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読書感想と本について

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小説の感想と本についてのお話。
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「黙って喋って」ヒコロヒー 感想

「黙って喋って」ヒコロヒー 感想


 「黙って喋って」 ヒコロヒー

※若干ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください

 思ってた以上にすごくよかった。比喩表現が巧みで、彼女にしかできない表現方法が面白く、この感じ、結構好きだなと思った。短い物語のなかで、よくある身近な話題から二人にしかわかりあえない微妙なニュアンスの部分まで、男女の繊細な機敏をわかりやすく、また文章も読みやすい。それが、人気の理由なのかもしれません。
 最

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第15回読書会報告書

第15回読書会報告書

 2024年4月29日(月・祝)14:00〜15:00、第15回目の読書会が開催されました。
 課題本は 若竹千佐子さんの「おらおらでひとりいぐも」です。 第54回文藝賞、第158回芥川賞受賞作品。本作は2020年に田中裕子さん主演で映画化もされています。

 若竹千佐子さん「おらおらでひとりいぐも」

※ネタバレを含みますので未読の方はお気をつけください。

 4月下旬、曇が多く涼しい風がほどよ

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神保町のPASSAGEへ

神保町のPASSAGEへ

 神保町にある共同書店PASSAGEと三階のbis、そして近隣にあるSOLIDAへ行ってきました。
 著名人から一般の本好きまで幅広い人たちが各々の売りたい本、推したい本を棚に並べて置いてあるこの本屋さんは、部屋いっぱいに本が陳列されていて、本棚の中身は一貫性がなく分類や大きさもバラバラ、だからこそ新しい出会いを予感させるのかワクワクする気持ちが湧いてきて、それが楽しくて仕方がない。前から気になっ

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「My bookshelf〜時を探して〜」

「My bookshelf〜時を探して〜」

「 My bookshelf 〜時を探して〜 」

 X(旧twitter)のWeb企画、ペーパーウェル11(2023年9/30開催)の参加作品です。テーマは『 時計・時間 』でした。概要はこちら、

 私は作品の配信と読者の両方で楽しませて頂いております。いつもは物語の短編で参加していたのですが、11回では趣きを変えて時計や時間に関する本を紹介しました。読書の薦めのような、書評のような、推し本語

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「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想

「裁判官三淵嘉子の生涯」伊多波碧 感想


 「裁判官三淵嘉子の生涯」 伊多波 碧

 朝ドラ『虎に翼』が好きで拝読しました。

 女性の自立を阻むのは同じ女性だったりもする、という嘉子の言葉に頷いてしまう。日頃から常々思ってたことだったので嘉子が体験する疑問をリアルに感じました。彼女の生き方と後生への偉業は尊敬するし、少年達との対話は涙を耐えることができなかった。
 一冊分の生涯なので、本当はまだまだたくさんの困難があったんだろうなぁと

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「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想

「ぼくは青くて透明で」窪美澄 感想


「ぼくは青くて透明で」 窪美澄

 とてもよかったぁ。海くんと忍くんの関係だけでなく、海くんの継母や父親、同級生の視点などを、一話ずつ重ねながら進む物語は、多面的で一方の思い込みを柔らかく解いていく。
 文章ってきっと相性があるんだと思う。どんなに読みやすい文体でも読みづらく感じることはあるし、逆に難しそうでもすんなり頭に入っていって、スラスラ読めることもある。窪美澄さんの作品は、とても読みやす

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「愛と死」武者小路実篤 感想

「愛と死」武者小路実篤 感想

 
 「愛と死」 武者小路実篤

※ あらすじを含んでいるのでネタバレを気にする方はご注意ください

 ただただ想い合っている。こんなに気持ちいいものはない。ラストが悲恋であれ、これが人と人が真っ直ぐに想い合う美しい姿なんだなと思った。愛を形にするならばと問われれば、きっと私はこの小説が頭に思い浮かぶだろう。相思相愛とはこのことだ。

 先輩作家であり友人野々村の妹「夏子」との初めての出会いは、何

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私のファンレターの書き方(我流)

私のファンレターの書き方(我流)

 ファンレターに関して思うことがあったので書きました。単なる私のファンレターの書き方です。なんとなく、手紙を書くことに二の足を踏んでいる人がいるようなので、一読者ただのファン視点ですが、私が送るときに気をつけていることと、心構え等を箇条書きにする感じて記載します。

【 宛先は書籍の奥付編集部へ 】

 基本的に宛先は、書籍の一番後ろに記載してある出版社の住所へ送ります。親切にファンレターの宛先は

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「 木 」 幸田文 感想

「 木 」 幸田文 感想

 幸田文「木」に興味を持ったのは、映画「PERFECT DAYS」で主人公の平山さんが古書店で手に取り、就寝前に読んでいた本だったからだ。それがなければ、私はきっと名は知っていても一生手に取らなかったと思う。私は有名だから読むとか売れて人気だから読むという読書選びはしません。
 ただ、私はたまにノベライズや映画原作とは別に、おもしろかった映画作品にでてきた本に興味をもって読むことがあります。それに

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「余白の迷路」赤川次郎 感想

「余白の迷路」赤川次郎 感想

 赤川作品は、色あせることなく、私をワクワクさせてくれる。今回は、「余白の迷路」から好きな台詞や文章をご紹介します。

 ※ 若干ネタバレも含みます

 二年前『しばらく出かける』というメールを最後に行方不明になったまま帰ってこない夫。そんな夫が夢にでてきて茜と交わした会話が印象的だった。
 「迷う」というマイナスともとれる言葉が、彼の返しでガラリと好転して、それを楽しむようなニュアンスに変わり、

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ブックカバー

ブックカバー

 本を読む人の装いは様々です。
 表紙を装着したまま自然に読む人、表紙のカバーを外して裸身で読む人、書店でかけられた紙のブックカバーをラフに使う人、愛用のブックカバーをつけて着飾って読む人など、紙の本を好む人にはいろんなスタイルの人がいますね。
 どこで読むかによっても違いがあるかもしれません。家で、職場で、カフェで、公園で。
 落ち着く場所、捗る場所もひとそれぞれです。
 みんな等しく本好きなの

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古本まつりへ

古本まつりへ

 仙台駅前のイービーンズで開催されている古本まつりへ行ってきました。
 6階のエレベーターから出るとズラリと並ぶ本棚の陳列が壮観でした。古書だけでなく、雑誌や雑貨、映画DVD(Blu-ray)、レトロなハガキ、切手、額縁に飾られた絵(イラスト)、熊の置物まで!本好きにとってはたまらない空間です。私が行ったのは日曜日だったからか、人入りはけっこうあって、吟味している人の背後から覗いたり、気づいたら横

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第14回読書会報告書

第14回読書会報告書

 2024年1月21日(日)
 第14回読書会を開催しました。課題本はこちら

    「キッチン」 吉本ばなな

 当日はあいにくの雨模様でしたが、そこまで寒さを感じることはなく暖かい室内でのゆったりとした談話になりました。少数での開催でしたが、その分一人の感想時間は長く、思ったことや好きなところをじっくりお話することができました。
 吉本ばななさんの作品で一番有名なのは、やはりこの「キッチン」

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