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【連載】岩波文庫で読む
「感染症」第1回|古典の小宇宙に問いかける|山本貴光

【連載】岩波文庫で読む 「感染症」第1回|古典の小宇宙に問いかける|山本貴光

 なにかのテーマについて考えたり書いたりする必要が生じると、とりあえず岩波文庫の棚 の前に立ってみる。

 全部を揃えるには至っていないものの、この二十余年、毎月の新刊と、折々に遭遇した既刊書を手に入れて読んでいるので、それなりの冊数になっているのだった。

 なぜそんなことをしているのかといえば、シリーズものの本を集めるのが好きだ というのは置いておくとして、学術の歴史に関心があるからだ。こ

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大学非常勤講師の給料をめぐるある顛末

大学非常勤講師の給料をめぐるある顛末

今年度の諸事もそろそろ終りが見えてきたので, “某案件” に関して事後報告をしておいた方がいいかもしれない.

1. 非常勤講師契約書の「解釈」をめぐって
関東のとある大手私立大学で非常勤講義を引き受ける機会があった.ワタクシは現在の本務先では「再雇用」の身分であり,日給計算による給料をもらっている.大学への非常勤出講は出勤簿上の「欠勤」として扱われるので,日給は支給されない.したがって,欠勤分の

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2回戦ジャッジ評

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BFC2 第2回戦ジャッジ評「執筆の生計」笠井康平

■総評
 前口上は省きます。基礎点(やさしさ)、技術点(遠さ)、構成点(広さ)、素材点(深さ)の4項目に分けて判定します。万全を期すために、全作全文を添削して、基礎点の採点に用いました。捨て文がない状態を100%とし、85%以上に+1点します。技術点は、注目すべき語句や、心に残る一文、見事な場面などを拾い上げて、美点が難点を上回

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忘れられた民俗学研究者・出口米吉の生涯

忘れられた民俗学研究者・出口米吉の生涯

1. はじめに―「謎の研究者」から「忘れられた研究者」へ 先日、下記の記事で「謎の民俗学研究者」として紹介した出口米吉は性に関する民俗に関心を持っていたこと以外あまり分からないと述べた。しかしながら、さらに調べていくと実はこの人物の年譜が存在したことが判明した。

 2020年11月6日現在無料公開中のざっさくプラスで出口米吉の名前を検索したところ、染織書誌学研究家・後藤捷一(しょういち)が『近畿

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黎明期のパソコンゲーム開発#36

黎明期のパソコンゲーム開発#36

ここからはパソコンで開発したゲームの第2弾、ZAXUSの開発について書いていきたいと思います。

■ZAXUSを創る ~アイデアと基本コンセプト~
1.アイデアを出す

まずこれがZAXUS(ザクサス)として発売されたゲームのパッケージ。

簡単にいうと、UFOを操作して逃げる人(サイボーグ戦士)をビームで捕まえるというゲームです。

画面を見た方や、AppleⅡのゲームを遊んだ方からは「チョップ

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書物の転形期05 洋式製本の移入2:幕末の洋装本

書物の転形期05 洋式製本の移入2:幕末の洋装本

蕃書調所・洋書調所・開成所の洋装本
 1856年、蕃書調所は江戸幕府によって「西洋情報や技術の翻訳・移植直轄機関」( 宮地正人「混沌の中の開成所」『学問のアルケオロジー』東京大学出版会、1997)として設立された。蕃書調所は数多くの洋書を備えるとともに、「活字所」を調所内に開設し、スタンホープ印刷機を使った活版印刷で教本や辞書を翻刻していた。蕃書調所とその後継機関である洋書調所(1862)・開成所

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【お悩み回答】「ビジネスの悩み、エピクテトスなら、こう言うね。」対談

【お悩み回答】「ビジネスの悩み、エピクテトスなら、こう言うね。」対談

7月上旬に募集をしたお悩みについて、ご応募くださった皆様どうもありがとうございます。『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』の著者である山本貴光氏と吉川浩満氏、そしてグロービス経営大学院の難波美帆の対談にてお悩みに回答いたしました。(前編は知見録で公開しています)

【お悩みの目次】
①0:00:40~ 起業したばかりです。黒字化するまで結婚は待つべき?(かいじゅうさん)
②0:14:15~ 

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ありのままを伝えよ。

ありのままを伝えよ。

※この記事は,Nature Human Behaviour 誌が2020年1月21日に公開したEditorial(巻頭言) Tell it like it is を日本の社会心理学者3名が共同して翻訳したものです.

すべての研究論文は何らかの物語である。だが、その物語が「きれい」であるべきだという圧力は、科学的な努力にとって有害である。研究論文は、研究者がどのようにしてリサーチ・クエスチョンに取

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ご報告

恥ずかしながらコロナ禍のあおりを食らい失職しまして、8月より出版社の晶文社にてフルタイムで書籍編集の仕事をすることになりました。ほかの版元さんからも企画協力などの仕事をいただく予定でおります。

編集の仕事は新人だった国書刊行会以来25年ぶりであり、はたして私などにつとまるのかどうか不安でいっぱいですが、決まったものはしかたがない。せいぜいがんばります。

編集者から著者になるケースは多いが、著者

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『呪われた詩⼈たち』『アムール・ジョーヌ』刊⾏記念対談(前編)

『呪われた詩⼈たち』『アムール・ジョーヌ』刊⾏記念対談(前編)



ルリユール叢書から、ヴェルレーヌ『呪われた詩人たち』とコルビエール『アムール・ジョーヌ』の同時刊行を記念して、2020年2月19日(水)、下北沢のB&Bにて、翻訳者の倉方健作さんと小澤真さんのトークイベントを行いました。そのイベント模様を前編・後編の二回に分けてお伝えいたします。

倉方健作(くらかた・けんさく)
1975年東京生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程退学後、同研究科で博

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近世ヨーロッパの印刷物に関するデータベース

歴史学では、インターネットが普及してから、デジタルデータベースやアーカイブが次々に整備されるようになっています。TWITTERでは「#オンライン史料」で、インターネット上で利用できる様々な史料が紹介されています。

Togetter「オンラインで使える史料や歴史教材」

現在は前近代の印刷物に関するデータベースやデジタル・アーカイブもかなり整備されており、手軽にインターネット上で印刷物に関する情報

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■ポルトガルの詩人ペソアをわかりやすく紹介しようとしたら一万字を超えた話

■ポルトガルの詩人ペソアをわかりやすく紹介しようとしたら一万字を超えた話

■人生は意図せずはじめられてしまった実験旅行である。

自分について悩んだことのない人は、そんなにいないと思う。
誰かに恋したときなのか、あるチャレンジをして挫折したときなのか、人と比べて自分の人生が劣っていると思ったときなのか、それとも夜一人部屋で電気を消してベッドにポツンと大の字になってウォークマンを聴いたときなのかは人それぞれだろう。
そんなときの悩みは、だいたい「私っていったいなんなんだろ

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全国の書店を支えるため、Bookstore AID基金を開設します。参加書店・賛同人を大募集!

全国の書店を支えるため、Bookstore AID基金を開設します。参加書店・賛同人を大募集!

※プロジェクトが開始しました!以下は開始前の告知テキストです。(4月30日18時追記)

このプロジェクトについて新型コロナウイルスの感染拡大、そし全国に発令された緊急事態宣言によって、私たちの生活は大きく変わりました。外出自粛要請が続く中、あらゆる業態が困難な状況を強いられていますが、多くの書店もまた存続の危機にさらされています。

この「Bookstore AID基金」は、そんな町の本屋さんを

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ソクラテスの言葉——ギリシア語精読の旅

ソクラテスの言葉——ギリシア語精読の旅

はじめにソクラテスという人は有名なのでどこかで聞いたことがある人も多いだろう。今からずっと昔に生きたソクラテスという人は、街中を歩き回って人と対話しまくった人で、彼こそが「哲学の祖」と言われている。彼は裁判にかけられ、「哲学することをやめれば死刑を免れる」という条件を出されたにもかかわらずそれを拒み、「私は哲学することをやめない」と高らかに宣言した挙句、死刑になった人物である。

彼自身は何も書き

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