さかなとムシの研究所

在野で魚類に寄生する寄生虫について研究しているチームです。学術的な研究ばかりではなく、…

さかなとムシの研究所

在野で魚類に寄生する寄生虫について研究しているチームです。学術的な研究ばかりではなく、魚類やそれに寄り添って生きる動物について、多くの人に興味や関心を持ってもらうことを目的にしています。 https://twitter.com/Fish_Worms_Lab

マガジン

  • きまぐれ生物図鑑

    日頃の研究中に発見した生物を気の向くままに紹介します。

  • 生物あるある

    寄生虫のことをより知ってもらうために、高校生物について解説します。高校の定期試験対策・大学受験・大人の学び直しなど、たまには人のためになることをしようと思っています。

  • えらのむしマガジン

    自分の研究や巷を賑やかしている寄生虫のあれこれについて説明・紹介しています。身近な生き物である寄生虫を怖がらないでください。

  • 漁港めぐり

    調査で訪れた漁港を魚と一緒に紹介しています。地元のお魚を知って、食べるきっかけにしてくれると嬉しいです。

  • おてがる理科実験

    身近な(家にあるもの)があればできる実験と身近なものの顕微鏡画像の紹介です。小中学生の自由研究の手助けになればと思って書いています。

記事一覧

固定された記事

はじめに〜魚の寄生虫と動物分類〜

私は、兵庫県の私立高校に勤務しながら魚類の寄生虫を研究しています。 この度は、寄生虫研究のアウトリーチと備忘録を兼ねてこのnoteを利用することにしました。 今後の内…

見たことのない寄生虫

先月の下旬に岡山に魚を買いに行った時に、前回のアオハタと一緒にイトヨリを購入しました。日本全国で食べられている白身魚ではありますが、関西では高級魚として好まれて…

寄生虫がついている顔している

先月の下旬に岡山に魚を買いに行きました。魚を買いに行ったのはいいものの、兵庫県と岡山県の県境にある地域(相生、赤穂、日生、備前)は、牡蠣が名物だったりします。そ…

体の中の通信手段

今回からは、「体内での情報伝達と調節」についてお話しします。これの分野では、体の調子を一定に保っておくために、体がどのように連携しているかということです。例えば…

ダツ目は寄生虫と仲良し!?

4月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。サヨリに寄生している単生類は、現在研究対象の寄生虫です。また、みんな大好きウオノエも寄生し…

遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

ゲノムと染色体 遺伝子とDNAの違いは覚えているでしょうか?DNAは遺伝情報の書かれた紙(物質)で、遺伝子はその内容(ものはない)です。また、DNAはとても細長い糸のよ…

マアジの中にいたアイツ

今月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。色々期待して購入したマアジでしたが、発見した寄生虫はアニサキスだけでした。今回発見したアニ…

論文が出版されました4

今回出版された論文は、以前にnoteで紹介したマナガツオという魚のエラに寄生している単生類の再記載論文です。マナガツオは、瀬戸内海に面する地域ではよく食べられますが…

平清盛と寄生虫

今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行った時の話の続きです。魚だけ見て帰るのはもったいなかったので、音戸の瀬戸公園に行って少しだけ桜をみてきました。今頃は、ツ…

細胞の役割分担

私たちヒトの体は、約60兆個の細胞でできていると言われています。ちなみに、この60兆個の細胞は、もともと1つの受精卵という細胞が、何回も細胞分裂を行って増えていきま…

片山病の跡地を散策

今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行ったのですが、その時にあるところに寄ってきました。魚を購入した鞆の浦から10kmほど北上したところに片山という小高い山があり…

お口の中からこんにちは!

寄生虫調査のついでや身の回りにいる生物を私の趣味で紹介している「きまぐれ生物図鑑」のYoutube移行第三弾です。以前、紹介したマダイの寄生虫の動画版になります。 マ…

アミノ酸数珠繋ぎ

遺伝子の発現によってタンパク質ができるという話を前回しましたが、そもそもタンパク質とは何か説明していませんでした。酵素が触媒として働くことができるのも、タンパク…

転写と翻訳

生物の解説を始めた時に、生物の最小単位は細胞であり、タンパク質を作ることが主な役割であることをお話ししました。今回は、そのタンパク質を作ることについての、もっと…

ノロゲンゲ ver1.2

寄生虫調査のついでや身の回りにいる生物を私の趣味で紹介している「きまぐれ生物図鑑」のYoutube移行第三弾です。以前、紹介したノロゲンゲの動画版になります。 この時…

分裂と時間

細胞内にあるDNAはヒストンというタンパク質に巻きついており、それが折り重なるようにして核の中に収納されています。そのため、DNAは核内では棒状で存在しており、染色体…

はじめに〜魚の寄生虫と動物分類〜

はじめに〜魚の寄生虫と動物分類〜

私は、兵庫県の私立高校に勤務しながら魚類の寄生虫を研究しています。
この度は、寄生虫研究のアウトリーチと備忘録を兼ねてこのnoteを利用することにしました。
今後の内容は、自分の研究や自分の発見した寄生虫の紹介・調査の風景や調査で発見した動物・寄生虫の小話になると思います。

魚の寄生虫といえば、サバやイカの身の中にいるアニサキスやタイの口の中にいるタイノエを思い浮かべるのではないでしょうか?

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見たことのない寄生虫

見たことのない寄生虫

先月の下旬に岡山に魚を買いに行った時に、前回のアオハタと一緒にイトヨリを購入しました。日本全国で食べられている白身魚ではありますが、関西では高級魚として好まれています。時期がずれると価値が下がるのか、夏に漁港で直接魚を買うと、二束三文で譲ってくれたりします。そのため、寄生虫の検査は何度かしたことあるのですが、狙いの寄生虫を見つけたことがありませんでした。

今回は特定の寄生虫がいるかどうかではなく

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寄生虫がついている顔している

寄生虫がついている顔している

先月の下旬に岡山に魚を買いに行きました。魚を買いに行ったのはいいものの、兵庫県と岡山県の県境にある地域(相生、赤穂、日生、備前)は、牡蠣が名物だったりします。そのせいで、岡山の地魚を買うことができませんでした(一応買いましたが)。そんな中、衝動買いしたのが、アオハタです。

アオハタはアカハタ属の魚類で、あの高級魚のキジハタのお仲間です。ただ、あまりキジハタほどありがたがられたいないのか、高くもな

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体の中の通信手段

体の中の通信手段

今回からは、「体内での情報伝達と調節」についてお話しします。これの分野では、体の調子を一定に保っておくために、体がどのように連携しているかということです。例えば、気温が上昇すると汗をかく、走ると心拍数が上昇して息が上がる、などです。これらは、体が勝手にやってくれていることですよね?自分で汗をかこうと必死になっても出てきませんが、気温が上がると勝手に流れてきます。これは、体の中のどこかで温度があがっ

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ダツ目は寄生虫と仲良し!?

ダツ目は寄生虫と仲良し!?

4月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。サヨリに寄生している単生類は、現在研究対象の寄生虫です。また、みんな大好きウオノエも寄生していることがあります。サヨリが属しているダツ目には、よく寄生虫がいます。例えば、サヨリの甲殻類やメダカのサンダイチュウなどでしょうか。そして、世界中に50種、日本だけでも30種いると言われているトビウオには、あるグループに属する単生類が寄生

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遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

遺伝子に関する話を最後に3つして終わります

ゲノムと染色体

遺伝子とDNAの違いは覚えているでしょうか?DNAは遺伝情報の書かれた紙(物質)で、遺伝子はその内容(ものはない)です。また、DNAはとても細長い糸のようになっています。私は、この説明の時に今は無き?有線のイヤホンの話をします。有線のイヤホンを無造作にカバンの中に入れておくと、線がからまってしまいます。それを防ぐために何かに巻き付けておくのですが、DNAでも同じで、ヒストンという

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マアジの中にいたアイツ

マアジの中にいたアイツ

今月の頭に広島県福山で購入した魚を調べた時の様子を動画にまとめました。色々期待して購入したマアジでしたが、発見した寄生虫はアニサキスだけでした。今回発見したアニサキスは、生物に興味がある人にとっても想定外のところに潜んでいました。油断して生食したら大変なことになっていたかもしれません。

アニサキスについては、以前に記事にもしましたが、動画でもわかりやすく説明しました。まだ、動画にできていない魚が

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論文が出版されました4

論文が出版されました4

今回出版された論文は、以前にnoteで紹介したマナガツオという魚のエラに寄生している単生類の再記載論文です。マナガツオは、瀬戸内海に面する地域ではよく食べられますが、関東ではほとんど食べられない魚です。「西にサケなし、東にマナガツオなし」とも言われています。流通する量が少ないことから、たいへん高級な魚になっています。現在手元に寄生虫の標本が大量にあるのですが、マナガツオの単生類を優先して論文にした

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平清盛と寄生虫

平清盛と寄生虫

今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行った時の話の続きです。魚だけ見て帰るのはもったいなかったので、音戸の瀬戸公園に行って少しだけ桜をみてきました。今頃は、ツツジが見頃になっているのではないでしょうか?音戸の瀬戸といえば、平清盛です。貴族社会から武家社会へ政治を動かした平清盛ですが、けっこう寄生虫に苦しめられていたようです。今回の調査では偶然にも、平清盛と関連している生き物を見つけることができま

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細胞の役割分担

細胞の役割分担

私たちヒトの体は、約60兆個の細胞でできていると言われています。ちなみに、この60兆個の細胞は、もともと1つの受精卵という細胞が、何回も細胞分裂を行って増えていきます。当然、中に含まれているDNAはすべて同じです。しかし、私たちの体は多様な器官があります。これは細胞の種類が異なっているためで、ヒトの場合約270種類あると言われています。同じDNAを持っている細胞なのになぜ種類が違っているのでしょう

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片山病の跡地を散策

片山病の跡地を散策

今月の初めに広島県福山市に魚を購入しに行ったのですが、その時にあるところに寄ってきました。魚を購入した鞆の浦から10kmほど北上したところに片山という小高い山があります。かつて、この地には「片山病」と呼ばれる地方病が流行していました。

片山病は、水田に入ると湿疹ができ、しだいに体に不調が現れ、腹水がたまるなどしてなくなってしまう不治の病でした。この病気の究明に、地元の医師の藤井好直と吉田龍蔵、京

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お口の中からこんにちは!

お口の中からこんにちは!

寄生虫調査のついでや身の回りにいる生物を私の趣味で紹介している「きまぐれ生物図鑑」のYoutube移行第三弾です。以前、紹介したマダイの寄生虫の動画版になります。

マダイの寄生虫はかなり研究されているので、自分の研究のためにマダイを買うことはありませんでした。ただ、動画のために購入して解剖したところ、思った以上に寄生虫が出てきました。やはり、マダイはすごいです。

みんなん大好きタイノエも出てき

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アミノ酸数珠繋ぎ

アミノ酸数珠繋ぎ

遺伝子の発現によってタンパク質ができるという話を前回しましたが、そもそもタンパク質とは何か説明していませんでした。酵素が触媒として働くことができるのも、タンパク質が立体構造をとっているからです。ここでは、タンパク質について説明します。

アミノ酸のつながり

タンパク質はアミノ酸がつながってできたものです。そのアミノ酸の構造は、炭素を中心にアミノ基、カルボキシル基、水素、側鎖が結合したものになって

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転写と翻訳

転写と翻訳

生物の解説を始めた時に、生物の最小単位は細胞であり、タンパク質を作ることが主な役割であることをお話ししました。今回は、そのタンパク質を作ることについての、もっと詳しい解説となります。生物では大きな流れをおさえることが重要です。ここでは、「転写→スプライシング→翻訳」の順番で進んでいくと知っておいて下さい。

転写

「これからタンパク質を作るぞ!」となった時、DNAのそのタンパク質の設計図になって

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ノロゲンゲ ver1.2

ノロゲンゲ ver1.2

寄生虫調査のついでや身の回りにいる生物を私の趣味で紹介している「きまぐれ生物図鑑」のYoutube移行第三弾です。以前、紹介したノロゲンゲの動画版になります。

この時よりも取れた寄生虫は少なかったですが、動く寄生虫が見られます!あと、なんかキャンプ場の紹介が時間の3分の1をしめていたります。よろしければ、チャンネル登録や高評価をしていただけると嬉しいです。

分裂と時間

分裂と時間

細胞内にあるDNAはヒストンというタンパク質に巻きついており、それが折り重なるようにして核の中に収納されています。そのため、DNAは核内では棒状で存在しており、染色体と呼ばれています。細胞は分裂するときに、染色体を新たにできる細胞へ正確に分配する必要があります。まずは、その分配のお話を。

分裂は4段階

染色体を丁寧に分けるために、分裂は4段階に分かれています。

前期:染色体が形成され、核膜が

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