鷺 行美(さぎゆきみ)

2022年7月2日に死別したパートナーとの思い出を綴ります。二人の過ごした時間はたった…

鷺 行美(さぎゆきみ)

2022年7月2日に死別したパートナーとの思い出を綴ります。二人の過ごした時間はたったの1年と2ヶ月間でした。 彼のたぐいまれな生き方と、彼が遺してくれたあたたかくまっすぐな愛のかたちを書き残したいと思います。 続きものですが、どうぞどこからでもお手に取り、触れていってください。

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  • 連載小説【知られざるアーティストの記憶】

    連載小説【知られざるアーティストの記憶】の本編を収録します。

記事一覧

【知られざるアーティストの記憶】第65話 ツインレイ(上)

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【番外☕】続・あなたと出会う交差点

※この記事は、前記事の【追記】として書いたものですが、独立させることにしました。 -------- 彼は毎日抗がん剤を投与しながら、片道1時間弱(アップダウンのある)を自…

【番外☕】あなたと出会う交差点

病院にいくのは いやだったよね この険しい上り坂を 一足一足 力をこめて 自らをその場所に運ぶのは どんな気持ちだったか 自分の中で暴れる 病気を叩きのめす 強い薬を…

【知られざるアーティストの記憶】第64話 漢方内科でのコミュニケーションと彼の望む死にかた

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第63話 抗がん剤治療以外の選択肢、S医院

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第62話 マリの見ていた幸せと、彼の見ていた恐怖

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第61話 弟との面会

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【こぼれ落ちた断片01】ある日の遭遇

何度も何度も何度も曲がる あなたの家の曲がり角 下手をすると1日に何回も 保育園の送り迎えや買い物のときは右折 次男の学校や駅の方面へゆくときは左折 この日も左折を…

【番外☕】そばにいる紫

主のいなくなった家 そして家さえ影を失ったブラックシートを見て わたしはいつもため息を落とす ああ あの空間も陰影も手ざわりも もうそこにはないのだなと その度毎に…

【番外☕】キスのおもひで

【知られざるアーティストの記憶】第60話で彼とのキスのことを書いた日の夜、詩人のげん(高細玄一)さんの「詩)燃えるようなキス」が目に飛び込んだ。 字数の限られた…

詩人による美しいキスの表現
げん(高細玄一)さん
詩)燃えるようなキス
https://note.com/ginngakei/n/nd204575c43d7?sub_rt=share_pw

「どれだけ待っていたか
 どれだけ切なく
 生きてきたか
 もう一度確かめあい
 もう一度唇を交わす」

こんなキスをしてみたかった
体験も言葉も人を大人にする

【知られざるアーティストの記憶】第60話 彼のキスと読書

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

自由に浮かび 言葉を捕まえる
どのあたりを
どんなふうに浮かんでいるか
高度と密度
眼差しの自由
余分な力が入っていないこと

それは書くことにおいてだけでなく
日常の行動や生き方においても同じ

どのあたりを
どんなふうに浮かんでいるか
なのだと思う

【知られざるアーティストの記憶】第59話 女性とキスをしてもいいですか

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第58話 Imakokoカフェに行く(下)

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第57話 Imakokoカフェに行く(上)

Illustration by 宮﨑英麻 *彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。 知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で マリに遺した記憶の物語* →全編収録マガジン →…

【知られざるアーティストの記憶】第65話 ツインレイ(上)

【知られざるアーティストの記憶】第65話 ツインレイ(上)

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第9章 再発

 第65話 ツインレイ(上)

丸く大きな月が明るく夜空を照らす夜には、マリは彼と共にその月を見上げたいと願った。それはかつて彼の入院中にマリが寝室の窓から見上げ、その面を通じて彼と交信してい

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【番外☕】続・あなたと出会う交差点

【番外☕】続・あなたと出会う交差点

※この記事は、前記事の【追記】として書いたものですが、独立させることにしました。

--------

彼は毎日抗がん剤を投与しながら、片道1時間弱(アップダウンのある)を自転車でT大学病院まで通うという強者でした。本編ではもう少し先に出てきます。

通るときに思わず手を合わせてしまう場所は、このT大学病院に曲がる交差点の他にいくつかあります。
できれば通りたくない、私にとって身のすくむ場所なので

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【番外☕】あなたと出会う交差点

【番外☕】あなたと出会う交差点

病院にいくのは
いやだったよね
この険しい上り坂を
一足一足 力をこめて
自らをその場所に運ぶのは
どんな気持ちだったか

自分の中で暴れる
病気を叩きのめす
強い薬を迎える
病気が勝つのか
薬が勝つのか
検査で確かめる
もうたくさんだ

あれから2年

私はあなたが自転車をこいだ
大通りからあの病院へ曲がる
交差点を通り抜けるとき
今も必ず両手を合わせる
愛してるよ
それがいつでも
あなたにかけ

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【知られざるアーティストの記憶】第64話 漢方内科でのコミュニケーションと彼の望む死にかた

【知られざるアーティストの記憶】第64話 漢方内科でのコミュニケーションと彼の望む死にかた

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第9章 再発

 第64話 漢方内科でのコミュニケーションと彼の望む死にかた

マリは漢方内科のF医院に一旦彼を降ろし、三男を保育園に届けてから再びF医院に戻った。予約なしの受診だったので、小一時間を待合室の

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【知られざるアーティストの記憶】第63話 抗がん剤治療以外の選択肢、S医院

【知られざるアーティストの記憶】第63話 抗がん剤治療以外の選択肢、S医院

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第9章 再発

 第63話 抗がん剤治療以外の選択肢、S医院

今回の突発的なT大学病院受診は、普段の定期的な検査受診とは別に、彼の不眠の訴えに応じるためのものであったが、主治医のH医師による血液検査も念のた

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【知られざるアーティストの記憶】第62話 マリの見ていた幸せと、彼の見ていた恐怖

【知られざるアーティストの記憶】第62話 マリの見ていた幸せと、彼の見ていた恐怖

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第9章 再発

 第62話 マリの見ていた幸せと、彼の見ていた恐怖

お互いの背中に腕を回して、温め合ったぬくもりからこぼれ落ちた言葉を、マリはその場で言葉にできない。家に帰ってから紙に書き留めて、彼のポスト

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【知られざるアーティストの記憶】第61話 弟との面会

【知られざるアーティストの記憶】第61話 弟との面会

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第8章 弟の入院

 第61話 弟との面会

マサちゃんが転院したO病院は、当時の感染症対策体制下にあっても入院患者との面会が全面禁止ではなく、医師の許可が下りれば月一度の面会予約を取ることができた。そのこと

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【こぼれ落ちた断片01】ある日の遭遇

【こぼれ落ちた断片01】ある日の遭遇

何度も何度も何度も曲がる
あなたの家の曲がり角
下手をすると1日に何回も
保育園の送り迎えや買い物のときは右折
次男の学校や駅の方面へゆくときは左折

この日も左折をしようと一時停止し
ウインカーを出すと
道路の右側からあなたが歩いてきて
わたしと目が合うと微笑み立ち止まる
わたしはどうぞという手振りで道を譲る
あなたはそれを見てゆっくりと歩み出す
わたしは微笑みながらその様子を眺める

あなたが

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【番外☕】そばにいる紫

【番外☕】そばにいる紫

主のいなくなった家
そして家さえ影を失ったブラックシートを見て
わたしはいつもため息を落とす

ああ
あの空間も陰影も手ざわりも
もうそこにはないのだなと
その度毎に理解する

形を失ったものは二度と元に戻らないのだ

だけどそこには
さいかちの風と共に
彼ののこしたきらめきが漂う

さいかちがたくわえたサルノコシカケは
用が済むと同時に朽ち果てた
代わりに根元には
キランソウの鮮やかな紫
わたし

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【番外☕】キスのおもひで

【番外☕】キスのおもひで

【知られざるアーティストの記憶】第60話で彼とのキスのことを書いた日の夜、詩人のげん(高細玄一)さんの「詩)燃えるようなキス」が目に飛び込んだ。

字数の限られた「つぶやき」でご紹介させていただいたが、なんだか言い足りないので改めて記事を書く。重複ご容赦ください。
(だったら初めから記事を書けばよかったのだが、短いとわかっているから見てもらいやすい「つぶやき」は、記事とはまた別の交流が生まれること

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詩人による美しいキスの表現
げん(高細玄一)さん
詩)燃えるようなキス
https://note.com/ginngakei/n/nd204575c43d7?sub_rt=share_pw

「どれだけ待っていたか
 どれだけ切なく
 生きてきたか
 もう一度確かめあい
 もう一度唇を交わす」

こんなキスをしてみたかった
体験も言葉も人を大人にする

【知られざるアーティストの記憶】第60話 彼のキスと読書

【知られざるアーティストの記憶】第60話 彼のキスと読書

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第8章 弟の入院

 第60話 彼のキスと読書

医師からの許可までもらってきたにも関わらず、彼は一向にマリにキスをしようとはしなかったので、マリは拍子抜けした。

数日たったある日、布団の上で彼の上に被さり

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自由に浮かび 言葉を捕まえる
どのあたりを
どんなふうに浮かんでいるか
高度と密度
眼差しの自由
余分な力が入っていないこと

それは書くことにおいてだけでなく
日常の行動や生き方においても同じ

どのあたりを
どんなふうに浮かんでいるか
なのだと思う

【知られざるアーティストの記憶】第59話 女性とキスをしてもいいですか

【知られざるアーティストの記憶】第59話 女性とキスをしてもいいですか

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第8章 弟の入院

 第59話 女性とキスをしてもいいですか

二人でImakokoカフェに行って来て、彼はマリにこんなことを言うのだった。
「私はまるで、キミの紐みてえだなあ?」
そして、さも楽しそうにニヤ

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【知られざるアーティストの記憶】第58話 Imakokoカフェに行く(下)

【知られざるアーティストの記憶】第58話 Imakokoカフェに行く(下)

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第8章 弟の入院

 第58話 Imakokoカフェに行く(下)

「それで、同級生の家は見つかったの?」
「それが、いくら探しても見当たらないんだよ。」

ワークショップをしているグループの中には、Imak

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【知られざるアーティストの記憶】第57話 Imakokoカフェに行く(上)

【知られざるアーティストの記憶】第57話 Imakokoカフェに行く(上)

Illustration by 宮﨑英麻

*彼は何も遺さずにひっそりとこの世を去った。
知られざるアーティストが最後の1年2ヶ月で
マリに遺した記憶の物語*

→全編収録マガジン
→前回

第8章 弟の入院

 第57話 Imakokoカフェに行く(上)

2021年11月15日、マリは家業の商品を駅前のImakokoカフェに納品に行くことになっていた。カフェのコーナーの一角にそれはあり、コアな

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