つづき
短編小説を集めました。 800字から2000字程度です。
タネカラプロジェクト関連記事。エッセイ。 活動の内容、想いを書いています。タネカラプロジェクトとは地元に根差した「育苗」「植林」の活動ですが、タネの不思議、地域の森に触れ、感じることで育つものを大切にしていく、長いスパンの活動です。 詳しくはこちら。https://tanekarap.jimdosite.com/
文学フリマに関連する記事です。本の紹介や当日のエッセイ、振り返りなど。
ベージュのマフラーを巻きなおしながら、幸子は待ち合わせ場所を変えればよかったと首をすくめた。風が思ったより冷たい。待ち合わせの時間までまだ少しある。さっき駅のト…
植物園に行って、知らない木に咲いた知らない花の匂いをすごく好きだと思ったのに、名前を忘れてしまった。 大きくも小さくもない白い花が、通り過ぎたときに匂ってわたし…
去年、書いた原稿を読み返してみた。数ヵ月ぶりである。 推敲ではなくて、ただ読む。少し離れていたから、作者としてではなく、読者を意識して目を通す。 そんなに枚数は多…
大人になってからも読書感想文はすごく苦手である。ウッとなる。夏休みの宿題の最後はいつも読書感想文が残っていた。 というわけで、去年、文学学校の宿題(?)で書いた…
わたしたちはあの日、海辺にいた 半分の月がのぼりかかって、波に合わせて揺れていた どんな話をしたのか覚えていない あなたがいなくなってしまったから 記憶はどんどん色…
ふくちゃんはお母さんの妹で、わたしのおばさんだけれど、お母さんとは全然似ていないなぁといつも思う。 「こんにちは」 うちのリビングに入ってきたふくちゃんは、こんが…
特に忙しかったわけではないのに、noteには書きかけの記事が4つも眠っていた。もう今更UPできんなというものばかりで、あぁ、流れていくなぁ、時間は、と思う。 今、書い…
自分で決めたくせに、雨の日にわざわざ出かけなくてもと思いながら玄関を出た。 図書館には駐車場がないので、ショッピングモールに車を停めて図書館へ向かう。折り畳み傘…
2月もそろそろ中盤のようで、タイムリークしたのかなと思ってしまうくらいに日にちの感覚がない。 猫といると眠ってしまう現象が家族のあちこちで起きていて、気をつけない…
5年ぶりにピアノの調律をしてもらった。 中がカビていたらどうしようと思ったけれど、大丈夫だった。 想定内やねと言われ、ほっとしながら今回はずっと隣に立って調律を見…
朝から雪が降っていた。 カーテンを開け、外をよく見えるようにするときみはひょいと窓のへりに飛び乗った。それから、上手に後ろ足を折りたたんで窓の外を眺めた。 「今日…
そのときに嫌だなぁとか落ち込んだりしても、時間というのは何もしなくてもただ過ぎていくだけで、過去にしてくれる。そのおかげで多少は薄れていく感情もあるのだと知れる…
去年の日記を見たら、「頭痛、腹痛で散々」と書いてあったけど、今年も頭痛の年明けだった。いつも夫の実家なので寝られず、睡眠不足。きっと来年もそう書くんだろうと思う…
2018年ごろ、仲間と週刊誌でお題に沿ったエッセイを書くということをやっていた。よかったのは、載せる前に添削してもらえるということだった。推敲の勉強になったし、…
2023年読んでよかった本、10選です。 月ごとの本紹介とかぶるかもしれませんが、ご容赦ください。 今月、本を全然読めていなくて、年間100冊には届かないかなという読書量…
2022年9月20日 20:36
ベージュのマフラーを巻きなおしながら、幸子は待ち合わせ場所を変えればよかったと首をすくめた。風が思ったより冷たい。待ち合わせの時間までまだ少しある。さっき駅のトイレで確認したところだったが、もう一度、カバンから手鏡を取り出し、口元をチェックする。40をすぎた女には明るすぎる口紅だった。男に殴られて切れた口の端を隠すにはこれくらいでないといけない。離婚する前から関係のあった男は、近ごろになって暴力
2024年5月4日 18:30
植物園に行って、知らない木に咲いた知らない花の匂いをすごく好きだと思ったのに、名前を忘れてしまった。大きくも小さくもない白い花が、通り過ぎたときに匂ってわたしの足をとめた。引き返して確かめる。あぁ、この花だったのか。木に巻かれたプレートを見て名前を知る。きっと忘れてしまうな、と思った。でも匂いは忘れないだろう。次に出会ったとき、この花だとわかる自信があった。クチナシ、バラ、水仙、どれも違う
2024年4月22日 20:51
去年、書いた原稿を読み返してみた。数ヵ月ぶりである。推敲ではなくて、ただ読む。少し離れていたから、作者としてではなく、読者を意識して目を通す。そんなに枚数は多くないのに、時間がかかった。普段、原稿を読んでもらうということはその人の大事な時間を使っていただいているのだなと改めて思う。結果、いまいちだなと思った。めちゃくちゃ悪くはないかもしれない。でも読後感がよくない。ラストが弱いし、ところどこ
2024年4月14日 21:00
大人になってからも読書感想文はすごく苦手である。ウッとなる。夏休みの宿題の最後はいつも読書感想文が残っていた。というわけで、去年、文学学校の宿題(?)で書いた読書感想文。何か書こうと思うのだけれど、今、どうしても書けないので掲載しておきます。今読んでもなんか恥ずかしいです。透明な感情 (川上弘美 神様 を読んで)恥ずかしいことに川上弘美さんを知ったのは割と最近のこと。いつだっただろう
2024年4月10日 11:14
note10周年なんですね。note始めたのが2018年なので、もう6年目になるのか。最初はコラムを書く練習に、と思って始めたのですがエッセイばかりになってしまいました。やっぱりコラムは得意じゃないんだと思います。
2024年3月29日 20:10
わたしたちはあの日、海辺にいた半分の月がのぼりかかって、波に合わせて揺れていたどんな話をしたのか覚えていないあなたがいなくなってしまったから記憶はどんどん色あせていくけれど、もともと色のなかったあの夜のことはまだ少しだけ、覚えている船着き場の船も、海の鳥も、眠っていて、わたしたちはちっとも眠たくなんかなかった眠ってしまわなくてよかったのだと思う眠るにはもったいないほどの夜だった
2024年3月18日 20:32
ふくちゃんはお母さんの妹で、わたしのおばさんだけれど、お母さんとは全然似ていないなぁといつも思う。「こんにちは」うちのリビングに入ってきたふくちゃんは、こんがり焼けたパンみたいな顔で、ニカッと笑った。お母さんはふくちゃんを見て目を丸くした。「ちゃんと帽子かぶってる? 日焼け止めは?」「めんどくさいからかぶってないよ、日焼け止めもしてへんし」お母さんはあきれた顔になった。ふくちゃんは全然気
2024年3月5日 19:38
特に忙しかったわけではないのに、noteには書きかけの記事が4つも眠っていた。もう今更UPできんなというものばかりで、あぁ、流れていくなぁ、時間は、と思う。今、書いている小説がうまくいっていなくて行き詰っている。ちょっと離れてはまた書いて、でもまだまだ核心にはいけていない、という気がする。一番大事なところが書けていない、いや、むしろ書かないほうがいいのか、決めかねている。小説だけではなくて
2024年2月21日 19:56
自分で決めたくせに、雨の日にわざわざ出かけなくてもと思いながら玄関を出た。図書館には駐車場がないので、ショッピングモールに車を停めて図書館へ向かう。折り畳み傘がしっかりと開かない。仕方なく手で上を押さえながら、交差点へ向かう。途中、ポストに封筒を投函する。雨でぬれにくいように投函口にはちゃんと雨避けがつけられていると気づく。傘は思いのほか小さくて、左肩を濡らしながら、もうこれ捨てなきゃだめかも
2024年2月13日 19:45
2月もそろそろ中盤のようで、タイムリークしたのかなと思ってしまうくらいに日にちの感覚がない。猫といると眠ってしまう現象が家族のあちこちで起きていて、気をつけないと一家全滅すると気づいたので、もうちょっとしっかりしようと思う。もともと布団には魔力があり、布団を敷きっぱなしにすると危ないと思っているのだけど、猫もその類のものである可能性は高い。20年生きると人の言葉をしゃべるとか30年で猫又にな
2024年1月31日 21:33
5年ぶりにピアノの調律をしてもらった。中がカビていたらどうしようと思ったけれど、大丈夫だった。想定内やねと言われ、ほっとしながら今回はずっと隣に立って調律を見せてもらった。わたしのことを「まーちゃん」と呼ぶ人はわたしを小さいころから知っている人だ。調律師のOさんもそのひとりだけれど、年に一度の発表会では顔を合わすものの、ゆっくり話している時間はないので、調律に来てもらったときに話せるのを楽し
2024年1月18日 19:35
朝から雪が降っていた。カーテンを開け、外をよく見えるようにするときみはひょいと窓のへりに飛び乗った。それから、上手に後ろ足を折りたたんで窓の外を眺めた。「今日は雪だね」話しかけながら、きみの目線に高さを合わせて同じように外を見てみる。「雪、はじめて?」と聞いてから、そんなことはなかったなと気づいた。きみは雪のたくさん降るところから来たんだった。でも、わたしだって雪の降るところで育ったの
2024年1月15日 20:18
そのときに嫌だなぁとか落ち込んだりしても、時間というのは何もしなくてもただ過ぎていくだけで、過去にしてくれる。そのおかげで多少は薄れていく感情もあるのだと知れる。夜中に目が覚めてついネガティブモードに入ってしまい、2時ごろから全然眠れなくなってしまった日もあってなんだか心底疲れてしまった正月。年末年始は体調が悪くて、初詣に行きたいのになかなか家から出られなくてもんもんとした。いつも行く近所の神
2024年1月3日 11:58
去年の日記を見たら、「頭痛、腹痛で散々」と書いてあったけど、今年も頭痛の年明けだった。いつも夫の実家なので寝られず、睡眠不足。きっと来年もそう書くんだろうと思う。年々、体が言うことを聞かないし、これくらいで?と思うことでも体には負担になるようで、困る。本も持って行ったけど読めず、特に何もしなかった正月。夫の友人たちと行ったカラオケで揺れを感じて気分が悪くなった。正月だからといって穏やかに時
2023年12月29日 22:14
2018年ごろ、仲間と週刊誌でお題に沿ったエッセイを書くということをやっていた。よかったのは、載せる前に添削してもらえるということだった。推敲の勉強になったし、書き直すという筋肉がついたのではないかと思っている。小説なんて書けるわけがないと思っていたので、エッセイのネタが尽きたらわたしはもう書けなくなるかもしれないと漠然と思っていた。そんな中で800字、1600字の小説を書いたりするようになった。
2023年12月26日 22:14
2023年読んでよかった本、10選です。月ごとの本紹介とかぶるかもしれませんが、ご容赦ください。今月、本を全然読めていなくて、年間100冊には届かないかなという読書量でした。詩や短歌、絵本も含めた読書数ですが、同人誌等は含めていません。順不同、敬称略です。ネタバレ含みます。『一生一色』志村ふくみ年明けに読んで、好きになった本。エッセイだけれど、この人の言葉はゆっくりと染み込んでいくよう