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最近、世の中が海から水槽に変わってきている

個人的な感想だけど、なんか世の中がだんだん海から水槽に変わってきてるね。

すごい清潔で安全で快適なんだけど、危険な魚とかユニークな生き物、場所や活動がなくなってきている。退屈な世の中で、かなり極端に言えば現代人の楽しみはスマホしかない。

今でも貧困問題はあるけど、戦後に比べれば現代はほとんどのものが揃っている。食べ物は毎日与えられるエサのようにコンビニでいつでも買えるし、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、給湯器、スマホと快適な生活に必要な物は全て身の回りにある。昭和に比べれば全てが清潔で安全だ。それは水槽と似ている。水は綺麗でエサも常にある。危険な敵もいない。その中で楽しいか退屈か分からない無表情な顔をした魚が左右を往復している。

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海に行けばもっとエキサイティングなんだろうけど、エサが手に入るか分からないし、凶暴な魚もいる。波も荒い。有害な油、汚染水など安全な環境は保証されない。だから退屈だけど今の水槽の快適な生活は捨てがたい。でもこのままの人生でいいのか?もっと楽しみたい!もっとはじけたい!でもどうすればいいのか分からない。。と、生き甲斐が見出せず、楽しいとも苦しいとも分からない無表情で、ボンヤリと毎日を過ごす現代人は水槽の魚に似ている。

人間の場合、海という別の選択肢があるわけではないので、現代の綺麗な水槽の中で生きるしかない。もちろん海に近い状態だった昭和みたいな社会に変えることも出来る。数十年かけて現代人は自分達で安全、清潔、便利、情報技術、インターネット、スマホを選択し、現在の水槽の様な世の中を作り上げた。

平成の中期から少子高齢化の影響もあって、町のお祭りやイベントも無くなってきた。ラジオ体操も減少。コロナのせいでこの勢いがさらに加速している。住民はみんな疲弊しているしお金や場所の問題もあるから、コロナ後に再開されずにそのまま消滅してしまう可能性もある。

以前読んだ本によると、世界は1990〜2000年くらいから「発信、活発な人」が多数だった「革新的フェーズ」から「無関心、冷めた人」が多数の「保守的フェーズ」に突入しているらしい。自分で何か発信する人が減り、多くの人が観客側を好み、無関心、または見ても冷めた態度を取る風潮がトレンドになっているそうだ。

これは欧米の芸術と一緒で、大昔はシンプルで堅実、保守的な「ゴシック主義」が流行り、それをつまらないと考える流れから、派手なデザインやきらびやかな装飾の「バロック主義」が生まれた。次にそれを過激だと思う人々が「新古典主義」でゴシックに戻るという保守思想を復活させた。次に保守はつまらないと再び考えた人々がきらびやかな「ロマン主義」を作り上げた。

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つまり芸術のトレンドは数十年単位で交互に繰り返されていて、現代は派手は好まれず「簡素、静か、落ち着いた」物が好まれるようだ。派手なデザインの服やモノは敬遠され、ユニクロや無印良品等のシンプルなアイテムが流行っているのはこの保守的なフェーズの時代に私達が生活しているからだ。

バブルを知る40、50代以上はユニクロの服は無地でつまらないと感じていた人も多いはずだ。「なんのデザインも飾りもないTシャツなんか3枚1セットの安物みたいで着れるかよw」みたいな感じだ。筆者もそう思っていた派だが、今ではユニクロやGUで普通に無地でシンプルな服を買っている。

もちろん若い人でお笑いのEXITみたいに派手な服を着ている人もいるが、大きな流れとしては「単純でシンプル」が主流だろう。服と同じように社会行動も「奇抜で派手な事」はせずに、なるべくシンプルで目立った事はしない。コンプライアンスを気にして問題を起こさない。というのが主流になっている。

お祭りの減少、暴走族の減少、海のサメのようなヤクザの減少、喧嘩も見ない。口喧嘩すら見ない。ユニークな店の減少。ユニークな人の減少。汚い店や路上に散乱したゴミもほとんど見なくなってきた。社会がもの凄くスマートかつ清潔になってきている。

お笑いの中川家が真似をするような大阪のユニークなオジサンも今ではほぼ「絶滅危惧種」ではないだろうか?今は監視社会で少しでも変な行動をしたり、変わった店を出すとすぐ叩かれるから誰もやらない。みんな消極的になり「事なかれ主義」が蔓延。面倒な事は極力おこさないように常に周囲に気を使い、もの凄く神経質になっている。

平成の初期くらいまでは子供の遊びでも、爆竹で遊んだり、空気銃でサバイバルゲーム、缶蹴り、水風船戦争、雪合戦、自転車レース、落ちてるエロ本探し、ピンポンダッシュ(他人の家のインターホンを鳴らして逃げる)などいろいろあって、そこら辺の公園や道端でやっていた。中学、高校ではテレビドラマの「スクールウォーズ」や「ロクでなしブルース」のように不良が学校のガラスを割ったり、喫煙、バイクを校内で乗り回すなどいくらでもあった。

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今は少子化の影響と同時に社会全体がクリーンな方向に進んでいるから活発な遊びが減っているのだろう。室内ゲームの発達やデジタル技術とネットの監視等いろいろな要因もあって、そういった子供の過激な外遊びや不良文化は見なくなってきている。今やイジメや喧嘩もスマホ上だ。大人の遊びでも少しでもユニークだったり派手な事をすればネットで問題になり、地域や警察に規制されることになる。どんどん人々が型にはまり、萎縮し、こじんまりしてきている。清潔で安全だが、なんの面白みもない味気ない時代だ。

大人でも昔は飲酒運転、公園でエッチ、ビニール袋でシンナーを吸ってるヤンキー、深夜のドリフト走行、何百台の暴走族、道端でナンパ、なんか普通にいた。40代、50代のバブル世代で若い頃メチャクチャやった人は多いだろう。現代は情報技術の発展と監視社会、上に書いたように「冷めた雰囲気」が蔓延してるから、そういったものはほとんど姿を消した。これは単純に時代の流れだと思う。今のYouTuberがやっている過激映像など昭和生まれの人間からしたらママゴトのようなもんだ。

日本人は昔からあまり感情を表に出さない民族だが、さらに拍車がかかって今では感情がなくなったような人も多い気がする。笑いも怒りもせず無表情でスマホをひたすら眺めるという状態だ。電車やバスに乗れば20人でも30人でも見られる。もちろん筆者も周りの人から見れば同じかもしれない。

実は、この「ゴシック主義」のような「保守的で大人しく消極的」なトレンドは海外でも同じだ。電車やカフェでスマホを長時間眺めている人も多い。ユニークなイベントやお祭りが安全性や差別、環境問題などを理由にどんどんなくなってきている。スペインの闘牛も無くなりつつある。日本人がイメージする欧米の路上パフォーマーも今では数が減ってきている。

アメリカの有名な女優が気に入らないスタッフを叩いたことが大きなニュースになって、訴えられたその女優は「昔はこんなの普通だったわ。つまらない世の中になったもんね」とコメントした。

つまりこの「安全、消極、保守的」な流れは世界共通という事だ。確かジブリアニメのゲド戦記で老人が主人公に「これは日本だけじゃない、世界中でおきているんだよ」というセリフがあったが、ファッションやお祭り、イベントだけにとどまらず、環境問題、経済格差、砂漠化、昆虫、動物の絶滅など世界規模で同じ問題を抱えているのだろう。

少し話はずれるが、今ではアマゾンやモンゴルの遊牧民、アフリカの少数民族もスマホを持っている。格安航空やIT技術の発達で世界は小さくなってきている。アフリカのマサイ族も普通にスマホを持ち、裸で槍を持ちジャンプする伝統的なパフォーマンスは観光客が来た時にしかやらないらしい。先進国のスタイルがインターネットのSNSやYouTubeで広がっていくと若者が影響を受け、その国の独特なファッションや文化が変化する。場合によっては伝統的な文化が消滅していく。

昔は着物と袴を着てちょんまげをしていた日本人がいつの間にか洋服を着るようになったのと同じだ。若い人はマクドナルドのハンバーガーを食べコーラを飲むようになるから食文化も変わっていく。全ての文化が消える事はないだろうが、世界中が何もかも欧米化していくのもどうかと思う。

家ではシリアルを食べ、YouTube、Netflixを見て、週末はショッピングモールやコストコで買い物をする。昭和では考えられない生活だ。まあそれだけ欧米のライフスタイルが世界中の人々にとって魅力的で快適だということだろう。

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アフリカの少数民族も以前は土で髪を洗っていたが、村に来たユニリーバの営業マンによって今はシャンプーを使っているらしい。色が綺麗で匂いも良く、綺麗な女優がCMで使っていれば若い人は当然使いたくなるだろう。しかしその使用水が畑や川に流されるので汚染の原因になっているという話もある。

欧米の製品が魅力的なのは分かるが、この世の中に「絶対」はない。場合によっては使用する事で社会や環境に悪影響を及ぼす場合もあるだろう。欧米の先進国はお金を持っていて宣伝、営業が巧みで、ビジネスが非常に上手い。大量の広告でオシャレでカッコイイというイメージを人々に植え付ける。

Google、アップル、Amazon、YouTube、Instagram、Netflix、コカコーラ、マクドナルド、KFC、NIKE、スターバックス、ネスカフェ、VISA、Uberイーツ、などを日本人は毎日使っている。しかしそれによって「失ったもの」やマイナスもあるはずだ。例えば客の減った近所の小売店が潰れたり、高カロリーのファストフードによる肥満、TSUTAYAの閉店、など数えればいくらでもある。

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世界の発展途上国がどんどん欧米化されると海外旅行に行った時に見える景色が同じになる。ショッピングモール、ファーストフード店が増え、その国独自の文化・伝統が消えていくのは寂しい気もする。

現代では安全性も格段に上がってきている。日本の交通事故や犯罪数は年々減少傾向だ。車の性能の向上、駅のホームドアの設置。街の監視カメラの影響もあるだろう。テレビでも危険な体を張るお笑い企画は減少している。スポーツでも野球の乱闘も滅多に見なくなった。昔はエースのピッチャーを週に何回も投げさせていたが今ではあり得ない。街中や職場でも昔に比べて安全性が向上していると感じている人は多いはずだ。

怪我をしたり死亡するのは誰も望まないから、安全を重視するトレンドはこれからも続いていくだろう。しかし、ファッションやお祭り、イベントの「保守的なフェーズ」はもうすぐ終わるかもしれない。

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上に書いたように世の中のトレンドは「革新的」と「保守的」を交互に繰り返している。もしかすると数年後には今の閉塞感に満ちた、消極的な時代が終わり「シンプル、地味、保守的」に飽きた世界中の人々が再び活性化するかもしれない。ファッションやお祭り、イベントで多くの人が自己表現を爆発させる時代が来る可能性はある。

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