kanako

ライター/エッセイスト。関心領域はメンタルヘルス,哲学,アロマ,ライティングなど。 ポ…

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ライター/エッセイスト。関心領域はメンタルヘルス,哲学,アロマ,ライティングなど。 ポートフォリオはこちら▷https://www.kanakokubo.com

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記事一覧

上出来な毎日

ハム太郎の飼い主・ロコちゃんは、毎晩日記をつけてから、ハム太郎にこう話しかける。 今日はとっても楽しかったね、明日はもーっと楽しくなるよね、ハム太郎! 小さい頃…

kanako
3年前
8

幸せを求めないのは

不幸は安全。 永遠に続く幸せなんてないでしょう。 幸せを手に入れた瞬間、 それが消えてしまったらって思うと、 怖くてたまらないから、 自ら掴んだそれを、自ら手を開…

kanako
3年前
11

贅沢な感覚の使い方

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。 私たちはさまざまな感覚を持ち合わせていて、それを自由に用いることができる。 なんだか忙しない日々を過ごしていると、いかに多くの感…

kanako
4年前
13

この世の何か、ひとつだけ。

「この世界から、きみが望むものを何かひとつだけ、消してあげよう。」 もしも神様がいて、そんなことを言われたら、わたしは何を望むだろうか。 *** 気に食わないこ…

kanako
4年前
8

溢れ出すから、押さえこんだ。

どのように自分がその嘘をついていたのか、もう覚えていない。 私はすぐに泣く。 涙は簡単に流れるし、共感性が非常に高い部類だろうと感じる部分はとても多い。 しかし…

kanako
4年前
12

鮮やかな世界から目を背けるために、私は眼鏡を投げ捨てる。

ある日視力が2.0まで回復してしまったら、 私はもう生きていられないかもしれない。 *** 目が悪いから、いつも眼鏡をかけている。 あるいはコンタクトをつけている。 …

kanako
4年前
12

言う苦しみ。

言わなければ、丸く収まる。 私に目を向けられることはない。 他人と話をしていると、「それは違うでしょう」と言いたくなる自分が頻繁に現れる。 別に相手を貶めたいわ…

kanako
4年前
20

膨れ上がったキーケース

彼女のキーケースには、いくつもの鍵がぶら下がっている。 一つ目は彼女が住む家の鍵で、二つ目は彼女の実家の鍵で、三つ目は彼女の自転車の鍵で、それ以降を、僕は知らな…

kanako
4年前
6

小学2年生、昼休み。

物心がついたのはいつだったか。 正確には分からないが、「私」がスタートしたのは幼稚園生の頃だった。 大人になった今でさえ、日々たくさんのことを経験しては忘れる。 …

kanako
4年前
5

忘れられるうちに

人間は忘れる生き物だ。 たとえば昨日の夜ご飯はなにを食べたか。 今朝、起きて最初に笑ったのはなぜだったか。 近いはずのことでも、簡単に忘れる。 一方で、人間は忘れ…

kanako
4年前
10

孤独な僕が嫌いなら、君はここを去ればいい。

「あなたのことが好きで、私、夜も眠れません。」 「あなたのことを考えて、胸が苦しくなるんです。あなたは今、どこで何をしているのかなって。あなたは今、誰といるのか…

kanako
4年前
13

私の知らない私たち

私は、さまざまな成分でできている。 住所。名前。職業。 全部私だけれど、どれも私の全てではない。 私を形作るものはいくつもあって、ひとつひとつの要素と出会い、時…

kanako
4年前
6

夏と夜

夏は苦手だ。 暑さで汗が止まらない。 セミの鳴き声で耳が痛い。 蚊に刺されたら痒さで平静を保てない。 満員電車のねっとりとした空気は苦痛。 どこに出かけるのも億劫。…

kanako
4年前
5

清く、正しく、明らかな、わたしの声を

分かる、とはなんだ。 だれかにじぶんの気持ちを伝えたときに、分かる、と言われると違和感を覚える。 「わたしの気持ちはだれにも分からない。 わたしでさえ分からない…

kanako
4年前
7

涙は強さの証

涙は弱さの証だと思っていた。 -------------- 弱いから泣くんだ 弱いから我慢できないんだ 弱いから人に泣きつくんだ 私は絶対に泣かない。 -------------- 子どもの…

kanako
4年前
8

幸せにならずとも、幸せはありました。

ずっと幸せになりたかった。 幸せが欲しかった。 幸せな人生を望んだ。 幸せそうに見られたいと願った。 幸せを望めば望むほど、私の元から幸せは遠ざかっていくようで。…

kanako
4年前
10
上出来な毎日

上出来な毎日

ハム太郎の飼い主・ロコちゃんは、毎晩日記をつけてから、ハム太郎にこう話しかける。

今日はとっても楽しかったね、明日はもーっと楽しくなるよね、ハム太郎!

小さい頃に何気なく見ていたアニメの台詞には、大切なものが隠されていたようで。

私は定期的に、この台詞を真似して、自分に語りかけている。

---------

中学生の頃、階段の窓から、校外の道を歩く大人の姿をよく眺めていた。

平日の昼間に

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幸せを求めないのは

幸せを求めないのは

不幸は安全。

永遠に続く幸せなんてないでしょう。

幸せを手に入れた瞬間、
それが消えてしまったらって思うと、
怖くてたまらないから、
自ら掴んだそれを、自ら手を開いて、
そのまま落としてしまうのです。

落としてしまえば、崩れて溶けて、
生卵みたいにさ、
元には戻らないって知ってるよ。

高い位置であればあるほど、
ぺシャリと潰れてしまうことも知ってる。

だから私は永遠に不幸でいたいの。

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贅沢な感覚の使い方

贅沢な感覚の使い方

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。

私たちはさまざまな感覚を持ち合わせていて、それを自由に用いることができる。

なんだか忙しない日々を過ごしていると、いかに多くの感覚を同時に使いこなせるか、なんてことばかり考えてしまう。

視覚を使ってパソコンを見つめながら、
聴覚を使って音楽を取り入れる。

聴覚でラジオを楽しみながら、
嗅覚を使ってお香を楽しむ。

それらの中には、ほとんど無意識のうちに触覚も

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この世の何か、ひとつだけ。

この世の何か、ひとつだけ。

「この世界から、きみが望むものを何かひとつだけ、消してあげよう。」

もしも神様がいて、そんなことを言われたら、わたしは何を望むだろうか。

***

気に食わないこと。
納得がいかないこと。
理不尽なこと。
苦手なこと。
恐ろしいこと。

生きていると、さまざまなものやひとに出会う。

その殆どは、わたしにとってはどうでもいいことで、好きも嫌いもなく、ただわたしの中から、静かに緩やかに消えていく

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溢れ出すから、押さえこんだ。

溢れ出すから、押さえこんだ。

どのように自分がその嘘をついていたのか、もう覚えていない。

私はすぐに泣く。

涙は簡単に流れるし、共感性が非常に高い部類だろうと感じる部分はとても多い。

しかし私は、嘘を貫いてきた。

私には、涙がないと。

ーー

何かを見て、感動すること。

それらを全て抑え込んでいたのは、心の奥底で、溢れ出すそれを恐れていたのだろう。

とは言っても、全てに感動するわけではない。当たり前だ。

たとえ

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鮮やかな世界から目を背けるために、私は眼鏡を投げ捨てる。

鮮やかな世界から目を背けるために、私は眼鏡を投げ捨てる。

ある日視力が2.0まで回復してしまったら、
私はもう生きていられないかもしれない。

***

目が悪いから、いつも眼鏡をかけている。
あるいはコンタクトをつけている。
視力は0.1あるかないか、それくらいだ。

眼鏡を外すと、視界は霞んで、うっすらと、ぼんやり、何がどこに行ったのか、手探りでしか物事は見えなくなる。

外の世界では困ることだらけだ。

信号は見えない。
看板も見えない。
待ち合わ

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言う苦しみ。

言う苦しみ。

言わなければ、丸く収まる。
私に目を向けられることはない。

他人と話をしていると、「それは違うでしょう」と言いたくなる自分が頻繁に現れる。

別に相手を貶めたいわけではないし、マウントを取りたいわけでもない。
SNS上で知らない相手にぶつかることはない。

どちらが正しいとか、間違っているとか、そういう話がしたいわけでもない。

ただ、私はこう思う、と伝えたい。

あなたの意見と私の意見、ここが

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膨れ上がったキーケース

膨れ上がったキーケース

彼女のキーケースには、いくつもの鍵がぶら下がっている。

一つ目は彼女が住む家の鍵で、二つ目は彼女の実家の鍵で、三つ目は彼女の自転車の鍵で、それ以降を、僕は知らない。

「君はなぜそんなに沢山、鍵を持っているの」

さりげないふりをした僕に、彼女は困ったような、笑ったような顔を見せる。

「使ってみるといいわ」

「どこで使えるのさ」

「教えてあげる」

---

「これはね、幼い頃に、わたしと

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小学2年生、昼休み。

小学2年生、昼休み。

物心がついたのはいつだったか。
正確には分からないが、「私」がスタートしたのは幼稚園生の頃だった。

大人になった今でさえ、日々たくさんのことを経験しては忘れる。
古い記憶になればなるほど、忘れてしまったことも増えていく。

ところが、まだ小さかった私の身に、あの日起きたこと、言われたこと、言ったこと、感じたこと、いつまでも鮮明に残りつづけている「あの日」も、ある。

当時は言葉も知らないし、自分

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忘れられるうちに

忘れられるうちに

人間は忘れる生き物だ。

たとえば昨日の夜ご飯はなにを食べたか。
今朝、起きて最初に笑ったのはなぜだったか。
近いはずのことでも、簡単に忘れる。

一方で、人間は忘れたいことほど忘れられない生き物だ。

見えていたものを失って、手元に残るのは見たくないものばかり。
見れば見るほど傷は抉られる。

要らないのに。消したいのに。見たくない。

消えない。消せない。

消えて。消えろ。消えてください。

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孤独な僕が嫌いなら、君はここを去ればいい。

孤独な僕が嫌いなら、君はここを去ればいい。

「あなたのことが好きで、私、夜も眠れません。」

「あなたのことを考えて、胸が苦しくなるんです。あなたは今、どこで何をしているのかなって。あなたは今、誰といるのかなって。」

君が好きなのは、私ではないよ。

君は、君が大好きなんだね。

その、君が大好きな君を、輝かせる方法を、君だけの時をもって、見つけていけばいいじゃないか。
そこに僕は必要ないはずだ。

僕は、僕が大好きだ。
だから孤独で

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私の知らない私たち

私の知らない私たち

私は、さまざまな成分でできている。

住所。名前。職業。
全部私だけれど、どれも私の全てではない。

私を形作るものはいくつもあって、ひとつひとつの要素と出会い、時間を重ね、共に経験をすることで、私が作られてきた。

何か一つでも違う成分が混ざっていたら、今の私は居ない。

勇気を出して手を挙げたあの瞬間も、挙げようとした手を引っ込めたあの瞬間も。
大切な人に出会ったあの日も、大切な人を失った

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夏と夜

夏と夜

夏は苦手だ。

暑さで汗が止まらない。
セミの鳴き声で耳が痛い。
蚊に刺されたら痒さで平静を保てない。
満員電車のねっとりとした空気は苦痛。
どこに出かけるのも億劫。

わたしは冬が大好きなのに。
なぜ今年もこんな暑さに晒されなければならんのだ。

四季は要らない。三季が良い。

でもわたし、夏と同じくらい、もしかしたらそれ以上に、夜が苦手だ。

夜には魔物がすんでいて、わたしがわたしでなくなって

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清く、正しく、明らかな、わたしの声を

清く、正しく、明らかな、わたしの声を

分かる、とはなんだ。

だれかにじぶんの気持ちを伝えたときに、分かる、と言われると違和感を覚える。

「わたしの気持ちはだれにも分からない。
わたしでさえ分からないもの、他のひとに分かるものか。」

わたしは、わたしの心を神聖なものだと思いたくて、何処にあるのかすら分からないその心とやらを、自分の心を、だれにも見つけてほしくないのだ。

一方でわたしは、甚だしく情けないことに、だれかからの「分かる

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涙は強さの証

涙は強さの証

涙は弱さの証だと思っていた。

--------------

弱いから泣くんだ
弱いから我慢できないんだ
弱いから人に泣きつくんだ

私は絶対に泣かない。

--------------

子どもの頃の私は、簡単に泣いてはいけないと思っていた。

悔し涙だけは我慢できなくて、何度か流したけれど。

嬉しい時。
悲しい時。
苦しい時。

誰かの前で泣いたことはほとんど記憶にない。

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幸せにならずとも、幸せはありました。

幸せにならずとも、幸せはありました。

ずっと幸せになりたかった。

幸せが欲しかった。
幸せな人生を望んだ。
幸せそうに見られたいと願った。

幸せを望めば望むほど、私の元から幸せは遠ざかっていくようで。

「私は世界で一番の不幸者だ。」

無色無笑「悲劇のヒロイン気取られても。」

そんな言葉を投げられたのはいつだったか。

確かに私は悲劇のヒロインで、当時の状態を今振り返ってもさながら悲劇だったと思う。

なりたくてなったわけでは

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