カーツ大佐

活字中毒の自覚はあったのですが、最近自身で書くことも好きなんだと気がつきました(今頃!…

カーツ大佐

活字中毒の自覚はあったのですが、最近自身で書くことも好きなんだと気がつきました(今頃!)。長いこと国際教育に携わっていました。村上春樹はかれこれ40年近く読んでます。アメリカ文化を調べたりするのが好きです。ワインは毎日飲んでます。海の近くに住んでいます。ヨガやってます。

記事一覧

固定された記事

常盤新平のこと

ダ・カーポという雑誌がその昔あって、比較的熱心な読書だった。連載コラムで常盤新平が日々食べたものや行った場所をつれづれに語る日記のような雑文記があり、肩の力が抜…

3

豊かな人生を送るには、やっぱり本を読んだり、映画を観たりが一番いいんじゃないか説 〜國分功一郎を読んで〜

村上春樹の『羊をめぐる冒険』の読書会があり、30数年ぶりに再読してみたらコンラッドの『闇の奥』に影響を受けていることに気がついた。その『闇の奥』は、大好きなコ…

カーツ大佐
4か月前
2

「プレーンマフィンにはプレーンマフィンの良さがある」

「風の歌を聴け」を読んだのは、かれこれ40年前になるのかと知り愕然としている今日この頃ですが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか?どんな書き出しなん?すみません。…

カーツ大佐
11か月前
1

もしも、-村上春樹の短編-「蜂蜜パイ」の登場人物のうち、誰か一人と友達になるとしたら。

通っている読書教室で、登場人物3人のうち誰だったら友達になれそうかについて書くという宿題が出ましたので、日本語・英語版それぞれこんな感じに仕上げてみました。 蜂…

カーツ大佐
11か月前
7

What is The Stone of Murakami Haruki’s Thailand?

Nimit does not allow Satsuki to tell what happened after his father died. I wonder why he does. It is known that suffered people are healed through telling some…

1

村上春樹:タイランドの「石」について考えてみた。

通っている読書教室で、物語のキーワードである「石」について書くという宿題が出ましたので、こんな感じに仕上げてみました。 カウンセリングのように、過去の辛い体験を…

7

理想の休暇を妄想する。

通っている読書教室で、理想の休暇について書くという宿題が出ましたので、こんな感じに仕上げてみました。 人間は知りたいと考えたことを知ることでも賢くなるが、あらか…

3

My Ideal Vacation

You can be wiser to know what you want to know. You can be much wiser to know what you even don't know whether it exists or not. Also, you can be much wiser to…

My Memory of Thailand: I was just supposed to change planes in Bangkok

I write an article every two weeks in this magazine. This is my 3rd essay. Honestly, I have struggled to write sentences because my editor of the magazine giv…

1

タイの思い出:入国する予定はなかったのに。

通っている読書教室で、タイの思い出を書くという宿題が出ましたので書いてみました。 この連載も3回目。月に2回のペースで書いているのだけれど、編集長から発注されるテ…

1

インターネット空間のほんとうの景色

「What you see with your eyes is not necessarily real. (目に見えるものがほんとうのものとは限らない)」 通っている読書教室で、村上春樹の作品(かえるくん、東京…

1

The True View in The Cyberspace

There are those people who are addicted to biased views and ideologies in the ”Echo Chamber” or the ”Filter Bubble” phenomena in the cyberspace, which make …

冷戦時代の安定とその後に訪れた不寛容な時代

「I just think that, as far as the world is concerned, it is in a sense all right for XX like YY to exist. (YYのようなXXも、ある意味では、世界にとってあっても…

3

The Era of Intolerance Followed by Stable Situation During the Cold War

Having tons of nuclear missiles which can easily destroy the whole earth, the U.S. and U.S.S.R. had been facing-off up for about 45 years. I still remember I f…

2

もしも村上春樹がクリスマスパーティーの二次会で記憶をなくしたら

気づいた時にはまるでサン・ジョヴァンニ教会で洗礼を受けている聞き分けのよい古代ローマ時代の赤ん坊みたいに、僕はバスタブですやすや寝ていた。 「アルゼンチンが前半…

2

昭和の東京の名画座

ショッピングモールという浄化された健全な場所のシネコンで映画を観るのはそれはそれで快適で良い。でも、50年近く前にうらぶれた小さな名画座で観た映画のことを今でもよ…

4
常盤新平のこと

常盤新平のこと

ダ・カーポという雑誌がその昔あって、比較的熱心な読書だった。連載コラムで常盤新平が日々食べたものや行った場所をつれづれに語る日記のような雑文記があり、肩の力が抜けていて飄々とした語りが好きだった。僕も馴染みのある銀座や神保町周辺、それから町田がよく登場して知っているレストランや酒場が出てきた。都心は出版社との打合せの行き帰りで、町田はたぶん自宅が成瀬かつくし野辺りに住んでいたからなんだと思う。その

もっとみる
豊かな人生を送るには、やっぱり本を読んだり、映画を観たりが一番いいんじゃないか説 〜國分功一郎を読んで〜

豊かな人生を送るには、やっぱり本を読んだり、映画を観たりが一番いいんじゃないか説 〜國分功一郎を読んで〜

村上春樹の『羊をめぐる冒険』の読書会があり、30数年ぶりに再読してみたらコンラッドの『闇の奥』に影響を受けていることに気がついた。その『闇の奥』は、大好きなコッポラの名作『地獄の黙示録』の下敷きになっている。そこで映画を再度観て、名解説本である立花隆の『解読「地獄の黙示録」』をもう一度読んでみた。すると、立花が映画の主人公カーツ大佐をナポレオンと対比して論じていたので、公開中のリドリー・ス

もっとみる
「プレーンマフィンにはプレーンマフィンの良さがある」

「プレーンマフィンにはプレーンマフィンの良さがある」

「風の歌を聴け」を読んだのは、かれこれ40年前になるのかと知り愕然としている今日この頃ですが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか?どんな書き出しなん?すみません。

さて、久しぶりの長編「壁とその不確かな壁」ですが、今回は偶然がいろいろと重なり、読書会にも参加することになり(一時間半では語り尽くせるはずもなく、第2回目も開催されました)、これまでの作品の中で最も真剣に読み込んだのでした。

僕とし

もっとみる
もしも、-村上春樹の短編-「蜂蜜パイ」の登場人物のうち、誰か一人と友達になるとしたら。

もしも、-村上春樹の短編-「蜂蜜パイ」の登場人物のうち、誰か一人と友達になるとしたら。

通っている読書教室で、登場人物3人のうち誰だったら友達になれそうかについて書くという宿題が出ましたので、日本語・英語版それぞれこんな感じに仕上げてみました。

蜂蜜パイの登場人物3人の中から友達を選んでね、という厄介なオーダーが編集長から入り、僕は途方にくれた。まるで夏休み最後の日の晩に、ほぼ白紙の絵日記の宿題を眺めている小学生みたいに。

高槻はクラスに必ず一人はいそうな快活な男で、友達になった

もっとみる
What is The Stone of Murakami Haruki’s Thailand?

What is The Stone of Murakami Haruki’s Thailand?

Nimit does not allow Satsuki to tell what happened after his father died. I wonder why he does. It is known that suffered people are healed through telling somebody what happened in the past. How can

もっとみる
村上春樹:タイランドの「石」について考えてみた。

村上春樹:タイランドの「石」について考えてみた。

通っている読書教室で、物語のキーワードである「石」について書くという宿題が出ましたので、こんな感じに仕上げてみました。

カウンセリングのように、過去の辛い体験を誰かに語ることで、その語り手は癒やしを得ることが出来ると思うのだが、ニミットはさつきが話すことを許さない。これは一体どう理解すべきなのだろう。

僕なりに解釈してみた。「言葉は嘘になる」、そして「言葉は石になる」。つまり発した言葉は嘘、す

もっとみる
理想の休暇を妄想する。

理想の休暇を妄想する。

通っている読書教室で、理想の休暇について書くという宿題が出ましたので、こんな感じに仕上げてみました。

人間は知りたいと考えたことを知ることでも賢くなるが、あらかじめ存在するとも知らず、知りたいと思わなかった知識を知ることで、さらに賢くなることができる。ー山崎正和-

連載4回目。タイに関する前回の原稿は無事書き上げ、今日の午後編集長に手渡してきた。読み終えると彼女は、「そうね、悪くないわね」と、

もっとみる
My Ideal Vacation

My Ideal Vacation

You can be wiser to know what you want to know. You can be much wiser to know what you even don't know whether it exists or not. Also, you can be much wiser to know what you don't want to know. -Ma

もっとみる
My Memory of Thailand: I was just supposed to change planes in Bangkok

My Memory of Thailand: I was just supposed to change planes in Bangkok

I write an article every two weeks in this magazine. This is my 3rd essay. Honestly, I have struggled to write sentences because my editor of the magazine gives me some kind of difficult theme every

もっとみる
タイの思い出:入国する予定はなかったのに。

タイの思い出:入国する予定はなかったのに。

通っている読書教室で、タイの思い出を書くという宿題が出ましたので書いてみました。

この連載も3回目。月に2回のペースで書いているのだけれど、編集長から発注されるテーマが毎回なかなか難解で、僕の心の抽斗を覗いて見てもヒントらしきものになかなか行き当らず、方向性を決めるだけで数日かかっている有様。それにはちゃんと理由があって、このエッセイを書くにあたって一つだけ自分に課していることがある。それは事実

もっとみる
インターネット空間のほんとうの景色

インターネット空間のほんとうの景色

「What you see with your eyes is not necessarily real. (目に見えるものがほんとうのものとは限らない)」

通っている読書教室で、村上春樹の作品(かえるくん、東京を救う)中の一文を使って文章を書くという宿題が出ましたので書いてみました。(英語版"The True View in The Cyberspace"も書いてみましたので合わせてお読みいた

もっとみる
The True View in The Cyberspace

The True View in The Cyberspace

There are those people who are addicted to biased views and ideologies in the ”Echo Chamber” or the ”Filter Bubble” phenomena in the cyberspace, which make our society more unstable.

The Echo Chamber

もっとみる
冷戦時代の安定とその後に訪れた不寛容な時代

冷戦時代の安定とその後に訪れた不寛容な時代

「I just think that, as far as the world is concerned, it is in a sense all right for XX like YY to exist. (YYのようなXXも、ある意味では、世界にとってあってもかまわないものなのだろうと考えています。)」

通っている読書教室で、村上春樹の作品(かえるくん、東京を救う)中のある一文を使って文

もっとみる
The Era of Intolerance Followed by Stable Situation During the Cold War

The Era of Intolerance Followed by Stable Situation During the Cold War

Having tons of nuclear missiles which can easily destroy the whole earth, the U.S. and U.S.S.R. had been facing-off up for about 45 years. I still remember I felt fear when the tension got high betwee

もっとみる
もしも村上春樹がクリスマスパーティーの二次会で記憶をなくしたら

もしも村上春樹がクリスマスパーティーの二次会で記憶をなくしたら

気づいた時にはまるでサン・ジョヴァンニ教会で洗礼を受けている聞き分けのよい古代ローマ時代の赤ん坊みたいに、僕はバスタブですやすや寝ていた。

「アルゼンチンが前半で2点取ったぜ」。僕は小人が耳元で囁いてくれたおかげで目を覚ますことができた。決勝戦のホイッスルは既にカタールで吹かれ、メッシがPKを難なく決め、入れ墨の入った右腕を高く掲げていた。

最後の記憶は、ゆかに藤沢駅で遙か彼方昔の人類ついて聞

もっとみる
昭和の東京の名画座

昭和の東京の名画座

ショッピングモールという浄化された健全な場所のシネコンで映画を観るのはそれはそれで快適で良い。でも、50年近く前にうらぶれた小さな名画座で観た映画のことを今でもよく覚えているというのは、ひょとしたら多少ダークな雰囲気を持っている映画館の方が非日常感があって、作品がより人の心に刺さる効果をもたらすのかもしれない。

名画座って何?という方に少し説明すると、昭和時代、ロードショーで封切された映画は一定

もっとみる