。 試合や勝負に勝ち、自尊心を満足させる。 修行により…

練武知真 第1話『自由になる為の武術』

いよいよ「練武知真」が始まります。 第1回のタイトルは『自由になる為の武術』です。 皆さん、伝統武術というと、とても沢山の技や型を覚えないといけないというイメー…

練武知真『はじめに』

私は1988年の大学2年生の頃に、日本在住の中国人武術家・趙玉祥老師に師事して、約30年間、中国の伝統武術《形意拳(けいいけん)》《八卦掌(はっけしょう)》《武器術》など…

『心が出たがっている』“My heart wants to appear”

自然に溶け込むように、この体と頭を消してしまいたい。 特に何かあった訳ではないが、昨夜、なぜかそう思った。 - 別に死にたいわけではない。 なんだ? この感覚は…

練武知真 第13話『引いて見ることの大切さを知る為の武術』

練武知真 第13話『引いて見ることの大切さを知る為の武術』

伝統武術「形意拳」は、体幹を後ろ寄りに配置した
「三体式(さんたいしき)」
と呼ばれる姿勢を基本とします。

まずは特定の姿勢を維持しながら身体各部を調整する
「站樁功(たんとうこう)」という訓練方法で、
この三体式を身体のベースとなるようトレーニングします。



そのあと形意拳の特徴である「前進しつつ技を打つ」練習をしてゆく訳ですが、この時も三体式の基本姿勢は崩しません。

つまり、体幹後方

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練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

練武知真 第12話『身の置き場所を変えることを学ぶ武術』

格闘において「歩法」すなわちフットワークが大切なことは誰もが知るところです。

自分の本体を安全な場所へ移動し、

自分に有利で、相手に不利な位置取りをすることは、

個人間の戦闘でも、集団間の戦闘でも勝敗を左右する重要な要素となります。

武術において、いつまでも同じポジションにいる事は、自らを危険にさらす事になるのです。

特定の場所に固執せず、状況に応じて、常に自分にとって有利な場所へと「身

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練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

練武知真 第11話『人の目を見るコミュニケーションを学ぶ武術』

武術において、相手から目を離すことは大きなリスクとなります。

どんなに怖かろうが、目をそらさず、相手をちゃんと見て、

相手の動向を把握して、防御し、攻撃しなければなりません。



「相手を見る」という事は武術にとって必要不可欠な要素なのです。



中国武術の身体要領の一つに

【二目平視(にもくへいし)】

と呼ばれる要領があります。



「両の目線を水平にして前へ向ける」というこ

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練武知真 第10話『地に足をつける為の武術』

練武知真 第10話『地に足をつける為の武術』

中国武術の修行は【站樁功(たんとうこう)】と呼ばれる

特定の姿勢を維持して立つ訓練から始まることが多いです。



車派形意拳では、

「馬歩站樁功(まほ)」や

「三体式站樁功(さんたいしき)」を。



九宮八卦掌では、

「馬歩站樁功」、「八卦站樁功(はっけ)」や

「虎座式站樁功(こざしき)」を。

それぞれ最初に学びます。



その目的は、各武術に必要とされる基本的な身体の要領

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練武知真 第9話『周囲に流されない為の武術』

練武知真 第9話『周囲に流されない為の武術』

「時代の流れに取り残されないように」

「流行りに乗り遅れないように」

「今はこういう時代だから」



そういう言葉をよく耳にします。



時代の流れをよく読み、

流行に目を向けることは、

自分を効率よくアップデートし、

目標をよりスムーズに達成するのに重要なことだと思います。



武術においても、

基本の技を学んだら、その応用変化を学び、

様々な状況に対応できるように自分

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生まれてこのかた57年

生まれてこのかた57年

去る3月31日に57歳となりました。

たくさんのお祝いのメッセージ、ありがとうございます。

-

毎年この日になると思うのが、

「イロイロあったなぁ」

という感慨。

誕生日というのは、自分の人生を振り返る良い機会になっているのかも知れません。

-

良いこと、悪いこと。

良い悪いでは計れない沢山の出来事や経験。

様々な人達との出会いと別れ。

住む場所や仕事も幾度か変わりました。

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練武知真 第8話『信じる事の大切さを学ぶ為の武術』

練武知真 第8話『信じる事の大切さを学ぶ為の武術』

武術の修行は「自己の変革」の連続です。



以前にできなかった動きが、今はできるようになっている。

自分にはそこまでのレベルは無理だと決めてかかっていたものも、いつの間にか修得し、さらにその先を見据えている。

初めて見た時は神秘的で不思議に思えた技も、今は他の人に教えられ程に理解できている・・・など。



身体の使い方に留まらず、

物事に対する捉え方や考え方、

感性や人間性にも変化

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練武知真 第7話『他者を受け入れる事を学ぶ為の武術』

練武知真 第7話『他者を受け入れる事を学ぶ為の武術』

武術というと何やら

テンション高く相手を攻撃する・・・

あるいは

ガッチリと防御して相手の隙をうかがう・・・

そのようなイメージがあると思います。



確かに世の中には色々な武術や格闘技があり、そのようなファイトスタイルをとるものが数多くあります。



このようなスタイルでは、自分と相手との間に

「境界線(ボーダーライン)」

が作られ、「そこをどのように攻略してゆくか」が攻防の

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練武知真 第6話『自分の弱さを知る為の武術』

練武知真 第6話『自分の弱さを知る為の武術』

いきなりですが質問です。

「武術や武道を学びたい」と思うほとんどの人に共通する想いは何でしょう?



答えは「強くなりたい」という想い。

そう。簡単でしょう?



では、

その「強くなりたいという想いの裏側」

にある思いは何でしょう?



分かりますか?



それは「自分は弱い」という思いなのです。



弱いと思うから、強くなりたい。

自分一人では強くなれないから、

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練武知真 第5話『目的と手段を履き違えない為の武術』

練武知真 第5話『目的と手段を履き違えない為の武術』

ある日、僕の武術の師が言いました。

「無目的の練習は意味がない」と。



今自分がおこなっている修行が何の為であるか、

よく考えながら鍛錬に励め・・・

という事であると僕は解釈しました。



それからというもの、練習する時は、

「これは、つまるところ、何をできるようになる為のものなのか?」

と折に触れて考えるようになりました。



与えられた訓練法に全集中して汗水を垂らしつつ

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練武知真 第4話『和する心を学ぶ為の武術』

練武知真 第4話『和する心を学ぶ為の武術』

武術というのは、ややもすると、他者を傷つけ、排除する為のものと思われがちです。

いえ、確かに、そのとおり。

元々は、危害を加えてくる者を撃退する技術として武術は発生しました。

あるいは、自らの矜持や欲望の為に、戦闘において相手を死傷させる術として磨かれてきた側面が少なからずあります。



しかし、時代は変わりました。

国家間の紛争においては、銃火器が発達し、戦闘機や戦艦、戦車、そして、

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練武知真 第3話『賢くなる為の武術』

練武知真 第3話『賢くなる為の武術』

さて。

武術とは元来どういうものでしょう。

現代的な価値でいうと、健康や趣味、自己啓発など様々な価値がありますが、

御存じのように元々は人間同士が戦って勝つ為の技術です。

もっと言うと、弱い者が不利な状況を打破し、自分と大切なものを守る為の戦術。

・力の弱い者が肉体的に優れた者に勝つ。

・少数の者たちが多人数相手に生き残る。

・武器を持った相手を制する。

など、弱者が強者を制する事

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練武知真 第2話『強くなる為の武術』

練武知真 第2話『強くなる為の武術』

武術の元々の目的は、そう、

「強くなる」

ことです。



外部からの脅威に対して、自分や大切な人や物を守る。

試合や勝負に勝ち、自尊心を満足させる。

修行により自らを向上させ、発展させる。

などなど、

武術を学ぶ動機や理由は様々であっても、

武術である限りは、まずは「強さ」を追及します。



かく言う僕も、自分の弱さを克服する為に武術を始めました。

いつ襲ってくるか分からな

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練武知真 第1話『自由になる為の武術』

練武知真 第1話『自由になる為の武術』

いよいよ「練武知真」が始まります。
第1回のタイトルは『自由になる為の武術』です。

皆さん、伝統武術というと、とても沢山の技や型を覚えないといけないというイメージはないですか?
確かに、私の伝える中国伝統武術《形意拳(けいいけん)》や《八卦掌(はっけしょう)》には膨大な技術体系があります。

基本技から応用技。
「套路(とうろ)」と呼ばれる複数の技をつなぎ合わせた型。
「対練(たいれん)」と

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練武知真『はじめに』

練武知真『はじめに』

私は1988年の大学2年生の頃に、日本在住の中国人武術家・趙玉祥老師に師事して、約30年間、中国の伝統武術《形意拳(けいいけん)》《八卦掌(はっけしょう)》《武器術》などや《気功》を学んできました。



またそれ以前にも、高校生の頃は柔道部に所属し、京都府警察官時代には逮捕術や柔道を学び、空手や日本少林寺拳法や合気道もほんのわずかな期間ではありますが道場へ通わせて頂きました。



このよう

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『心が出たがっている』“My heart wants to appear”

『心が出たがっている』“My heart wants to appear”

自然に溶け込むように、この体と頭を消してしまいたい。

特に何かあった訳ではないが、昨夜、なぜかそう思った。

-

別に死にたいわけではない。

なんだ? この感覚は。

-

そして、今朝。

自宅にある神棚に向かっている時、ふと気付いた。

-

【心が表に出たがっている】のだと。

-

「自分を世に顕してゆく」という今年のテーマがある。

僕はこれまで「技」や「考え」は、武術に関連するも

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