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おりたらあかんの読書ログ

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年間100冊を15年間続けてきました。でも、本当に知らないことばかり!というかアウトプットがまだ少ないなあと感じています。過去に読んだ本は「読書ログ」としてまとめてきたので、それ… もっと読む
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記事一覧

民藝の父、柳宗悦が残した「大切な視点」とは

民藝の父、柳宗悦が残した「大切な視点」とは

左から柳宗悦、バーナード・リーチ、濱田庄司、いずれも民藝運動の立役者だ。柳宗悦は河井寛次郎、濱田庄司と共に民藝という言葉を産んだ「民藝の父」と言われている。大正時代、それまで誰からも評価されず「下手物」と呼ばれていた日用品に照明をあて、「用の美」という新たな視点を打ち出した人物だ。

俺はつい最近までアアルトをはじめとする北欧のインテリア、建築、デザインにすっかり魅了されていた訳だが、「自然との調

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アアルト夫妻とフィンランドのデザインの魅力、そして日本との深い関係

アアルト夫妻とフィンランドのデザインの魅力、そして日本との深い関係

正直、アアルトというフィンランドの建築家のことを今まで知らなかった。
たまたまアングラ映画を見に行った時に「アアルト」という映画の予告編があって見たのがきっかけだ。

建築家と言えばガウディが個人的には好きなのだが、北欧という地域は俺にとって未知の領域であり、同時に踏み込んだら沼になる?ような予感がした。実際、今、その通りになっている。北欧の手工芸はテキスタイルをベースとして分厚い伝統を持ち、その

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月光荘という奇跡

月光荘という奇跡

「人生で必要なことは月光荘おじさんから学んだ」

という本が2017年に産業編集センターから出ていたが、俺は月光荘の存在も知らずに今になって橋本兵蔵という富山県出身の月光荘(画材店)の店主を知った。大正6年に店を開いて、100周年を記念して出た本らしい。巻頭のことばを抜粋してみる。

 この月光荘は国費を投じた研究所に先駆けて1940年に自宅炉にてコバルト・ブルーの製法を発見し、純国産の顔料から作

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田島木綿子「クジラの歌を聴け」山と渓谷社

田島木綿子「クジラの歌を聴け」山と渓谷社

「ザトウクジラの歌に涙腺崩壊!」
と国立科学博物館動物研究部の研究者である筆者は興奮気味に語る。
クジラだけでなく動物たちの求愛活動、種を維持するための活動を事細かに綴っている。興味深い話の連続だ。

ザトウクジラは秋を迎える頃、約30~40トンの巨体を揺らしながら、時速5~15キロで大海原を泳いで5,000キロメートル先のハワイや沖縄、小笠原諸島という海域へ向かう。その道程で求愛のためのソングを

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寺山修司「寺山修司 多面体」JICC

寺山修司「寺山修司 多面体」JICC

寺山修司ほど「アウトサイダー」ということばが似合う男はいないかもしれない。彼の代表作「家出のすすめ」に出てきた寺山節は20代の俺に多大な影響を与えた。

「人に悪口をいわれぬような人とはおそらく無能な人だろう」

「わたしは『おもいだされるような奴』になるよりは『忘れられない奴』になるべきだ、と思っています』」

「行けばいったでどうにかなる」というエネルギーを思想化することこそ重要」

「人が1

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早川ユミ「くらしがしごと」扶桑社  土着のフォークロア

早川ユミ「くらしがしごと」扶桑社  土着のフォークロア

「くらしがしごと」は陶芸家であり、柳宗悦とともに民藝運動の中心メンバーであった河井寛次郎の詩集「いのちの窓」の中の一節。著者をささえたこの一節が本のテーマになっている。

NO Art NO Life
成長至上主義から脱成長社会へ
そのパラダイムシフトにこそ人類の未来がある。
国や政府にたよらない「くらしのアナキズム」

単なる自給生活者ではなくその世界観をしっかり発信していることに価値があると俺

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ダニー・ネフセタイ「国のために死ぬのはすばらしい?」高文研 イスラエルからきたユダヤ人家具作家

ダニー・ネフセタイ「国のために死ぬのはすばらしい?」高文研 イスラエルからきたユダヤ人家具作家

イスラエル空軍での徴兵生活を終えているユダヤ人から日本を見たとき「何が見えたのか?」。キーワードは「帰還不能点」。「越えてはいけない限界点が何なのかを見極めよう」ということらしい・・。

その対象は「原発依存化」「軍事依存化」「右傾化」・・俺はゴリゴリの原発反対派ではないが、大いに頷ける点も多かった。

世界各地に散らばっていたイスラエル人たちは建国後、シオニズム運動によって<アラブに住んでいたパ

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フランチェスカ・ビアゼットン「美しい痕跡 手書きへの讃歌」みすず書房

フランチェスカ・ビアゼットン「美しい痕跡 手書きへの讃歌」みすず書房

著者はカリグラフィーの第一人者。ジュゼッペ・トルナトーレ監督『海の上のピアニスト』(1998)の題字、2006年トリノ冬季オリンピックのテーマ文字などを担当したこともある「手書き」の達人だ。

「手で書く」ことを生業にして生きてきた人のことだけあって、言葉の一つ一つが深く、重みと味わいがある。とても思いつかない表現の連続だ。デジタル化の中で忘れ去られようとしている「手書き」の価値を再発見させられた

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吉荒夕記「バンクシー 壊れかけた世界に愛を」美術出版社

吉荒夕記「バンクシー 壊れかけた世界に愛を」美術出版社

バンクシーに、はまった・・。知れば知るほど、ワクワク感がとまらない!

彼を生み出した土壌はイーストロンドン。いわばスラム街。ストリートアートやグラフィテイのあふれる「アンダーグラウンドでアナーキーな」街、プリストルで育まれた。多様性に溢れ、権力に媚びない街・・。そこを拠点に活動し続けた。だからこそ、バンクシーは覆面アーチストで居続けられるのだそうだ。「プリストルの英雄」バンクシーは市民が守ってい

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オリバー・バークマン「限りある時間の使い方」かんき出版(FOUR THOUSAND WEEKS)

オリバー・バークマン「限りある時間の使い方」かんき出版(FOUR THOUSAND WEEKS)

先月、久しぶりに紀伊国屋書店(富山店)にいったら、この本がベストセラーになっていたので、ペラペラとめくっていたら<ハイデガー>という無視できない人の名前が出ていたので、読んでみることにした。

エッセンスは下記の通り。まあビジネス本は、どうしてもそんな読み方になるかな?俺はこの本がきっかけで、ハイデガーの世界にしばし浸かることになってしまった。机上には分厚い「存在と時間」が・・(大汗!)。ああ、ま

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北川東子「ハイデガー」NHK出版

北川東子「ハイデガー」NHK出版

ハイデガーの「存在と時間」を前に途方にくれているのもつまらないので、入門書!ということで図書館でこの本を借りてきた。「シリーズ・哲学のエッセンス」の中の一冊だ。こういう入門書は大事だよなぁ^^!

「存在」の専門家がいてもいいじゃないか?

そんな問いかけから始まった。ハイデガーが試みた「基礎存在論」「現存在分析」。これで我々の存在をある程度考察できる。存在論とは「存在そのもの」について考える思考

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エルジェビェータ・エティンガー「アーレントとハイデガー」みすず書房

エルジェビェータ・エティンガー「アーレントとハイデガー」みすず書房

図書館でハイデガー関連書を検索していて、偶然みたこの表題に「え!?」思わず息をのんだ。ハンナ・アーレントとハイデガーが何の関係?いやはや驚いた。もう不倫ドラマなんてもんじゃない。あらゆる情念的なものを飛び越えた関係をこの二人を持ち続けた、半世紀以上も前に・・。

ハンナ・アーレントは映画化もされているが、「全体主義の起源」で有名な世界的な哲学者、思想家だ。ユダヤ人知識人としてナチスドイツのアイヒマ

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